動物臨床医学
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21 巻, 2 号
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特別寄稿
原著
  • 浅枝 英希, 小出 和欣, 小出 由紀子, 矢吹 淳, 矢部 摩耶
    2012 年 21 巻 2 号 p. 47-53
    発行日: 2012/06/20
    公開日: 2013/06/30
    ジャーナル フリー
    超音波検査および/ あるいは門脈カテーテル検査にて多発性の門脈体循環短絡症と診断したコッカー・スパニエル17 例を対象に,診療記録をもとに臨床徴候,各種検査所見,予後に関して調査・検討した。17 例の平均発症年齢は3 歳6 カ月で,性別による偏りはみられなかった。全例が何らかの臨床症状を呈し,削痩が14 例(82%),腹水症が13 例(76%)に認められた。血液化学検査では各種肝酵素値の上昇が15 ~17 例(88 ~100%)にみられ,空腹時の血中アンモニア値および血清総胆汁酸濃度の上昇,血清アルブミン濃度の低下が16 例(94%)に認められた。腹部超音波検査では16 例(94%)の左腎周囲に多発性の異常血管が描出された。開腹術を行った7 例では,全例において多発性の異常血管を肉眼的に観察することができるとともに,肝臓表面に凹凸不整を認めた。病理組織検査では好発所見として小胆管の増生がみられた。生存日数は当院初診時より平均604 日,中央値201 日であった。1 年以内に 10 例が死亡しており,負の予後因子として幼若齢での発症,下血,貧血,血小板減少,BUN の上昇,肝不全の進行などが挙げられた。
  • — 造影超音波所見と病理組織所見との対比 —
    小林 正行, 坂東 秀紀, 山本 慎也, 中尾 周, 佐々木 一昭, 伊藤 博, 町田 登
    2012 年 21 巻 2 号 p. 54-59
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2013/06/30
    ジャーナル フリー
    犬の肝細胞癌5 例に対しソナゾイドを用いた造影超音波検査を実施し,その後外科的に腫瘤を摘出し詳細な病理組織学的検索を行った。動脈相において5 例中4 例で腫瘤辺縁および腫瘤内に豊富な血管構造が描出された。低~中分化型肝細胞癌2 例(症例1,2)では,腫瘤は門脈相において低エコー性を示し,実質相において造影欠損像を呈した。それに対して,高分化型肝細胞癌の3 例(症例3,4,5)では腫瘤は門脈相において等~高エコー性を示し,実質相において造影欠損像を呈さなかった。血管相において腫瘤内部に無~低エコー性結節を含む不均一な造影パターンが見られた3 例(症例1,2,5)では,腫瘤内部に壊死巣が観察されたのに対し,ほぼ均一な造影パターンを呈した2 例(症例3,4)では,腫瘤内部に壊死巣は確認されなかった。造影超音波所見と病理組織所見とを比較,検討した結果,ヒト肝細胞癌と同様に,造影超音波所見が腫瘍の血管分布,腫瘍内壊死巣の有無,さらには腫瘍の分化度を反映している可能性が示唆された。
  • 髙﨑 麻理子, 寺川 和秀, 藤原 清隆, 早川 典之, 百田 豊, 呰上 大吾, 石岡 克己
    2012 年 21 巻 2 号 p. 60-65
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2013/06/30
    ジャーナル フリー
    血液生化学検査は,獣医臨床において疾病の診断,治療効果の判定に重要な役割を果たしている。生化学測定値の評価においては基準値の設定が重要であり,ヒトでは年齢や性差など患者の属性によって基準範囲が異なる項目も知られている。一方,獣医領域においてはこれらに加え,品種によって基準値が異なる可能性も考えられるが,充分なデータがないのが現状である。本研究では,健常と考えられる犬から採取しドライケミストリ法で測定した検査データ(n=3,303)を基に,主な20 項目について犬種別に比較検討した。その結果,ほとんどの項目では顕著な犬種差はみられなかったが,クレアチニン(CRE)では小型犬が低く大型犬が高めに分布するなど,いくつかの項目で犬種差が認められた。臨床現場で犬種別の基準範囲は常用する必要は無いが,CRE 等において境界付近の値を示す症例では,診断の一助となる状況もあると思われた。
症例報告
  • 赤木 洋祐, 中西 中, 原崎 裕介, 真下 忠久
    2012 年 21 巻 2 号 p. 66-70
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2013/06/30
    ジャーナル フリー
    口唇部,眼瞼周囲および会陰部のび爛形成,肉球の角化亢進など,治療不応の皮膚病変を有する犬2 例に対して各種の臨床検査を実施したところ,1 例に副腎皮質機能亢進症,もう1 例に肝臓腫瘤を認めた。外科的切除ならびに病理組織学的検査の結果,それぞれ副腎皮質過形成,肝細胞癌と診断された。副腎皮質過形成の症例では,術後も皮膚病変の改善はみられず,次第に全身状態が悪化して術後32 日目に死亡した。一方,肝細胞癌の症例では,腫瘤摘出後に皮膚病変は劇的な改善を示したが,肝臓腫瘍の再発に伴って再び皮膚症状が現れ,術後292 日目に死亡した。 いずれの症例も臨床経過ならびに病理組織学的所見から皮膚病変は肝皮症候群と診断した。ここでは,難治性皮膚炎を呈した副腎皮質過形成ならびに肝細胞癌の2 症例について,その臨床経過の詳細を記す。
  • 和田 慎太郎, 八村 寿恵, 山岡 佳代, 白石 加南, 久山 朋子, 網本 昭輝
    2012 年 21 巻 2 号 p. 71-74
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2013/06/30
    ジャーナル フリー
    歯周病や歯内疾患がみられた犬7症例の多根歯に対してヘミセクションまたはトライセクション(分割抜歯)を実施した。患歯の歯冠を歯根の位置に対応するように分割し保存不可能な歯根を分割した歯冠とともに抜歯し,残された保存可能な部分は歯内療法を行い保存した。7症例中,歯周病により歯槽骨に垂直吸収の病変がみられた犬の5頭8歯(308:2歯,309:3歯,408:1歯,409:2歯),破折により歯髄の露出がみられた犬の2頭2歯(208:2歯)を対象とした。このうち,保存した部分は抜髄根管充填を行ったものが5歯,生活歯髄切断(断髄)を行ったものが5歯であった。経過観察では,術後426日で根尖周囲のX 線透過性の亢進と歯根膜腔の拡大を認めたために抜歯を行った症例が1例(1歯)あり,その他の症例では現在まで経過は良好であった。最長の症例では術後約4年で保存部分は良好に保たれている。
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