動物臨床医学
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21 巻, 4 号
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特別寄稿
原著
  • 小林 正行, 北見 友香里, 山本 慎也, 中尾 周, 渡辺 貴之, 星 克一郎, 福島 隆治, 田中 綾, 町田 登
    2012 年 21 巻 4 号 p. 157-164
    発行日: 2012/12/28
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    先天性の肝外型門脈体循環シャント(PSS)に対して外科治療を施した犬55例を対象に,肝臓の病理組織所見(肝細胞の変性,類洞の拡張,小葉構造の改変,小葉間胆管の増数,門脈枝の不明瞭化,小葉間動脈の明瞭化,脂肪肉芽腫形成,リンパ管の拡張,線維化)の程度と臨床所見(手術時月齢,臨床徴候の有無,シャント血管の種類,全長および管径,シャント血管結紮前後の門脈圧および結紮前後の門脈圧の変動率,術後死亡/生存)との関連性について比較・検討した。その結果,門脈枝の不明瞭化,類洞の拡張は手術時月齢が高いほどより軽微になり,脂肪肉芽腫形成はより顕著に認められるようになった。神経症状あるいは発育不良を示した症例は,臨床徴候を示さない群と比較して門脈枝の不明瞭化がより顕著であった。シャント血管の種類,管径および全長,シャント血管結紮前後の門脈圧および門脈圧変動率と病理所見との間に関連性は認められなかった。術後死亡群では,生存群と比較して肝細胞の変性,小葉間胆管の増数,門脈枝の不明瞭化,リンパ管の拡張がより顕著に観察された。門脈枝の不明瞭化は手術時月齢,臨床徴候の有無,術後死亡/生存との間に関連性を示していたことから,肝外型PSSの病理組織学的検査にあたって門脈枝不明瞭化は特に注目する必要がある所見とみなされた。しかしながらその一方で,その他の病理所見と臨床所見との関連性については明確にされなかった。
  • 鳩谷 晋吾, 古家 優, 秋吉 秀保, 谷 浩行, 嶋田 恵理子, 宮本 忠, 杉浦 喜久弥, 稲葉 俊夫
    2012 年 21 巻 4 号 p. 165-169
    発行日: 2012/12/28
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    2009年から2011年に細菌感染症で大阪府立大学獣医臨床センターに来院した犬猫からStaphylococcus intermedius group(SIG)が131株,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)が39株およびS. aureus(SA)が8株分離された。SIGの49%(64株),CNSの46%(18株)およびSAの25%(2株)がメチシリン耐性であった。MRSIGはテトラサイクリン,ドキシサイクリン(DOXY),ミノサイクリン(MINO)およびバンコマイシン(VCM)に,MRCNSはクリンダマイシン,MINO,スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST)およびVCMに,MRSAはDOXY,アミカシン,クロラムフェニコール,STおよびVCMに80%以上が感受性であった。
  • 嶋田 恵理子, 宮本 忠, 木村 唯, 角本 舞, 鳩谷 晋吾
    2012 年 21 巻 4 号 p. 170-179
    発行日: 2012/12/28
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    2011年に山口市の動物病院に来院した犬猫からの臨床分離菌に対する各種抗菌薬の最小発育阻止濃度を微量液体希釈法で測定し,抗菌力の比較検討を行った。Staphylococcus intermedius group(SIG)株の20%,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌株の10%およびS. aureus株の33%がメチシリン耐性(MR)であった。MRブドウ球菌は多くの抗菌薬に耐性であったが,MRSIGはミノサイクリン,アルベカシン,リネゾリド,バンコマイシンおよびテイコプラニンに感受性であった。腸球菌,特にEnterococcus faeciumは多くの抗菌薬に耐性であった。Escherichia coli株の24%とKlebsiella pneumoniae株の17%が基質特異性拡張型β‒ラクタマーゼ産生株であった。E. coli株の24%とPseudomonas aeruginosa株の6%がレボフロキサシンに耐性を示した。犬猫から種々の耐性菌が分離され,抗菌薬への耐性化の動向に注意が必要であると考えられた。
症例報告
短報
  • 田端 克俊, 安川 邦美, 森下 啓太郎, 植野 孝志, 小路 祐樹, 長屋 有祐, 下田 哲也
    2012 年 21 巻 4 号 p. 190-194
    発行日: 2012/12/28
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    他院にて腹腔内に腫瘤性病変と出血が認められた13歳2カ月齢,避妊雌のラブラドール・レトリバーがセカンドオピニオンで来院した。CT検査により腹腔内腫瘤は左側の副腎腫瘍と診断し,その摘出術を実施した。病理組織学的検査から副腎腺腫が強く疑われた。術前のアルカリフォスファターゼと総コレステロールは高値を示しており,術後に食欲不振や下痢が持続して認められ,ACTH刺激試験では血清コルチゾールは低値を示したことから,副腎の腫瘍は機能性で,それを摘出したことにより一時的な副腎皮質機能不全の状態に陥ったものと考えられた。症例は治療開始から約16カ月が経過し一般状態は良好に維持されている。
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