動物臨床医学
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22 巻, 4 号
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特別寄稿
原著
  • 三村 可菜, 淺川 裕美, 橋本 正勝, 早川 典之, 石岡 克己
    2013 年 22 巻 4 号 p. 139-143
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2016/01/26
    ジャーナル フリー
    α1-酸性糖蛋白 (α1-AG)は急性相反応蛋白の一種であり,猫において炎症や腫瘍を検出するスクリーニング項目として注目を集めつつある。今回新たに開発した測定試薬を用い免疫比濁(TIA)法による猫血中α1-AGを測定した結果,同時再現性と希釈直線性はともに良好で,その測定値は一元放射免疫拡散法による測定値と高い相関を示した。この試薬を用いたTIA法で日本獣医生命科学大学付属動物医療センターに来院した238頭の猫の血中α1-AG濃度を測定したところ,α1-AGが上昇していた125頭のうち血清アミロイドA(SAA)の上昇を伴っていたものは62頭で,乖離が見られることからα1-AGとSAAの同時評価が病期判定や鑑別診断に結びつく可能性が示唆された。また,TIA法による猫α1-AGの測定は大規模な検体処理に適し,検査項目としてのα1-AG測定の普及に寄与することが期待される。
症例報告
  • 中西 淳, 中西 暁子
    2013 年 22 巻 4 号 p. 144-148
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2016/01/26
    ジャーナル フリー
    雑種猫が慢性嘔吐と下痢,体重減少を主訴に来院した。腹部超音波検査にて胃壁の肥厚と胃の蠕動運動の消失を認め,胃粘膜の全層生検を実施した。病理組織学検査は,寄生虫感染を伴う慢性胃炎と診断され,寄生虫卵と切片上の虫体の形態,遺伝子解析所見から毛細線虫Aonchotheca putoriiと同定された。また胃粘膜組織のリンパ球クローン性解析ではBリンパ球のモノクローナルな増殖が認められた。駆虫薬はフルベンダゾール,パモ酸ピランテル,イベルメクチンを投与したが,嘔吐の治療はプレドニゾロン(2 mg/kg/日)が有効であり,慢性嘔吐の原因は毛細線虫寄生によるリンパ球形質細胞性胃炎が最も疑われた。
  • 中西 中, 原崎 祐介, 真下 忠久, 島村 俊介, 安田 準
    2013 年 22 巻 4 号 p. 149-152
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2016/01/26
    ジャーナル フリー
    9歳齢のミニチュアダックスフントが血便を主訴に来院した。対症療法には部分的な反応しか示さなかったため,2回の内視鏡生検を繰り返したが,潰瘍形成と非特異的な病理組織学的所見しか得られなかった。免疫抑制治療中に大量出血を呈したため,緊急的な大腸部分切除を実施したところ摘出した大腸粘膜には大きな潰瘍が形成され,病理組織検査結果は血管肉腫であった。術後にドキソルビシンを用いた化学療法を行い,術後337日現在再発は認められておらず経過観察中である。本報告は術前診断が困難であった長期の消化管出血の鑑別に,血管肉腫を考慮する必要性を述べたものである。
  • 高橋 義明, 大里 義治, 谷岡 美紀, 大道 嘉広, 平川 篤, 山本 直人, 田中 美礼, 吉田 満洋, 大塚 浩平, 桑原 慶, 浦 ...
    2013 年 22 巻 4 号 p. 153-158
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2016/01/26
    ジャーナル フリー
    1年前に行った骨髄生検および骨髄中のリンパ球のクローナリティー検査でB細胞性慢性リンパ性白血病と診断したシーズーは,メルファランとプレドニゾロンによる化学療法で臨床的寛解が得られ,第117病日の休薬後も良好に推移していた。12歳1カ月齢時の第382病日に体表各所のリンパ節腫大および喘鳴を主訴に来院した。リンパ節の針吸引生検ではリンパ系の未分化な芽球細胞の増殖が認められ,そのリンパ球のクローナリティー検査ではIgHのクローン性再構成が確認されたことからB細胞性高悪性度多中心型リンパ腫と診断した。このことから,慢性リンパ性白血病から高悪性度リンパ腫への移行であるリヒター症候群と診断した。慢性リンパ性白血病発症時とリンパ腫発症時のそれぞれのリンパ球クローナリティー検査で得られたPCR産物のシークエンス解析を行い比較検討したところ,両者の塩基配列が異なることが判明した。
  • 鶴岡 浩志, 花木 久実子
    2013 年 22 巻 4 号 p. 159-161
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2016/01/26
    ジャーナル フリー
    重度の乾性角膜炎のため約10カ月前よりシクロスポリン眼軟膏とジフルプレドナート乳濁点眼液を併用していた14歳齢のヨークシャー・テリアの上眼瞼に痂皮が認められた。抗生剤の内服および局所の治療を行っていたものの改善せず,その後痂皮形成,紅斑,脱毛が頸部,前胸部,前肢にまで及んだ。皮膚の掻爬検査では外部寄生虫は認められなかったが,培養検査で真菌が検出された。また皮膚の生検を行ったところ,毛包内に糸状菌と考えられる真菌の感染が真皮深部にまで認められた。そこで,テルビナフィン塩酸塩の内服および外用薬による治療を行ったところ,約1カ月後,痂皮,紅斑は消失し,約2カ月後に発毛が顕著に認められ,その後も順調に経過している。
  • 島田 真紀, 島村 俊介, 松田 奈穂子, 茂木 朋貴, 片山 泰章, 宇塚 雄次, 岡村 泰彦
    2013 年 22 巻 4 号 p. 162-166
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2016/01/26
    ジャーナル フリー
    血管肉腫 (症例1, 2) および骨肉腫 (症例3) に罹患した犬1例に対し術後補助化学療法としてエトポシド,クロラムブシル,ピロキシカムを用いた経口低用量術後補助化学療法 (oLDC)を実施した。3例の生存期間はそれぞれ249日および266日,259日であった。これらの結果は従来用いられている最大耐用量を投与する術後補助化学療法と同程度あるいはそれ以上の生存期間であった。すべての症例において治療中重篤な副作用は観察されず良好にQOLを維持することが出来た。さらなる症例の積み重ねが必要であるが,oLDCは犬の肉腫に対する術後補助化学療法の選択肢の一つとなりうる可能性が示唆された。
  • 本田 真理, 川上 亮, 中村 昭仁, 宮崎 英俊, 和田 悠佑, 有馬 広治
    2013 年 22 巻 4 号 p. 167-170
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2016/01/26
    ジャーナル フリー
    6歳8カ月のウサギのネザーランド・ドワーフ種が,飲水量,尿量および排尿回数の増加を主訴に来院した。X線検査と腹部超音波検査などから子宮疾患を疑い,第3病日に卵巣子宮全摘出術を実施した。子宮は左右ともに腫大し,両側の子宮において腫瘤を複数個認めた。これらは病理組織検査により悪性混合ミュラー管腫瘍と診断された。症例は手術から約6カ月後に呼吸困難と食欲不振を呈し,死の転帰をとった。ウサギにおいて子宮腫瘍の発生頻度は高いが,ウサギの悪性混合ミュラー管腫瘍はこれまでほとんど報告されていない。
短報
  • 才田 祐人, 髙島 一昭, 山根 剛, 山根 義久
    2013 年 22 巻 4 号 p. 171-174
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2016/01/26
    ジャーナル フリー
    デジタル聴診器の普及により心音の記録および視覚化が可能となった。そこで,本研究では心音と僧帽弁閉鎖不全症(MR)の重症度の関係について検討した。健常犬7頭とMR犬20頭を供試し,第1音の第2音に対する周波数比(心音周波数比)と,左心房・大動脈径比(LA/Ao),拡張早期流入速度(E波)および僧帽弁後尖弁輪付着部の移動速度比(E/E’)の関連性を評価した。心音周波数比は,LA/Ao,E波およびE/E’とそれぞれ相関性がみられた(p<0.01)。心音を解析することで,従来の心音図検査と比較してMRの重症度をより定量化することが可能であり,小動物臨床におけるデジタル聴診器の使用は有効であると思われた。
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