先天性の肝外型門脈体循環シャント(PSS)に対して外科治療を施した犬55例を対象に,肝臓の病理組織所見(肝細胞の変性,類洞の拡張,小葉構造の改変,小葉間胆管の増数,門脈枝の不明瞭化,小葉間動脈の明瞭化,脂肪肉芽腫形成,リンパ管の拡張,線維化)の程度と臨床所見(手術時月齢,臨床徴候の有無,シャント血管の種類,全長および管径,シャント血管結紮前後の門脈圧および結紮前後の門脈圧の変動率,術後死亡/生存)との関連性について比較・検討した。その結果,門脈枝の不明瞭化,類洞の拡張は手術時月齢が高いほどより軽微になり,脂肪肉芽腫形成はより顕著に認められるようになった。神経症状あるいは発育不良を示した症例は,臨床徴候を示さない群と比較して門脈枝の不明瞭化がより顕著であった。シャント血管の種類,管径および全長,シャント血管結紮前後の門脈圧および門脈圧変動率と病理所見との間に関連性は認められなかった。術後死亡群では,生存群と比較して肝細胞の変性,小葉間胆管の増数,門脈枝の不明瞭化,リンパ管の拡張がより顕著に観察された。門脈枝の不明瞭化は手術時月齢,臨床徴候の有無,術後死亡/生存との間に関連性を示していたことから,肝外型PSSの病理組織学的検査にあたって門脈枝不明瞭化は特に注目する必要がある所見とみなされた。しかしながらその一方で,その他の病理所見と臨床所見との関連性については明確にされなかった。
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