動物臨床医学
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24 巻, 1 号
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特別寄稿
原著
  • 阪本 裕美, 坂井 学, 浅野 和之, 石垣 久美子, 亘 敏広
    2015 年 24 巻 1 号 p. 10-14
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2016/03/24
    ジャーナル フリー
    右肋間描出法を使用した超音波検査で門脈体循環短絡を伴う犬の門脈大動脈(PV/Ao)比を評価した。慢性肝炎・肝硬変に起因する後天性門脈体循環短絡の存在する犬のPV/Ao比は先天性肝外門脈体循環短絡のものと比較し有意に大きく(p<0.01),血管異常を伴わない犬のものと比較し有意差は認められなかった。さらに原発性門脈低形成に起因する後天性門脈体循環短絡の存在する犬のPV/Ao比は血管異常を伴わない犬のものと比較し有意に小さく(p<0.05),先天性肝外門脈体循環短絡のものと同等であった。右肋間描出法により先天性肝外門脈体循環短絡の犬の26頭中24頭(92%)で後大静脈の左側に短絡血管が検出され,脾静脈−奇静脈短絡の犬では大動脈の近傍に拡張した奇静脈が3頭中全頭で検出された。 以上のように,超音波右肋間描出法はPV/Ao比の測定と先天性肝外門脈体循環短絡の検出に適している。血管異常を伴わない犬と比較してPV/Ao比の縮小は,先天性肝外門脈体循環短絡の存在を疑う一つの所見であり,先天性肝外門脈体循環短絡の犬の診断補助として有効な可能性がある。
症例報告
  • 長井 新, 藤岡 透, 江畑 健二, 瀬戸林 政宜, 福田 新, 高岸 領, 橋本 直幸, 藤岡 荘一郎, 田村 慎司, 森田 剛仁
    2015 年 24 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2016/03/24
    ジャーナル フリー
    8歳7カ月齢の雑種犬が左前肢の跛行を主訴に来院した。頸部椎間板ヘルニアによる神経根徴候を疑い内科治療を行っていたところ,治療開始から25日目に頭蓋内病変を示唆する神経症状を示した。身体検査および神経学的検査では強直間代性痙攣,運動失調,斜視,眼振,威嚇瞬き反応の消失がみられた。発熱,白血球の増加,心雑音の増強も同時に認められた。MRI検査では左前頭葉白質に円形病変,右側頭葉全域にびまん性病変が描出されたが,病変部に造影増強効果はみられなかった。死亡直後の脳脊髄液検査では混合細胞性の総細胞数の増加が確認された。剖検では左前頭葉と右側頭葉の腫脹と頭頂部のくも膜下出血,左第7頸神経根を圧迫する椎間板物質,僧帽弁と三尖弁の肥厚と疣贅状構造物の付着,複数の体腔内臓器における白色点状病変がみられた。病理学的検査では,多臓器における膿瘍と血管内に好中球の増加が認められたことから敗血症と診断され,脳では多発性膿瘍と貧血性梗塞と診断された。
  • 岩本 麻耶, 大平 真由, 萩原 雅敏, 山崎 了経, 山部 剛司, 長村 徹
    2015 年 24 巻 1 号 p. 20-22
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2016/03/24
    ジャーナル フリー
    7歳齢の避妊猫が頻回の嘔吐と食欲低下および元気消失を主訴に来院した。各種検査を実施した結果,胆嚢から総胆管にかけて胆石がみられた。総胆管(不完全)閉塞,胆管肝炎に起因する黄疸,そして膵炎の併発が認められたため,第3病日に胆管閉塞の解除を目的に手術を行った。拡張した総胆管内の胆石を,胆嚢管および十二指腸側からのカニュレーションで完全に除去できなかったため,胆嚢摘出術にあわせて総胆管十二指腸吻合術を実施した。術後は黄疸,肝障害,膵炎および一般状態の改善が認められた。現在,術後9カ月経過するが良好に推移している。
  • 塚根 美穂, 塚根 悦子
    2015 年 24 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2016/03/24
    ジャーナル フリー
    健康診断目的で来院したフェレット,雄(去勢済),推定9歳齢において持続的な高血糖と尿糖が認められ,糖尿病と診断した。飼い主の治療同意が得られず経過観察としていたが,途中,副腎疾患の併発が疑われたため,酢酸リュープロレリンを投与した。投与後,尿中ケトン体陽性となり糖尿病症状が悪化したため,入院下にてインスリン療法を開始した。その後,約6カ月間インスリン投与のみの継続で状態は落ち着いていたが,細菌性膀胱炎と前立腺膿瘍による尿道閉塞を発症し,外科的処置を行った。現在,インスリンと酢酸リュープロレリンを継続投与しながら経過観察中である。
短報
  • 宮本 忠, 嶋田 恵理子, 木村 唯, 鈴木 尋, 村瀬 ひろみ, 鳩谷 晋吾
    2015 年 24 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2016/03/24
    ジャーナル フリー
    みやもと動物病院(山口市)に1年間来院した犬と猫から分離した各種細菌のファロペネム(FRPM)に対する薬剤感受性を調べた。メチシリン耐性ブドウ球菌,Pseudomonas aeruginosa,Pseudomonas putidaおよびメタロ-β-ラクタマーゼ産生Acinetobacter spp.の分離株はすべてFRPMに対して耐性であった。また,Corynebacterium spp.株の33%とEnterococcus faecium株の80%はFRPMに耐性であった。一方,メチシリン感受性ブドウ球菌,Enterococcus faecalis,Streptococcus spp.,基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌を含む腸内細菌科細菌,その他のPseudomonas spp.,メタロ-β-ラクタマーゼ非産生Acinetobacter spp.およびPasteurella multocidaの分離株はすべてFRPMに対して感受性であった。
  • 伊藤 直之, 金井 一享, 木村 祐哉, 近澤 征史朗, 堀 泰智, 星 史雄
    2015 年 24 巻 1 号 p. 32-34
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2016/03/24
    ジャーナル フリー
    ペットショップの子犬におけるジアルジア感染の経時的変遷を明らかにするため,4カ所のペットショップを対象として,2008年と2013年に調査を実施した。ペットショップで飼育されている子犬(3カ月齢以下)から糞便を採取し,ELISAキット(SNAP Giardia, IDEXX Laboratories, Inc., USA)でジアルジア抗原を検出した。全体のジアルジア抗原検出率は,2008年24.8%(162/654),2013年29.5%(177/600)であり,両群間に有意な差は認められなかった。各ペットショップにおいても,2008年と2013年のジアルジア抗原検出率に,いずれも有意な差は認められなかった。これらのことから,ペットショップの子犬におけるジアルジア感染は,この5年間で減少がみられず,対策の遅れが示唆された。
  • 木村 祐哉, 金井 一享, 近澤 征史朗, 堀 泰智, 星 史雄, 伊藤 直之
    2015 年 24 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2016/03/24
    ジャーナル フリー
    動物病院利用者における医療用語の普及の程度については,これまで明らかにされていない。本報告は,3軒の動物病院で利用者に質問紙への協力を求めたものである。参加者には25項目の用語について聞いたことがあるか,聞いたことがあるならばさらに正しく理解をしていたのかを訊ね,回答は理解度と誤解度として頻度および95%信頼区間で示した。男性22名,女性78名,その他の性自認2名(無回答8名)の計110名の協力が得られ,年齢構成は20代以下が9名,30-50代が76名,60代以上が18名(無回答7名)であった。重複含め飼育されていた動物は犬が73頭,猫32頭,その他9頭であった。理解度は2.0-99.0%,誤解度は0.0-32.4%であり,医療用語の使用に対する配慮の必要性を支持する結果となった。
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