動物臨床医学
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19 巻, 2 号
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Original Article
  • 相馬 武久, 齋藤 奈美子, 河口 雅登, 石井 博
    2010 年 19 巻 2 号 p. 35-40
    発行日: 2010/06/20
    公開日: 2011/09/08
    ジャーナル フリー
    1993~2009年に血清検査を行ったわが国の家猫83,606頭の抗猫コロナウイルス(FCoV)抗体陽性率を品種別に解析した。純血種の陽性率(76.3%)は雑種(50.1%)に比べ極めて高い値を示した(p<0.0001,χ2=4,408.5)。両種ともに陽性率は1カ月齢から4カ月齢まで急速に上昇し,その後加齢に伴い減少した。また,本調査期間に雑種の陽性率は年度が進むにつれて減少したが,純血種では上昇傾向を示した。以上の成績からわが国では純血種が幼齢期にFCoVに感染する機会が多く,その感染状況が近年悪化していることが示唆された。また,スコティッシュフォールド,メインクーンの陽性率(それぞれ87.5%,89.6%)が純血種の平均値(76.3%)に比べて極めて高い値を示し(それぞれ,p<0.0001,χ2=143.2,131.6),シャム,ペルシャが極めて低い値(それぞれ47.1%,65.3%)を示した(それぞれ,p<0.0001,χ2=332.2,248.9)。低値の2品種はこれまでの研究でもFCoVおよび猫伝染性腹膜炎に低感受性であることが報告されており,本研究でも同様な傾向が認められた。
  • 伊藤 直之, 兼島 孝, 佐伯 英治, 金井 一享, 近澤 征史朗, 堀 泰智, 星 史雄, 樋口 誠一
    2010 年 19 巻 2 号 p. 41-49
    発行日: 2010/06/20
    公開日: 2011/09/08
    ジャーナル フリー
    日本全国20都道府県37カ所の動物病院に来院した犬270頭(1-6カ月齢:150頭,1歳齢以上:120頭),猫216頭(1-6カ月齢:112頭,1歳齢以上:104頭)より新鮮便を採取し,消化管内寄生虫の感染状況を調査した。ジアルジアはELISA法による特異抗原検出により,また,その他はホルマリン・酢酸エチル沈澱法による糞便検査法で評価した。消化管内寄生虫検出率は,犬において1~6カ月齢(40.7%:61/150)で1歳齢以上(5.8%:7/120)より有意に高く(P<0.001),また,猫でも1-6カ月齢(22.3%:25/112)は,1歳齢以上(3.8%:4/104)より有意に高かった(P<0.001)。寄生虫種別の検出率は,両年齢群において犬ではジアルジアが(1~6カ月齢:33.3%,1歳齢以上:2.5%),猫では猫回虫が(1~6カ月齢:15.2%,1歳齢以上:1.9%)最も高く,東西日本の両地区から検出され,全国規模での蔓延が示唆された。
Case Report
  • 飯野 泰子, 福島 隆治, 曽田 藍子, 田中 綾
    2010 年 19 巻 2 号 p. 51-56
    発行日: 2010/06/20
    公開日: 2011/09/08
    ジャーナル フリー
    乳び胸水の貯留を認めた18歳齢の雑種猫における超音波検査で,右心圧増大の所見,心室中隔膜性部付近でモザイク信号を認めた。心室中隔欠損症(VSD)由来の肺高血圧症(PH)とそれに伴う乳び胸を疑い,一般的な右心不全の内科的治療に加え,ベラプロストナトリウム(BPS)の投薬を行った。その結果,第57病日までに乳び液貯留は消失,PHを示唆する各検査結果にも大きな改善を認めた。しかし,その後の精査でモザイク血流はVSDによるものではなく,大動脈弁閉鎖不全症が示唆された。各種検査および臨床症状の改善から,本症例がPHであったことが推察される。PHの原因疾患に対する確定診断は行えていないが,本症例がPHを誘発させる肺血管疾患を有していたことは十分に考えられる。本症例の治療経過からBPSがPH由来の右心不全に対する治療薬として有用性であること,特発性乳び胸の原因に何らかの肺血管疾患に由来するPHが含まれる可能性があることが示唆された。
  • 赤木 洋祐, 真下 忠久, 山田 昭彦, 高島 一昭, 山根 剛, 松本 郁実, 山根 義久
    2010 年 19 巻 2 号 p. 57-61
    発行日: 2010/06/20
    公開日: 2011/09/08
    ジャーナル フリー
    膀胱腫瘍と仮診断した犬4例に対し膀胱内腫瘤摘出術を行い,その後の病理組織検査にて好酸球性膀胱炎と診断された。4例中2例は外科的切除によりその後も再発は見られていないが,他の2例は再発が認められ,その後は経過観察中である。この病態は獣医学領域において比較的散見されるようになってきたため,その概要をここに報告する。
Short Report
  • 宮本 忠, 嶋田 恵理子, 本田 真理, 石井 遥, 後藤 慈, 鳩谷 晋吾
    2010 年 19 巻 2 号 p. 63-66
    発行日: 2010/06/20
    公開日: 2011/09/08
    ジャーナル フリー
    犬猫から分離されたメチシリン耐性(MR)ブドウ球菌(S)に対して,抗MR Staphylococcus aureus(SA)薬として人で承認されている新しい抗菌薬に対する薬剤感受性を調べた。2009年10月から2009年12月の間にMR Staphylococcus intermedius groupが7例,MRコアグラーゼ陰性Staphylococcus属が1例およびMR SAが1例分離された。今回分離されたMRSは新しい抗菌薬であるアルベカシン,バンコマイシン,テイコプラニンおよびリネゾリドに対してすべて感受性であった。また,MRSはドキシサイクリンに78%,クロラムフェニコールに56%およびホスホマイシンに45%が感受性であった。一方,MRSはゲンタマシンとオフロキサシンに11%のみの感受性しか持たず,クラブラン酸・アモキシシリン,セファレキシンおよびセフジニルに対してはすべて耐性であった。
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