動物臨床医学
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18 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
Original Article
  • 矢吹 淳, 小出 和欣, 小出 由紀子, 浅枝 英希
    2009 年 18 巻 4 号 p. 93-100
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2011/02/04
    ジャーナル フリー
    外科治療を行った腫瘤型肝細胞癌(HCC)の犬28頭の臨床検査所見と治療成績について調査した。臨床症状は22頭(78.6%)で認められたが残りの6頭(21.4%)は無症状であった。血液化学検査ではアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)とアルカリフォスファターゼ(ALP)の上昇がそれぞれ全頭(100%)と27頭(96.4%)で認められた。血清α-フェトプロテイン(AFP)の上昇は19頭(67.9%)で認められた。三次元CT検査は腫瘤が発生している肝葉を術前に特定でき,手術シミュレーションを行う上で極めて有用であった。周術期死亡率は10.7%(3頭)で他は長期生存し,再発または転移率は16%(4頭),全症例の中央生存期間は1431日(範囲0~2367日)であった。腫瘤型HCCの犬の多くは肝葉切除による完全切除により完治する結果が得られ,積極的に外科治療を行うべきと思われた。AFPが高値を示した症例は術後に明らかなAFPの減少がみられ,更に再発した4頭では再発確認時に再び上昇がみられ,AFP産生性の腫瘤型HCC症例では再発のモニターに有用となる可能性が示唆された。
  • 宮本 忠, 嶋田 恵理子, 脇本 美保, 石井 遥, 鳩谷 晋吾
    2009 年 18 巻 4 号 p. 101-104
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2011/02/04
    ジャーナル フリー
    2002年1月から2009年6月までに細菌感染症で当院に来院した小動物からメチシリン耐性(MR)Staphylococcus intermedius group(SIG)が41例,MRコアグラーゼ陰性Staphylococcus属(CoNS)が15例およびMR Staphylococcus aureusが1例分離された。年度別では,MRブドウ球菌(S)は2006年に2例,2007年に23例,2008年に19例,2009年に13例分離された。今回分離されたMRSはクラブラン酸・アモキシシリン,セファレキシンおよびセフジニルに対してすべて耐性であった。MRSIGはドキシサイクリンに98%,クロラムフェニコールに51%感受性で,MRCoNSはドキシサイクリンに87%,クロラムフェニコールに53%,ゲンタマイシンに47%感受性であった。これら感受性のある薬剤を用いると93%の症例が改善した。
Case Report
  • 若松 勲
    2009 年 18 巻 4 号 p. 105-109
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2011/02/04
    ジャーナル フリー
    中耳炎と診断したカメ6例において鼓膜切開術を行った。いずれも鼓膜の突出を主徴とし,食欲不振や元気消失などの症状もみられた。治療はカメの鼓膜に塩酸リドカインスプレーを塗布して表面麻酔を実施した後,頭部を軽く指で固定し,鼓膜を3時から9時方向に弧を描くように切開した。メスを用いた4例と比較し,炭酸ガスレーザーを用いた2例ではほとんど出血することなく容易に実施することができた。メスでの切開は,出血と疼痛があるため処置中に暴れることもあるが,炭酸ガスレーザーは疼痛も少なく手術時間の大幅な短縮が得られた。
  • 長井 新, 藤岡 透, 江畑 健二, 石原 直子, 瀬戸林 政宜, 濱岡 将司, 藤岡 荘一郎
    2009 年 18 巻 4 号 p. 111-114
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2011/02/04
    ジャーナル フリー
    12歳,雌のラブラドール・レトリバーが左前肢跛行を主訴に来院した。跛行は非ステロイド性抗炎症薬では改善せず,ステロイドで軽減した。第136病日左前肢に力が入らなくなり,肩関節と肘関節の屈曲低下,前方ストライドの短縮した跛行を示していた。神経学的検査で姿勢反応および脊髄反射の低下,肩甲骨から上腕骨周囲の筋萎縮を示しおり,尾側脊髄領域,特に末梢神経の障害が疑われたため,飼い主にMRI検査を勧めるも選択されなかった。その後病状は徐々に進行し,重度の頸部痛と起立困難に陥ったため,第275病日に安楽殺処置を施し,剖検を行った。第5頸椎から第1胸椎脊柱管内腹側に白色で平滑,実質性で硬い腫瘍性増殖物が認められた。また,第6-7頸椎間左側から増殖物による脊髄の重度圧迫と第5-6および6-7頸椎の椎間孔への侵入が確認された。増殖物の割面は灰白色髄様を呈しており,一部砂状を呈する領域を包含していた。病理組織学的検査では骨・軟骨分化を伴った悪性末梢神経鞘腫瘍との診断を得た。
  • 佐々木 紀之, 田中 綾, 鈴木 周二, 福島 隆治
    2009 年 18 巻 4 号 p. 115-119
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2011/02/04
    ジャーナル フリー
    動脈管開存症(以下PDA)のコイルオクルージョン直後の残存血流の確認には,現在のところ術中の聴診に加えてX線透視下による心血管造影が用いられている。
     今回,PDAと確定診断した8カ月齢のパピヨンに対してコイルオクルージョンを行った。その際に,聴診,X線透視下での心血管造影に加え,経食道心エコー(以下TEE)によって残存血流の消失の確認を行った。プローブを胃や食道に挿入したことによる合併症も認められなかった。
     今回の症例において,TEEを使用したことによる利点として,第1に,動脈管の状態が常にモニタリング可能であること。第2に,TEEから迅速かつ高感度の情報が得られること。第3に,心臓の運動性を含めた持続的な評価が可能であったことである。
Short Report
  • 宇野 雄博, 岡本 健太郎, 尾中 千春, 藤田 桂一, 山村 穂積, 酒井 健夫
    2009 年 18 巻 4 号 p. 121-126
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2011/02/04
    ジャーナル フリー
    甲状腺機能低下症犬の胆嚢胆汁における胆汁酸抱合体分画の組成の傾向を調べる目的で,甲状腺機能低下症に罹患した犬7例(症例群)と対照犬6例(対照群)の血清胆汁酸抱合体分画を測定した。また,甲状腺ホルモン補充療法の影響を調べる目的で,犬2例の甲状腺ホルモン補充療法前と治療中の,血清胆汁酸抱合体分画と胆嚢内堆積物の超音波所見を比較した。症例群では対照群で検出された以外に,タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA),ウルソデオキシコール酸(UDCA),コール酸(CA),グリコケノデオキシコール酸(GCDCA),ケノデオキシコール酸(CDCA),デオキシコール酸(DCA)が検出された。また,症例群では対照群に比べTDCAの割合が減少していたが,CA,CDCA,およびDCAが増加することで疎水性の非抱合型胆汁酸の割合は増加していた。甲状腺ホルモン補充療法を実施した2例では血清胆汁酸抱合体分画が対照群の組成に戻った。胆嚢内堆積物は1例で35日後に減少し,他の1例では8カ月後にやや増加していたが,共に可動性であった。以上,血中胆汁酸抱合体分画の測定結果から胆嚢内堆積物を有する甲状腺機能低下症犬の胆嚢胆汁中には疎水性の胆汁酸が増加していることが推察された。
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