動物臨床医学
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23 巻, 3 号
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特別寄稿
原著
  • 西 賢, 末信 敏秀, 坂根 由利子
    2014 年 23 巻 3 号 p. 98-106
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2016/02/06
    ジャーナル フリー
    ロメフロキサシン(LFLX)の0.3%点眼剤であるロメワン®の犬の細菌性外眼部感染症に対する安全性および有効性調査を実施した。また,ロメワン®の有効菌種であるS. intermedius,S. canisおよびP. aeruginosaに対する抗菌活性の経年推移を把握することを目的とした経年的MIC調査も実施した。その結果,安全性および有効性評価対象として682症例を収集し,1例に副作用(乾燥性角結膜炎,発現率0.2%)が認められた。また,有効率は83.4%(569/682)であった。治験時より,罹患犬の平均年齢が高齢側にシフトするとともに,加齢により角膜炎の回復力が低下することが示唆された。近年,LFLXに低感受性を示す菌株の増加が認められている。これらに対応するべく薬剤感受性が明らかになるまでの経験則的治療では,積極的な多剤を用いた治療が考慮されるべきである。その際,ロメワン®は併用される薬剤のなかの一剤に挙げることができる。
症例報告
  • 安田 祐子, 吉本 憲史, 森 直子, 吉本 留美子
    2016 年 23 巻 3 号 p. 107-110
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/02/06
    ジャーナル フリー
    ウサギの黒色腫の4例について検討した。発生部位は,2例は耳介,1例は上眼瞼,1例は鼻梁に認められ,いずれも外科摘出を行った。病理組織検査により1例は皮膚黒色腫,3例は悪性黒色腫と診断された。皮膚黒色腫と診断された1例は第955病日経過するが,再発・転移はなく,経過観察中である。悪性黒色腫と診断された症例のうち1例は腫瘍切除から第1521病日に食欲不振等により死亡した。1例は下顎リンパ節とみられる部位に転移を認め,第979病日に病巣を摘出したが,第993病日に死亡した。1例は第175病日に呼吸器症状の悪化を示したため,自宅に酸素室を設置し,症状は安定していたが,第367病日に死亡した。
  • 中谷 圭佑, 日高 勇一, 山口 光昭, 萩尾 光美
    2014 年 23 巻 3 号 p. 111-114
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2016/02/06
    ジャーナル フリー
    1歳1カ月,避妊雌,体重 3.85 kg のトイ・プードルが徐々に進行する開口障害を呈し,摂食困難との主訴で来院した。全身状態は良好であり,顎関節周囲に異常は認められないものの,触診により側頭筋と咬筋の萎縮が認められ,強制開口に抵抗を示した。血液検査では白血球数の軽度増加とC反応性蛋白値の著しい上昇を認めた(12 mg/dl)。これらの臨床所見から自己免疫性の炎症性筋疾患を強く疑い,2M筋線維抗体の検査を行ったところ,抗体価は1:4000以上(参考基準値<1:100)であったため,咀嚼筋炎と診断した。プレドニゾロン2 mg/kg 1日1回で治療を開始したところ,7日目頃より開口困難は認められなくなった。その後,プレドニゾロンを漸減し,症状の再燃が認められなかったため,第138病日に投薬を中止した。しかし,4カ月後に再び開口困難の症状が認められ,プレドニゾロンの投薬を再開した。
  • 朴 永泰, 伊藤 淳, 岡野 昇三
    2014 年 23 巻 3 号 p. 115-118
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2016/02/06
    ジャーナル フリー
    8才の雑種のウサギが全身の鱗屑,脱毛,両側眼球突出,呼吸困難を主訴に来院した。各種検査により,縦隔領域には胸腺腫の発症が疑われ,全身の皮膚は腫瘍随伴症による脂腺炎の発症と診断された。飼い主は皮膚症状に対する治療のみを希望されたため,犬の脂腺炎治療を参考にシクロスポリンを中心とした対症療法を行ったところ,2カ月後,胸腺腫のサイズ縮小が認められ,眼球突出,呼吸困難は改善された。ウサギの胸腺腫に対しては,外科療法,放射線療法,化学療法が選択されるが,本症例はシクロスポリンを中心とした投薬によって胸腺腫を縮小させる可能性を示した。
  • 後藤 理人, 片山 泰章, 宮崎 あゆみ, 島村 俊介, 岡村 泰彦, 宇塚 雄次
    2014 年 23 巻 3 号 p. 119-123
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2016/02/06
    ジャーナル フリー
    右脛骨骨折の癒合不全により後肢の跛行を呈する5歳1カ月齢の雄のキャバリア・キングチャールズ・スパニエルに対して,自家尾椎移植による整復術を実施した。2つの整形した尾椎体を両端に海綿骨を露出した状態でミニプレートにより固定することで尾椎グラフトを作製した。その後尾椎グラフトを脛骨の骨欠損部に挿入・固定後,脛骨内側をロッキングコンプレッションプレートにより固定した。本症例は,術後約1カ月には歩様はほぼ正常で,インプラントのルーズニングも認められず,骨癒合も良好であった。本症例で用いた自家尾椎グラフトは,骨欠損領域を補うための自家骨グラフトとして従来の肋骨や腸骨以外の有効な選択肢の一つとなるかもしれない。
  • 小林 真歩, 小泉 紫織, 左向 敏紀, 松原 孝子
    2014 年 23 巻 3 号 p. 124-128
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2016/02/06
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は褥瘡発生犬における体圧高値部位を把握し,さらに,褥瘡発生に圧以外にどのような因子が関わっているかを調査することである。寝たきり状態で褥瘡を発生している高齢の柴犬2事例を対象とし,臥床状態での体圧測定を行った。2事例における接触面積は,先行研究において測定した健常犬の接触面積と比較して範囲は非常に狭く,また測定した体圧高値部位と実際の褥瘡部位は必ずしも一致していなかった。これらは,関節拘縮や削痩状態によって身体の支持面積が小さくなり,骨突出部位により高い圧力が加わる状態であったこと,姿勢の変化によってバランスが不安定な状態となった身体に傾きが生じ,骨突出のない部位にも褥瘡が発生したものと考えられた。寝たきりの高齢犬に対しては,関節拘縮を予防し,姿勢や関節拘縮の状態に合わせて体圧分散用具を使用することが必要であると思われた。
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