血液生化学検査は,獣医臨床において疾病の診断,治療効果の判定に重要な役割を果たしている。生化学測定値の評価においては基準値の設定が重要であり,ヒトでは年齢や性差など患者の属性によって基準範囲が異なる項目も知られている。一方,獣医領域においてはこれらに加え,品種によって基準値が異なる可能性も考えられるが,充分なデータがないのが現状である。本研究では,健常と考えられる犬から採取しドライケミストリ法で測定した検査データ(n=3,303)を基に,主な20 項目について犬種別に比較検討した。その結果,ほとんどの項目では顕著な犬種差はみられなかったが,クレアチニン(CRE)では小型犬が低く大型犬が高めに分布するなど,いくつかの項目で犬種差が認められた。臨床現場で犬種別の基準範囲は常用する必要は無いが,CRE 等において境界付近の値を示す症例では,診断の一助となる状況もあると思われた。
抄録全体を表示