肺動脈狭窄症(PS)は大動脈狭窄に次いで発生頻度の高い先天性心疾患である。
PSの病態把握には超音波検査が有用であり,PSの重症度評価指標としてはドプラ法によって肺動脈血流速度から算出される圧較差が主に用いられている。
しかしながら,圧較差が80mmHgを超えていながら症状を示さない個体もみられ,圧較差のみでの重症度判定には限界がある。したがって,超音波検査においては,より臨床症状との相関性を有した指標が求められ,今回,左室系パラメータに着目し,圧較差および臨床症状との関係について調査した。
圧較差が80mmHgを超える症例では一回拍出量の減少がみられ,特に左室内径短縮率(FS)が60%以上に亢進したPS犬においては,右室圧負荷に由来する心室中隔の偏位が認められた。左室系パラメータの一つであるFSは圧較差に依存せず,より臨床症状を反映する指標としてPSの病態評価に有用であると思われた。
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