薬剤性腎障害から腎不全ヘ移行する時期を尿中NAG測定によって検出する目的で実験を行った。ラット(体重235~255g)を対照群(n=7)ならびにゲンタマイシン(GM)群(n=14)の2群に分け、前者に生理食塩水(0.1ml/100g-体重/day), SID, IP)後者にGM50mg/kg-体重/day(0.1ml/100g-体重/day), SID, IP)を7日間連続投与した。GM群の血清クレアチニンならびに尿素窒素は、投与7日に上昇した。腎機能が比較的良好に維持されたGM連続投与2日においては、投与後の尿中NAG排泄が一過性に増加したが、一定時間後に投与前値に回復する傾向が認められた。また、NAG排泄量がGM投与前値に回復しなかった場合は、腎障害が重篤である可能性が示された。従来は、腎機能の日内変動によるNAG測定値への影響を最小限にするため24時間尿を採取することが重要とされていた。しかし、本実験では、腎不全の前段階を24時間尿中のNAGでは検出できないことが明らかになった。したがって、腎毒性薬物による腎不全への進行の前段階を捉えるためには、投薬直前の随時尿中NAG測定が有用である可能性が示唆された。
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