動物臨床医学
Online ISSN : 1881-1574
Print ISSN : 1344-6991
ISSN-L : 1344-6991
11 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
Original Article
  • 永島 由紀子, 平尾 秀博, 星 克一郎, 古川 修治, 田中 綾, 丸尾 幸嗣, 山根 義久
    2002 年 11 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    ジゴキシンは、古くから心不全治療に用いられてきたが、臨床的な覚醒下での慢性投与の効果はほとんど評価されていない。本研究では、ジゴキシンの慢性投与が循環動態に及ぼす影響について検討するために、覚醒下の正常犬と僧帽弁閉鎖不全症モデル(MR)犬において、心拍数、血圧、心収縮力について評価し、さらに正常犬では、一回拍出量(SV)・心拍出量(CO)・心系数(CI)について評価した。その結果、正常犬でジゴキシンは心拍数を下げ、急性投与とは異なり収縮期血圧は変化せずに拡張期血圧・平均血圧を低下させた。また、心収縮力を増強し、SVを増加させたが、それ以上に心拍数低下作用が大きかったため、CO・CIは低下した。初期の代償性僧帽弁閉鎖不全症の病態であるMR犬に対しては、心拍数を下げ、脈圧を保ちつつ血圧を低下させ、軽度に心収縮力を増加させた。正常犬とMR犬の効果の比較では、拡張期血圧の回復が遅延した以外ほとんど差異は認められず、両者とも心臓を効率よく働かせることが示唆された。
Case Report
  • 佐古 絵理, 橋本 志津, 古川 修治, 山村 穂積
    2002 年 11 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    猫の糖尿病15症例において、ケトン尿陽性群(6例)と非ケトン尿群(9例)の血液化学検査および経過について比較検討した。ケトン尿陽性群では総ビリルビンの高値と電解質およびリンの低値を認める症例があった。総コレステロールおよびトリグリセリド、BUN、クレアチニンは両群に差が認められなかった。ケトン尿陽性群のうち、2/6例は加療するも2カ月以内に死亡したが、4/6例はインスリン投与により全身状態が改善した。このうち2例は併発疾患の改善等によりインスリン投与を中止することができた。また非ケトン尿群では、2/9例でインスリン投与を中止することができた。猫の糖尿病ではインスリン療法や輸液療法に加えて併発疾患を治療することが、予後を大きく左右すると考えられた。
  • 中原 和人, 仲庭 茂樹, 重山 純子, 大岡 恵, 山形 静夫
    2002 年 11 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    2例の好酸球性角膜炎の猫に遭遇し、異なる方法で治療を試みた。症例1では、1%シクロスポリン液の点眼とプレドニゾロンの内服を行ったところ、病変がほぼ消失するほどの著しい改善がみられた。治療の中断により再発したが、再度治療したところ再び改善がみられた。症例2では、0.02%デキサメサゾンや0.1%プレドニゾロンの点眼およびプレドニゾロンの内服を行った。治療により若干の改善はみられたが、肉芽様組織の消退は途中で停止し、十分な治療効果が得られなかった。
  • 柴崎 哲, 中出 学, 片本 宏, 野村 紘一
    2002 年 11 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    心エコー図検査および心カテーテル検査により、6カ月齢の小型犬に先天性肺動脈弁狭窄症を認めた。心カテーテル検査による肺動脈-右心室の収縮期圧較差は、113mmHgと重度であり、また三尖弁逆流も認められた。症例が小型犬であったため、経心室弁口拡張術の一方法であるブロック変法により心拍動下にて直接狭窄の拡張を試みた。症例は手術後、順調に回復し、なんら合併症を起こさなかった。術後4カ月で実施した心カテーテル検査の時点で、症例は良好に経過しており、圧較差は67mmHgと軽減していた。以上の結果より、ブロック変法による経心室弁口拡張術は小型犬の肺動脈弁狭窄症の狭窄緩和術として有効であると考えられた。
  • 小出 和欣, 小出 由紀子
    2002 年 11 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    2年前から慢性腎不全の内科的治療を継続していたFIV感染猫が腹部膨満と元気食欲の消失を主訴に来院した。腹部レントゲン検査と超音波検査で肝後縁に巨大なシスト状の腫瘤が確認された。血液および血液化学検査では、慢性腎不全に関連した所見を除くと異常は認められなかった。腹部正中切開で開腹すると肝臓内側左葉に発生した巨大なシストが認められた。このシストは暗赤色で内部に多量に液体が貯留し、壁面には大豆大から拇指頭大の小腫瘤が散在して認められた。シストは肝葉切除により摘出し、病理組織検査で胆管癌を伴った嚢胞性胆管腺腫と診断された。症例は、手術から23カ月後に慢性腎不全の悪化のため安楽死が行われたが、この間肝機能検査に異常は認められなかった。病理解剖で肝臓に嚢胞性胆管腺腫の散発が認められたが、胆管癌の再発は認められなかった。
Teaching Report
feedback
Top