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――能登半島地震における富山大学の事例――
山田 貴光
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
1-6
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
2024(令和6)年1月1日,能登半島地震が発生した。被災地に最も近くに位置する国立大学の富山大学において,地震による直接的な被害は少なかったものの,一般選抜における志願者動向に大きな影響があった。富山大学の令和6年度一般選抜の志願者数は前年度から1,248人減少し,過去19年間で最少の志願者数を記録した。前期・後期ともに全国から志願者が減少,特に3大都市圏からの出願減少が目立った。ただし,富山大学を構成する9学部それぞれが異なる事情があり,地震によって一律に全学部の志願者が減少したわけではなかった。なお,被災地である能登半島に位置する高校から富山大学への志願者数・入学者数に,大きな変動は見られなかった。
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――選抜区分に着目して――
宮本 友弘, 林 如玉, 久保 沙織, 倉元 直樹, 長濱 裕幸
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
7-14
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
本研究では,東北大学の入学者選抜に関する各種資料を男女差の観点からあらためて分析し,既存の選抜区分が女子比率に寄与しているのか,「女子枠」のような新たな選抜区分の導入が必要なのかを検討した。志願者及び合格者における女子比率は緩やかに増加しており,とくに総合型選抜(AOⅡ,Ⅲ)が寄与していた。また,選抜区分にかかわらず女子は男子より入学後の成績が良好で,優秀な女子学生が確保されている可能性や,対面オープンキャンパスへの参加が入学した学部等の志望決定の促進要因になることが示唆された。以上から,女子比率を高めるには現行の選抜制度や広報活動の改善が重要であり,新たな選抜区分の導入は急務ではないと考えられる。
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――学力保証の観点から――
小川 佳万, 小野寺 香, 石井 佳奈子
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
15-22
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
台湾では2000年代以降に大学入学者選抜方法の多様化が進み,大学入学者の約60%が,全国型の学力筆記試験の成績に加えて募集単位が独自に定める方法によって選抜されている。本稿は,そのうち「個人申請選抜」に焦点をあわせ,学力保証の仕組みについて検討した。その結果,多くの募集単位は全国型の学力筆記試験の成績を二段階選抜の各段階において活用していること,第二段階の評価全体に占めるその割合は規定の範囲内で高く設定されていることが確認された。また,受験者に提出を求める資料については,受験者自身が作成するものであっても高級中学教員による確認が求められ,高級中学による当該受験者の学力に関する評価を入学者選抜において用いていることが確認された。
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――大学公式サイトにおける最新情報の見出しに現れる広報内容の分析――
齋藤 朗宏
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
23-29
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
大学における広報活動のツールとして,大学公式サイトは大きな役割を持っている。特に「トピックス」,「ニュース」,「最新情報」といった形でどのような内容を広報するかには,各大学が何を伝達したいかが現れており,そこに大学の個性が反映されているものと考えられる。本研究では,各大学の公式サイトにおける最新情報に関係したページの見出し文に着目し,頻出単語などの分析を行った。その結果,広報内容は「イベント開催情報」,「研究成果」,「事業採択」等に大別されることなどが明らかになった。
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――東北大学を例として――
林 如玉, 宮本 友弘, 倉元 直樹, 長濱 裕幸
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
31-38
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
本研究では,ポストコロナ期におけるオープンキャンパスの実施や改善に向けて,2021(令和3)年度から2023(令和5)年度の東北大学新入学者アンケートの結果をもとに,オープンキャンパスの参加形態が入学者の志望決定に及ぼす影響を検討した。半数以上の入学者は自分が入学した学部のオープンキャンパスに何らかの形態で参加したことが確認できた。また,参加したオープンキャンパスが本学への志望決定の「決め手となった」割合については,対面とオンラインの両方による参加経験者が,一方だけの参加経験者より高かった。このことから,オンラインと対面の融合はハイブリッドといった物理的な複合だけではなく,個人の内面における体験の多元性といった点にも着目していく必要性があることが示唆された。
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――電気通信大学の個別学力検査における「情報Ⅰ」導入に向けた取組――
森田 桂花
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
39-46
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
電気通信大学(以下,本学)では,2025年度入学者選抜において個別学力検査に「情報Ⅰ」を導入する。これは,現在実施中の高知大学理工学部情報科学科に次いで,国立大学で2番目の事例となる。本稿では,近年の国立大学における入試科目への「情報」導入状況を概観し,本学における導入事例を紹介する。さらに,「情報」導入による志願者層への影響について考察することを目的とする。
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荒井 清佳, 椎名 久美子, 伊藤 圭, 桜井 裕仁, 大塚 雄作
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
47-54
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
総合型選抜および学校推薦型選抜における知識・技能,思考力・判断力・表現力等の評価方法に関して,令和5年度に実施された「大学入学者選抜試験の改善に向けた需要調査」の回答を集計し,分析した。評価材料の適切さについて各大学の回答者の考えを尋ねたところ,汎用的な能力を評価する場合には小論文や面接,口頭試問が,教科・科目に関する学力を評価する場合には大学個別の教科・科目別テストや面接,口頭試問が,それぞれ高かった。試験のタイプ別に見ると,教科・科目別の試験と履修を前提とする教科・科目を明示せずに汎用的な能力を評価する試験が30%程度の大学で実施されていることが示された。
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永野 拓矢, 寺嶌 裕登, 橘 春菜, 石井 秀宗
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
55-62
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
2017年4月の学校教育法施行規則改正により,「三つのポリシー」の策定・公開が義務づけられ,現在は全大学の選抜要項等に記載されている。このうち,アドミッション・ポリシーには「学力の3要素」が含まれるが,さらに2022年度学習指導要領改訂により同要素に沿った「観点別学習状況の評価」が加わった。本稿では高大接続期に係る「学力の3要素・観点別学習状況の評価(3観点)」と国立大学が示すアドミッション・ポリシーの記載内容に注目し,各入学者選抜の関連について分析した。その結果より,入試種別や大学の類型による「求める人物像」の差異や傾向について明らかにした。
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Hiroko UEDA
2025 年35 巻 p.
63-70
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
This investigation seeks to improve Higher-Order Thinking Skills (HOTS) assessments in English items for Japanese national and public university entrance exams by analyzing 115 items from 65 universities. Focusing on these items’ types, formats, and features, the study identifies key deficiencies—such as 53.9% lacking necessary texts or diagrams for resolution—and proposes targeted enhancements illustrated with examples from Kobe University. The findings advocate for a refined approach to developing unbiased and cognitively demanding HOTS items, including a strategic pairing of Lower-Order Thinking Skills (LOTS) items preceding HOTS items to progressively assess candidates’ cognitive abilities. The study also explores the potential for assessing HOTS through well-designed multiple-choice items alongside traditional descriptive formats to measure advanced cognitive skills, thereby enhancing educational evaluation more effectively.
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――質問紙調査の結果から――
大谷 奨, 島田 康行, 本多 正尚, 松井 亨
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
71-77
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
高等学校における観点別学習状況の評価の実態と,入試等に用いることについての意向を探るため,茨城県内の高等学校・中等教育学校後期課程全124校を対象に郵送で質問紙調査を行った。その結果,授業改善などが進んでいるが,主体性評価に困難を感じている実態が明らかとなった。またこの評価を一般選抜に用いることについては強い難色が示される一方,例えば面接の参考資料として学校推薦型選抜などで活用することについては容認する可能性があることなどが示唆された。
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――大学の入試担当者へのアンケート調査を通して――
椎名 久美子, 荒井 清佳, 伊藤 圭, 桜井 裕仁, 大塚 雄作
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
79-86
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
共通テスト利用大学を対象に実施した調査から,入試問題作成の手引き(「手引き」と略記)がすべての試験において各年度の担当者に引き継がれている大学が約4割ある一方で,まったく引き継がれていない大学や状況不明の大学が約3割あるという状況が明らかになった。全体としては「手引き」の必要性は高いと認識されているが,学部数の少ない大学に所属する回答者には「手引き」がなくても過去に出題した問題を参考にして作成可能と考える傾向がみられる。問題のタイプ別では,教科・科目別試験のほうが,汎用的な能力を評価するタイプの試験よりもやや強く「手引き」の必要性が認識されている。
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平井 佑樹, 高野 嘉寿彦
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
87-93
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
信州大学総合人間科学系では,工学部の学校推薦型選抜Ⅰ(大学入学共通テストを課さない選抜,旧推薦入試Ⅰ)合格者を対象として,数学や統計に関する入学前教育を2019年度(2020年度入学者対象)からオンライン上で実施している。本入学前教育では年度ごとに実施日程や内容を見直しており,2021年度からは,高等学校数学Ⅲに関する例題や問題を合格者が作成したり,作成された問題を合格者同士で評価したりする「協調作問演習」をグループワークとして取り入れている。本稿では,その演習を導入した経緯やその演習を含む入学前教育の概要について述べ,合格者がより積極的にグループワークを行うようになったことなどの良い成果があったことについて報告する。
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露木 隆
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
95-102
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
本研究は入学前教育プログラムの設計に向けて,学校推薦型選抜や総合型選抜による年内合格者(以降,早期合格者とする)を対象とした5種類の調査と,高校教員への質問紙調査の結果に基づいて早期合格者の現状把握や特性分析を行った。その結果,高校から課せられる課題量に差があることや,一般選抜の合格者に比べ親和力や協働力といったコンピテンシーが高いこと,入学前教育に大学での学びや生活のイメージを獲得できたり,大学で必要となるスキルを身に付けられたりするようなプログラムを求めていることが明らかになった。さらに,合格決定後にモチベーションが低下する場合が多く,学習の動機づけ1)を目的としたプログラムを求める高校教員が多いことも明らかになった。
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木村 智志, 田中 泉, 河野 悟史, 安永 卓生
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
103-110
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
中学校・高等学校の英語教育は以前にも増して言語活動の高度化が進められており,それに合わせ高大接続改革の一つに大学入学共通テストにおける英語資格・検定試験の活用が掲げられた。本研究では,共通テストは英語の得点を英語資格・検定試験と同様に総合的な英語力を評価できているのか,共通テストの英語の得点を英語資格・検定試験で置き換えることに妥当性があるかについて検討した。その結果,TOIEC IPよりも実用英語技能検定及びGTECのスコアの方が共通テストの得点と正の相関が強かった。このことから共通テストは2技能評価に近いものの英語資格・検定のスコアと同様に総合的な英語力を評価する試験として妥当であると考えた。
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橘 春菜, 永野 拓矢, 寺嶌 裕登, 石井 秀宗
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
111-116
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
本研究では,A大学の志願者アンケートの結果に基づき,出身地域・入試区分別に5年間の志願者動向を検討した。結果,学校推薦型選抜の志願者は一般選抜前期より研究分野や学部・学科の方針への意識が高く,合格者は不合格者より入試難易度を意識しており,A大学周辺地域の志願者は他地域より就職を志願理由とする傾向がみられた。志望校決定時に影響を受けた人は「自分で決めた」が最多であり,他地域の学校推薦型選抜の志願者は「学校教員」を,A大学周辺地域の一般選抜前期の志願者は「保護者」を相対的に多く選択した。また,年度初めにA大学を第1志望として出願したことは,志望校を自分で決めた認識と関連していた。
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一之瀬 博, 小暮 克哉, 平井 佑樹
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
117-121
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
高大接続改革による新たな大学入学者選抜が2021年度入試より始まり,一般選抜では調査書や志願者本人が記載する資料等をより積極的に活用することが求められた。これに伴い,信州大学では一般選抜における面接を課さない選抜において,調査書の学習成績概評を用いた「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」の評価を行っている。本稿では2023年度入試の状況について述べ,さらにこの調査書配点により逆転合格した学生の入学後成績について述べる。本研究の結果,学業成績という観点では,調査書を用いた主体性等の評価がある程度有効であることが明らかになった。
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―K大学一般選抜前期日程入学者における10年間の動向より―
竹内 正興
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
123-128
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
国立大学一般選抜では,共通テストの自己採点結果に基づく事後出願方式により,共通テスト前の志望校を変更して出願する受験生が多く見られる。本研究では,K大学入学者に対する10年間の調査結果から,共通テスト後に志望校を変更(決定)しても,変更者の中の1/4前後の入学者が第1志望校としていることがわかった(一般選抜前期日程)。また,共通テスト後の志望校変更者における第1志望者と第2志望以下の者との出願決定理由を比較した場合,第1志望者は大学入学後の学びの内容や環境について第2志望以下の者よりも選択率が高い傾向が見られた。大学入学後の学びの内容や環境を重視した出願が,第1志望率を高める可能性が示唆されたといえる。
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――長野大学企業情報学部の入学試験を例として――
髙橋 雅夫
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
129-136
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
大学入試では,通常,複数の入試区分を設けて入学者を選抜している。これにより多様な受験者に門戸を開き,結果として各大学の教育理念に沿った学習に意欲的に取り組める志願者の入学につながることが期待されている。一方,そのような適切な志願者が入学したか否かの評価では,GPAも1つの指標として役立てられる。本研究では,学部全体の学生のGPAの合計が高いほどその大学の教育方針に合致した学びができているとの考えの下,入試区分別の入学者数を調整することでGPAの合計を高める方法を提示するとともに,実際のGPAデータを用いて計算を行い,それを参考に入試区分別の学生募集人員の検討に役立てた事例を紹介する。
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津多 成輔, 冨安 慎吾, 辻本 彰, 石野 陽子
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
137-144
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
教員養成大学・学部では,学生の教職志向性(教職に就きたい気持ち)が高学年で高い状態であることが求められている。本研究では,入試形態・入学時学力・大学選択理由に着目し,入学後の教職志向性の推移との関連を分析した。その結果,①調査時点のA大学の入試形態や入学時学力と入学後の教職志向性の推移には関連がみられないこと,②大学選択理由に「独自プログラム」(▲▲学修があるから)を挙げた場合に,教職志向性が高位で推移する傾向があることを示した。この結果は,教職志向性が高位で推移する可能性が高い者の選抜を志向する場合には,入学者選抜において特定の大学選択理由が指標となる可能性を提示した点において意義がある。
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小林 元気
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
145-152
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
国立大学入試における英語民間試験を活用した大学入学共通テスト(以下,共通テスト)の英語得点優遇制度に関して,グローバルな志向性をもつ入学者を選抜するアドミッション機能としての観点から,A大学B学部C学科の一般選抜を経た入学者を分析対象として検討した。分析の結果,英語民間試験の利用者は非利用者よりもグローバルシティズン尺度により計測された得点が高く,大学入学後に留学を志向する傾向にあることが示された。これらの結果をふまえ,国立大学における英語民間試験の入試活用に関して,導入により期待できる効果と導入の結果生じるリスクの両面を総合的に把握する必要性について議論した。
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――インターネット調査で得られた全国データを用いて――
西丸 良一
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
153-159
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
本稿は,学力を基準とした日本の教育選抜システムが高校生の職業期待に影響を与える背景から,大学入試に注目し,大学生の職業期待との関連を検討した。分析の結果,相対的に難易度の高くない大学で,一般入試にくらべ推薦入試(他)を経た学生の職業期待は低いことがわかった。意欲や適性といった一元的な学力以外の基準を取り入れる推薦入試(他)で変化した大学入試は,学校歴に集約されない職業選択の分岐性をいくらかもつといえる。ただ,本稿のデータは調査会社に登録された大学生への「予備調査」である。そのため,結果の一般化は控えなければならない。今後,大学生を対象に無作為抽出で得られた全国データを用いることができたなら,改めて本稿のテーマを検討したい。
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――九州大学プレアドミッション・サポートデスクの事例から――
廣瀬 武志, 花井 渉, 木村 拓也
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
161-168
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
九州大学では,留学生のためのプレアドミッション支援の一環として「実質的な」意味における外国学歴・資格評価(FCE)を2022年度からスタートした。国際部に設置されたプレアドミッション・サポートデスク(PSD)がその実施主体である。だが,開始から二年経った今もPSDの利用率-それはそのまま実質的なFCEの普及率でもある-は低い水準に留まっている。原因は複合的であろうが,教員を対象とした意識調査からは,6割もの教員が共通して抱くある懸念が主要な要因として浮かび上がる。本稿は,PSDの2023年度活動実績をもとに,かかる懸念が根拠を欠くことを明らかにし,現在の留学生選抜制度に内在するリスクを回避するためPSD(そしてその中心業務であるFCE)が重要な役割を果たしうる可能性について論じる。
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賈 立男
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
169-176
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
本稿は,学校推薦型選抜と総合型選抜における「主体性等」評価の実施の有無に関連する要因を明らかにするため,735大学延べ13,376募集単位の2023年度大学入学者選抜における「主体性等」評価に関するデータを分析した。その結果,両選抜区分ともに,「主体性等」を評価している募集単位は全体の4割を超え,一般選抜よりも割合が高いものの,全面的に導入されているわけではないこと,「設置形態」「学科系統」が「主体性等」評価の実施有無と弱い関連性をもっていることが明らかになった。これに基づき,「主体性等」評価の推進には,評価方法や基準の開発支援が必要であると指摘される。
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――高校教員への質問紙調査から――
加美山 若奈, 倉元 直樹
原稿種別: 原著
2025 年35 巻 p.
177-184
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
総合型及び学校推薦型選抜の実施拡大に伴い,大学入試では志願者本人記載書類の利用機会が広がっている。そのような中,文章生成AIが一般に普及し始めたことで,選抜への影響を懸念する声も報道された。本稿では,志願者本人記載書類の作成や指導における文章生成AIの影響に関し,高校教員の受け止め方を明らかにしようと試みた。高校教員への質問紙調査の結果,回答者自身が文章生成AI利用経験を有する場合は,これを利用しても作成書類の質に大きな影響はないと考え,選抜への影響懸念も小さい傾向が見られた。また,回答者勤務校の大学進学実績では,実績が高いほど影響懸念が小さかった。いずれも文章生成AIの出力が特徴に乏しい一般的表現となるためと考えられる。
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深谷 和義, 小杉 裕子
原稿種別: 資料
2025 年35 巻 p.
185-191
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
学部内にある二つの課程で小学校教員免許が取得できる大学において,選択で取得する課程と必修で取得する課程それぞれの学生の大学での成績等の学習成果,進路状況の特徴等を調査・分析した。その結果,両課程で受験時の評定値にはあまり違いがなかったが,選択で取得する課程の方が大学での平均履修科目数が3科目ほど多いにもかかわらずGPAは高かった。進路先が小学校の卒業生の割合は必修で取得する課程の方がかなり高かったが,正規の教員になる割合は選択の課程の方が高かった。これらを踏まえたうえで,同一免許が取得できる二つの課程のどちらを受験しようかを検討している受験生向けに,履修科目数の違いや小学校教員になっている割合などを説明することで,より適切に課程を選んだ受験が期待できる。
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喜村 仁詞
原稿種別: 資料
2025 年35 巻 p.
193-200
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
オープンキャンパス等大学訪問体験は受験生が当該大学についての理解を深める有力な手掛かりであり,大学の学生募集にもたらす効果については先行研究でも示されてきた。しかし,これら先行研究は実施プログラムの評価が中心であり,受験生が大学を訪問することで大学の何を評価しているのかについては明らかにされてこなかった。そこで本稿では在学生へのアンケート調査から,受験生はHPやパンフレット等では入手困難な詳細情報を得ることでカリキュラム等学問内容の評価を行っていること,そして教員と在学生の関係性(心理的な居場所),施設設備の管理状況(物理的な居場所)の2点から大学の雰囲気を評価していることを明らかにした。
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桜井 裕仁, 林 篤裕, 山村 滋, 牧野 直道
原稿種別: 資料
2025 年35 巻 p.
201-208
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
A大学の2016年度入学者の入試成績と学業成績に着目し,両者の間の相関が学年進行に伴いどのように変動するかを分析した。入学者全体の傾向としては,学年進行とともに入試と学業成績の相関は弱くなること,学年GPA間の相関は入試成績と学年GPAとの相関よりも強いこと,学年ごとに計算した累積GPA間の相関は学年GPA間の相関よりも強いこと,入試成績と累積GPAとの相関係数は,入試成績と学年GPAとの相関係数よりも変動範囲が狭く,学年が進行しても一定に近い値を取ることなどの知見が得られた。
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――コロナ禍の学修状況――
田中 泉, 木村 智志, 河野 悟史, 安永 卓生
原稿種別: 資料
2025 年35 巻 p.
209-216
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
コロナ禍では大学の教育が一部機能不全に陥っただけではなく,学生生活自体が成立しない状況が続いた。この状況下での学修状況を精査することは,多様な選抜体系や学部教育のあり方にも示唆を与えると考えられる。本稿では総合型選抜入学者を中心に,一般選抜,学校推薦型選抜,国際バカロレア選抜の学生,さらには学生の在籍する研究室の指導教員に対してアンケートとヒアリングを実施し,選抜方法と学生の学び状況及び環境との関係について調査した。その結果,学生の動機づけと学力が相補的な関係になっていると同時に,多様な学生に適した学修環境を整えることの重要性が示された。
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――Windows端末とChromebookを用いて――
寺尾 尚大, 石井 秀宗, 清水 友貴, 西郡 大, 木村 智志, 播磨 良輔
原稿種別: 資料
2025 年35 巻 p.
217-224
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
フリー
本研究の目的は,大学等の試験実施者が受験者端末を用意して行うCBTにおいて,モバイル端末管理 (mobile device management, MDM) の機能により,解答時に受験者に利用させる機能を制限するための一連の設定群をインターネット経由で配布する「環境配布型CBT」を試行し,その効果を検討することであった。Windows端末27台・Chromebook 10台に対し,CBTシステムの接続先の情報などを含む設定プロファイルを配布し,大学生・大学院生計5名に対する実験を行った。環境配布型CBTは,特段の専門知識を必要とせず,事前の環境配布および当日の端末準備を簡易化する有効な方法であることが示唆された。実施・運営上の致命的なトラブルはなかったが,CBTシステムの操作の不慣れへの対応や事前説明の工夫の必要性などの課題が浮き彫りとなった。
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倉元 直樹, 中村 高康, 宮本 友弘, 西郡 大, 永田 純一, 中村 裕行, 駒形 一路, 鈴木 誠
原稿種別: 資料
2025 年35 巻 p.
225-231
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
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フリー
本稿では2023(令和5)年12月に設立された「大学入試学会」の概要を紹介するとともに,学会創設に際して実施した質問紙調査から,現時点での学会運営における課題について報告する。大学入試学会は,現実の大学入学者選抜制度に焦点を当てた応用学問的な学術団体として発足した。学会内に「大学等協議会」「高等学校等協議会」の2つの協議会組織を置くなど,学会組織としてはユニークな形態を取っている。発起人会及び設立総会には124名が参加した。本稿執筆時点では2024(令和6)年9月27~29日に開催予定の第1回大会に向けて準備が進められている。発起人会に向けた調査は学会発足時の活動規模の予測に役立ったが,安定した学会運営に向けて克服すべき課題も示された。
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朝倉 暁生, 千葉 康樹, 常見 陽平
原稿種別: 資料
2025 年35 巻 p.
233-239
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
ジャーナル
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理系離れが問題視される中,その要因の一つに過去の情報や経験を前提とした保護者のアンコンシャス・バイアスがある。本研究では,中高生の保護者がどのように子どもの進路選択支援に関わったら良いのかをテーマにしたワークショップを行い,1)保護者のアンコンシャス・バイアスの払拭,2)子どもと対等な関係を持ちながら進路選択支援に臨む保護者の態度醸成,に対して一定の成果を得た。そこで,このワークショップの設計原理と効果を整理し,1)広報段階から保護者がはっとする新しい問題を提示すること,2)進路選択に対する保護者自身の常識を見直すこと,3)学生サポーターの参加により対話に子ども側の視点を付与すること,が重要であったことを示した。
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――GPAと英語外部検定試験の2つの評価軸から考察する――
島内 俊彦
原稿種別: 資料
2025 年35 巻 p.
241-246
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
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本稿ではA大学B学部の2019年度入学生について,通算GPAだけでなく学期GPAの推移や学内実施TOEICスコアの比較を行い,入試区分(地域推薦(市内・県内),一般推薦,一般入試(前期・中期))での学力差の有無を確認した。その結果,通算GPA・学期GPAについては入試区分間の差は確認されなかったが,TOEICスコアについてはセンター試験受験の有無により統計的な有意差が確認された。またTOEICスコアとは別に測定される10項目(リスニング,リーディング各5項目)の項目別正答率に関する詳細な分析を行った結果,リスニングについては長い放送文に対応する集中力,リーディングについては複雑な情報を正確に理解する読解力や幅広い語彙力,文法知識に差があることが確認できた。
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――他の選抜種との比較から――
山田 美都雄
原稿種別: 資料
2025 年35 巻 p.
247-254
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
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本研究では,宮城教育大学が令和4年度入試から新たに導入している2種の「地域枠」選抜制度による入学者の特徴を把捉することを目的とし,学部学生対象のアンケートデータに基づく計量的な分析を行った。その結果,いずれの「地域枠」選抜制度の入学者においても,「就職希望地域」や「教員志向性」の点で,一部課題は見られるものの,ポジティブな傾向が観察された。今後,より詳細な追跡による検証が求められる。
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平 英雄, シムズ ランダー ブライアント , 中村 謙太
原稿種別: 資料
2025 年35 巻 p.
255-262
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
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熊本大学は2019年より高校1,2年生を対象に将来のグローバルリーダーの育成を目指す「熊本大学肥後時修館」を開講し,これまで140人が修了している。高大接続教育と位置付けて実施している本取り組みについて,受講生の約2割が本学に入学し,入学区分ごとの入学者の割合に偏りはなかった。また,2023年度までの5年間のアンケート結果より,受講生の日頃の学習に良い変化等が見られた。さらに,本取り組みの実施状況と今後の課題や展開についても報告する。
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――徳島大学MPEプログラムを例として――
植野 美彦, 矢野 隆章, 原口 雅宣, 安友 康二, 松久 宗英, 佐々木 卓也, 南川 丈夫, 関 陽介, 木村 賢二, 安井 武史
原稿種別: 資料
2025 年35 巻 p.
263-268
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
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徳島大学理工学部は2023年度「魅力ある地方大学の実現に資する地方国立大学の定員増(文部科学省)」に選定され,新教育組織として理工学部,医学部,ポストLEDフォトニクス研究所,先端酵素学研究所の強い連携による「医光/医工融合プログラム(MPEプログラム)」を2023年4月に設置した。本稿では,当学部の定員増の趣旨と必要性を整理するとともに,県内入学者の一定数の確保など,入口戦略としての入試制度の設計過程について報告する。そして,1回目の入試実施では計画した県内入学者数を確保できたものの,2回目は想定より少ない結果となったことなどを示す。
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――デジタル技術の活用による広報業務の効率化に向けて――
関 陽介, 植野 美彦, 上岡 麻衣子
原稿種別: 資料
2025 年35 巻 p.
269-275
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
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徳島大学アドミッション部門では,オンラインと現地でのキャンパス見学を支援する環境を構築するために,キャンパス案内システムを開発した。具体的には,徳島大学の常三島・蔵本キャンパスを対象に,施設紹介等の説明文や画像,動画を360度写真に埋め込み,ユーザが写真間を自由に移動できる環境を構築した。開発したシステムを2023年11月から2024年3月まで公開した結果,全ユーザ数1,050人の内,高校3年生(女性),保護者(女性),高校3年生(男性)の順に利用者数が多いこと,20時から23時に高校2,3年生と保護者の利用が多いこと,高校3年生と保護者の利用時間には強い相関があること等が明らかになった。また,現地で学内の見学を行う生徒17人に本システムを提供した結果,キャンパス見学や施設等の情報収集を支援でき,システムの有用性を確認することができた。
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――アドミッション・ポリシーは受験生にとって役立ったのか――
大関 智史, 藤木 清, 望月 雅光, 林 透, ショーブ パトリック
原稿種別: 資料
2025 年35 巻 p.
277-283
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
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2023年の『教学マネジメント指針(追補)』において,アドミッション・ポリシー(AP)に基づく入学者選抜の重要性が強調されているが,学生のAPの認知度に関する調査は少ない。そこで,全国の大学生を対象に,APなどの大学情報に関する認知度を明らかにするために,Web調査を実施した。調査の結果,受験時にAPが役に立ったと認識していた学生は4割程度であった。APが役に立ったか否かの分析におけるカイ二乗検定の結果,入試区分,学部,学年における認識において統計的有意差が認められた。特に,総合型選抜ではAPが役に立ったという学生の割合が67.4%である一方,一般選抜ではその割合36.7%であり,統計的有意に低かった。
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――大学入学者選抜・振分け制度における資格承認機関の役割と機能に焦点を当てて――
飯田 直弘, 細尾 萌子, 田中 光晴, 花井 渉
原稿種別: 資料
2025 年35 巻 p.
285-292
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
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本研究は,イギリス,フランス,韓国の大学入学者選抜・振分けにおける外国資格承認・情報提供機関(NIC)の役割と機能を比較し,日本の大学入学者選抜における外国・国際資格の承認・評価の課題について示唆を得ることを目的とする。その結果,各国の制度的・社会的背景の影響を受け,イギリスとフランスのNICは資格承認を行う一方,韓国は情報提供にとどまることが明らかになった。それをふまえ,資格の承認・評価および入学者選抜での活用の際に課題となる点を指摘した。
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――山梨大学の事例――
齊藤 太郎
原稿種別: ノート
2025 年35 巻 p.
293-297
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
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これまで山梨大学の高校訪問は,各学部の方針によって検討と実施がされてきた。しかしながら,高校からの事後アンケートの中には,同じ大学でありながら,それぞれの学部と別々に連絡や調整を行うことに疑問や簡略化を求める意見が多く挙がっていた。そこで2023年度,山梨大学アドミッションセンターがコーディネート役となって,複数学部が同時に訪問できるよう高校へのアンケートや大学各学部との情報共有をしながら,調整と実施を行った。その結果,複数学部同時訪問や生徒対象の訪問を高校が望んでいることが明らかとなり,今後のコーディネートも終始アドミッションセンターの役割として,高校側からも大学各学部からも望まれていることを報告する。
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――大学入試センター試験と大学入学共通テストの受験上の配慮を中心に――
立脇 洋介
原稿種別: ノート
2025 年35 巻 p.
299-303
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
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2016年に施行された障害者差別解消法や大学入学共通テストへの変更が,障害のある受験生の大学受験にどのような影響を与えたかを調査した。その結果,以下の4点が明らかになった。第一に,受験上の配慮では,新たな技術を用いた配慮の追加,その他の配慮事項の明確化,申請手続きの支援,根拠資料の追加がなされていた。第二に,COVID-19の感染拡大時には,別室受験や個室受験に加えて,マスクなしでの受験等も行われていた。第三に,大学入学共通テストや新学習指導要領への変更に伴って,英語の単語数や試験時間の増加など障害のある受験生の負担が増加していた。第四に,2015年から2024年で全志願者数は12%減少していたものの,受験上の配慮利用者数は67%増加していた。現状は事後的な合理的配慮によって障害のある受験生の支援が行われているが,今後は試験設計の段階から障害のある受験生を想定し,環境を整備していくことが期待される。
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伊藤 圭, 椎名 久美子, 荒井 清佳, 桜井 裕仁, 大塚 雄作
原稿種別: ノート
2025 年35 巻 p.
305-312
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
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大学入学共通テスト利用大学に対する調査の回答に基づき,問題バンクを利用した入学試験の導入と出題に関する意識等について分析した。過去問題の出題や問題作成の際の問題バンクの有用性を評価している一方,動画やプログラミング等に関する問題,自大学内での入試の公平性等については慎重に判断している傾向が見られた。また,問題管理組織や金銭負担等の環境面の重要性も示唆された。
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――公立大学を対象として――
槫松 理樹, 天野 哲彦
原稿種別: ノート
2025 年35 巻 p.
313-318
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
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近年,大学入学者に占める総合型選抜及び学校推薦型選抜合格者の割合が増加傾向にある。しかし,これらの選抜についての網羅的な調査は,まだ少ない。本稿では公立大学を対象に,両選抜の出願書類の設問について調査分析を実施した。その結果,入学希望理由や学びたい内容の明確な記載を求める割合は約60%であるが,学びの計画については10%程度であることが分かった。また活動・実績報告ではボランティア活動や資格・検定の明確な記載を求める割合は15%程度であり,項目立てしない設問が多数を占めた。全体的な傾向として,総合型選抜が学校推薦型選抜より,卒業後の目標や活動・実績の詳細への言及が多い傾向が見られた。
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――協力学生への教育効果に関する予備的考察――
吉田 翔太郎
原稿種別: ノート
2025 年35 巻 p.
319-326
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
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本研究では,山梨大学における学生参画型高大接続事業の実践を報告し,協力学生への教育効果を探索的に考察する。山梨大学ではアドミッションセンター設置以降,高大接続プログラムを実施してきたが,2022年度からは協力学生の教育効果を主要な目的の一つとして位置づけた新たな試みを展開している。2年間の試行を通じて,延べ約100名の学生が参画し,企画段階からの関与や生協学生委員会との協働体制の構築など,プログラムの基本形が確立された。現時点での教育効果の把握は初期的な段階にとどまるが,協力学生からは企画・運営力の向上や大学への理解深化等を示唆する声が聞かれており,高大接続事業の新たな方向性を示している。
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山田 恭子, 川端 ひなた, 田中 寛二, 高良 健作
原稿種別: ノート
2025 年35 巻 p.
327-332
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
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本研究では,琉球大学で開催した高大接続事業「心理学体験授業」の内容を紹介し,その効果を検証する。体験授業の内容には,心理学の歴史,研究法,分野等についての講義,実験,面接の体験,学生との交流が含まれる。結果として,やる気の向上,心理学へのイメージの肯定的方向への変化,心理学科系への進学意識の向上が見られた。これはこれまで実施してきた医学部体験授業と同様の結果で,医学部ほど職業選択に直結しない学問分野でも,このような体験授業は効果を持つことが示唆されたと言えるだろう。
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天野 哲彦, 槫松 理樹
原稿種別: ノート
2025 年35 巻 p.
333-338
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/28
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主体性,意欲,興味・関心などは,入学後の学修の伸びのためには重要な要因だが,それらを個別に取り出して測定することは困難である。また,それらは大学入学までの学びと連続して育成すべきであり,入学後に速成することは容易ではない。ゆえに,高大連携活動によって,生徒,学生を育てることが大切であり,入学者選抜はその通過点として,生徒,学生を育てるという目的で設計される必要がある。本稿はその前提として,大学入学後の成績が,高校生の学習習慣や入学時の意識とどのような関係があるのかを,入学時アンケートとGPAをもとに考察する。考察の結果,大学入学時までに主体的学習姿勢と適度な自習習慣を身につけた学生の成績推移がよく,大学名よりも学部・学科の専門性,自分の興味関心との一致度が入学後の成績に強く影響することが推定された。
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