動物臨床医学
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13 巻, 3,4 号
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Original Article
  • 久末 正晴
    2004 年 13 巻 3,4 号 p. 93-98
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/11/07
    ジャーナル フリー
    Sysmex pocH-100iV (以下pocH-100iV )の性能を評価するため,本装置を用いて健康な犬および猫の検体について検討を行った。直線性試験を行ったところ,希釈直線性試験では,白血球数(WBC),赤血球数(RBC),ヘモグロビン(HGB),ヘマトクリット(HCT),血小板数(PLT)において良好な成績が認められた。高値直線性試験では,RBC,HGB,HCTにおいて良好な直線性が認められた。直線性試験と同様に,同時再現性も検討したところ,良好な結果が得られた。他の全自動血球計数装置(CELL-DYN 3500),ミクロ遠心ヘマトクリット法,用手法での血小板数測定法と比較した場合は,MCHCを除いて良好な相関が得られた。血液異常がある場合でのpocH-100iV の性能を評価するため,血液異常を呈する犬54症例の検体についても検討を行った。その結果pocH-100iV は個々の検体において,症例の血液異常を正確に評価していた。本試験の結果から,pocH-100iV は従来機同様の性能を持つことが確認され,かつ再現性に優れ誤差等が少なく,小動物診療にて使用する上で信頼性の高い装置であると考えられた。
  • 強矢 治, 鶴岡 学, 久保田 真理, 中西 真紀子, 田川 雅代, 森 千秋, 斉藤 久美子
    2004 年 13 巻 3,4 号 p. 99-103
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/11/07
    ジャーナル フリー
    ウサギの臼歯不正咬合の発生要因を検討するため,発症群137例,対照群345例について疫学的に調査するとともに,食餌内容に関するアンケート調査を行い,発症群34例,対照群58例より回答を得た。発症群の平均体重は対照群よりも有意に低く,体格の小さなウサギほど臼歯不正咬合を発症しやすい可能性があるものと思われた。臼歯不正咬合の罹患率は雑種で高く,ロップイヤー系品種で低い傾向にあった。雄は雌に比べて罹患率が有意に高かった。発症群の平均乾草摂取量は対照群と比較して有意に少なく,過去の記述と一致して,乾草摂取量が少ないことは臼歯不正咬合発症の危険因子となりうることが推察された。食餌指導により乾草の摂取量を十分確保させること,さらに雑種や雄,そして体格の小さな個体には,より厳密な食餌指導を行うことが,臼歯不正咬合の発症予防となり,または発症後の進行防止に役立つものと思われた。
Case Report
  • 須崎 信茂, 山田 昭彦, 井川 裕之, 高尾 紘一郎
    2004 年 13 巻 3,4 号 p. 105-110
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/11/07
    ジャーナル フリー
    食欲不振,嘔吐,多飲多尿を主訴に来院したシーズーにおいて,高カルシウム血症,PTH intactの上昇がみられたため,原発性上皮小体機能亢進症と診断した。最初は飼い主が外科的治療を希望しなかったため内科的に治療を試み,ビスホスホネート系薬剤を使用することにより動物のQOLは改善した。しかし内科的治療のみでは長期の安定した維持は困難であり,その後外科的に片側上皮小体の摘出を行った。切除した上皮小体は良性の増殖性変化を示し,その切除後は良好な結果が得られ,動物は1年7カ月経った現在でも元気に生存している。
  • 鶴岡 浩志
    2004 年 13 巻 3,4 号 p. 111-113
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/11/07
    ジャーナル フリー
    10歳齢の雑種猫が全身の脱毛および元気,食欲の低下を主訴として来院した。全身徴候としては,削痩,腹囲膨大,腹部皮膚の菲薄化が認められ,問診によると数日前までは多飲,多尿,多食であることも明らかになった。血液検査,低用量デキサメサゾン抑制試験の結果,さらに,ステロイド剤の投与歴がないことから自然発生副腎皮質機能亢進症と診断した。メチラポンの投与により元気,食欲はやや改善されたが,尿糖は改善されず,14病日に死亡した。病理検査により副腎の過形成が示された。
  • 中山 正成, 本田 陽子, 北村 雅彦, 酒井 洋一, 長崎 英里奈, 田中 宏
    2004 年 13 巻 3,4 号 p. 115-118
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/11/07
    ジャーナル フリー
    5歳齢,体重3.2kgの雄のヨークシャー・テリアが,慢性小腸性下痢,嘔吐,腹囲膨満で来院した。腹部超音波検査では腹水の貯留がみられ,小腸壁の広範な肥厚および小腸運動の亢進が認められた。内視鏡検査では十二指腸粘膜に米粒状の白斑が観察された。この部位より採取した生検材料の病理組織学的検査の結果,腸リンパ管拡張症と診断された。内視鏡検査は,一般状態が安定していない症例に対して,外科手術より侵襲性が低く,粘膜面を直接観察できること,同時に複数の組織採取も可能であることから,腸リンパ管拡張症の診断には有用な方法であり,さらに本症例の経験から,腹部超音波検査を併用することで,診断精度がさらに向上すると思われた。
Short Report
  • 政田 早苗, 片岡 アユサ, 加藤 郁, 高島 一昭, 坂井 尚子, 山根 義久
    2004 年 13 巻 3,4 号 p. 119-123
    発行日: 2004年
    公開日: 2007/11/07
    ジャーナル フリー
    抗DEA1.1モノクローナル抗体を用いた赤血球凝集反応による犬の血液型判定試薬の臨床的有用性を評価した。鳥取県内で飼育されている79例の犬に対し本試薬を用いて試験を実施した。79例中57例(72.2%)はDEA1.1陽性,22例(27.8%)はDEA1.1陰性と判定した。このうち,DEA1.1陽性18例,DEA1.1陰性6例について同一血液検体を用いて連続して試験を行ったところ,すべて同じ結果が得られ再現性が認められた。また,本試薬で判定したDEA1.1陽性血液をドナー血液とし,DEA1.1陽性10例およびDEA1.1陰性10例に対してクロスマッチ試験を実施した。その結果,すべての主試験,副試験ともに凝集はみられなかった。このことからクロスマッチ試験によりDEA1.1型を判定することはできないことが示された。以上のことから,抗DEA1.1モノクローナル抗体を用いた血液型判定試薬は,簡易,迅速にDEA1.1型を判定することができ,臨床現場における輸血前適合検査として有用であると考えられた。
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