動物臨床医学
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14 巻, 1 号
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Original Article
  • 上地 正実, 堀 泰智, 中山 智宏, 若尾 義人
    2005 年 14 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/09
    ジャーナル フリー
    実験は,体重6~21kgの雑種成犬18頭を用い,腎動脈の血流遮断を60分阻血群,90分阻血群およびsham群の3群に分けて行った。血清クレアチニンならびに尿素窒素は,sham群ならびに60分阻血群で変化が認められなかったものの,90分阻血群においては阻血後40時間に有意(P<0.05)に高値を示した。クレアチニンクリアランスは,sham群で変化が認められなかったものの,60分阻血群ならびに90分阻血群においては,阻血後1~2時間に低下した。各尿中酵素は,60分阻血群ならびに90分阻血群で阻血後1~2時間で有意(P<0.05)に高値を示し,その後は阻血前値に回復する傾向を示した。これらのことから尿中酵素活性値は,早期腎障害の検出に有用であることが示唆された。
Case Report
  • 梅原 藍, 佐藤 常男, 渋谷 久, 鈴木 和彦, 鯉江 洋, 関 真美子, 山内 理恵
    2005 年 14 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/09
    ジャーナル フリー
    10歳,雄のビーグル犬が2カ月前からの発咳を主訴に来院した。本症例は,初診時から重度な発咳と多発性の心室性期外収縮が認められ,内科的維持療法を実施したが,初診から18日で死亡した。病理学的検索の結果,肺原発の中分化扁平上皮癌と診断された。腫瘍は有棘細胞様細胞の胞巣状増殖からなり,単細胞角化,核異型ならびに多数の核分裂像が認められた。免疫組織化学的に腫瘍細胞は抗ケラチン・サイトケラチン抗体に強陽性を,抗p53蛋白抗体には細胞質が陽性を示した。電子顕微鏡検索では,細胞質内に少量のトノフィラメント,細胞間に豊富なデスモソームが認められた。犬の肺扁平上皮癌の細胞質におけるp53の発現は,本症例が初めての報告である。
  • 田川 雅代, 鶴岡 学, 斉藤 久美子
    2005 年 14 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/09
    ジャーナル フリー
    結膜切除を施した角膜閉塞症候群のウサギ8例において年齢,性別,臨床所見,治療後の経過について検討した。初発年齢は4カ月齢から1歳2カ月齢で,性差はなく,多くは両眼に発症し,2例では片眼のみに発症をみた。結膜は伸長して角膜を覆い,眼脂や発赤がみられるものもあった。視野が狭窄し,視覚に影響が及んだため,全身麻酔下にて伸長した結膜を切除した。結膜切除により14眼中5眼は完治し,4眼では症状の改善が認められたが,残る5眼では再手術を要した。結膜の切除が不十分な場合や結膜が角膜に癒着している場合には,再発しやすいものと思われた。2例の病理組織学的検査においてパピローマウイルスの核内封入体が認められた。
  • 保田 大治, 大島 太一, 依田 哲直, 保田 修一, 藤田 道郎
    2005 年 14 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/09
    ジャーナル フリー
    5歳齢,雄のミニチュアダックスフンドが,頭部外傷から3時間経過した後に発症した歩行異常を主訴として来院した。血液検査では異常は認められなかったが,CR検査で頭部LL像において右側前頭洞後端から側頭骨にかけて4 cm大の亀裂骨折が認められた。この時点で内科治療を開始したが良化はみられず,9時間経過した時点では意識レベルが沈鬱状態となり,四肢麻痺も認められたためX線CT検査を行った。その結果,頭蓋骨の右側前頭洞から同側の側頭骨にかけて4×4 cm大の陥没および亀裂骨折と,同部位の頭蓋骨内にヒトの硬膜外血腫で特有にみられる2×3×3.6 cm大の凸レンズ状高吸収域が認められたため急性硬膜外血腫と診断し,開頭術による血腫除去を行ったところ良好な経過が得られた。
Short Report
  • 村岡 登, 伊藤 直之, 青木 美樹子, 板垣 匡
    2005 年 14 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/09
    ジャーナル フリー
    Strongyloides stercoralis 感染犬におけるベンズイミダゾール系薬剤(パーベンダゾール,チアベンダゾールおよびアルベンダゾール)とイベルメクチンの駆虫効果を評価した。パーベンダゾール(2例,30 mg/kg,1日1回3日間経口投与)は,S. stercoralis 感染犬に対して全く効果がなかった。チアベンダゾール(75 mg/kg,1日1回3日間経口投与)は5例中3例(60%)に,また,アルベンダゾール(5例,25 mg/kg,1日2回2日間経口投与)もS. stercoralis 感染犬に対して60%の駆虫効果を示した。イベルメクチン(2例,200 μg/kg,1回経口投与)は,S. stercoralis に対して100%の優れた駆虫効果を示した。
  • 政田 早苗, 片岡 アユサ, 加藤 郁, 高島 一昭, 坂井 尚子, 山根 義久
    2005 年 14 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/09
    ジャーナル フリー
    抗Aモノクローナル抗体とTriticum vulgaris レクチンを用いた赤血球凝集反応による猫用血液型判定試薬の臨床的有用性を評価した。鳥取県内で飼育されている65例の猫に対し本試薬を用いて試験を実施し,60例(92.3%)をA型,2例(3.1%)をB型,3例(4.6%)をAB型と判定した。このうち,A型6例,B型2例,AB型2例について同一血液検体で試験を連続して5回行い,すべて同じ結果が得られ再現性が認められた。また,A型,B型,AB型の血液をドナー血液とし,A型7例,B型1例,AB型2例について従来法であるクロスマッチ試験を実施した。B型血漿との試験では,A型血球,AB型血球はいずれも凝集し,A型血漿とB型血球,AB型血球との試験では,凝集が認められないものがあった。このことから,クロスマッチ試験によりAB型血液と抗B自然抗体のないA型血液を判別できないことが確認された。以上のことから,赤血球凝集反応による猫用血液型判定試薬は,簡易,迅速に猫のABシステムの血液型を判定することができ,臨床現場における輸血前適合検査として,また,新生子溶血現象を避けるための適合妊娠検査として有用であると考えられた。
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