動物臨床医学
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25 巻, 4 号
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特別寄稿
症例報告
  • 和田 優子, 山根 剛, 髙島 一昭, 山根 義久
    2016 年 25 巻 4 号 p. 132-138
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/12/25
    ジャーナル フリー

    鳥取県西部に位置する米子動物医療センターにおいて,犬糸状虫症を呈した猫の2例に遭遇した。症例1は,1週間前より嘔吐,前日からの努力性呼吸を主訴に来院した。初診時の犬糸状虫抗原陰性および各種検査より肺炎と診断し,抗菌剤などの対症療法により改善した。しかしながら第348病日に初診時と同様の症状を呈し,再度犬糸状虫抗原検査を実施したところ陽性を示した。ステロイドを含む対症療法にて状態は改善したが,その約1週間後に突然死した。 症例2は,他院にて胸水貯留が認められ,心不全として治療を受けていたが改善がないとの主訴で来院した。犬糸状虫抗原陽性,心臓超音波検査において右心房から右心室にかけて犬糸状虫虫体を疑う所見と三尖弁逆流が認められ,大静脈症候群(CS)と診断した。左頸静脈よりストリングブラシを用いて雌成虫3隻を摘出した。術後の経過は良好であり,現在は定期的な検診および犬糸状虫予防を実施している。猫の犬糸状虫症は臨床の場で身近に遭遇する可能性のある疾病である。しかしながら,その確定診断は困難な場合も多い。各種検査を総合的に判断し,確定診断が得られない場合でも犬糸状虫症を考慮し,インフォームドコンセント,治療ならびに定期検査や予防を行うことが重要であると考えられた。

  • 中村 勇太, 安川 邦美, 小路 祐樹, 羽迫 広人, 片山 龍三, 西森 大洋, 森本 寛之, 下田 哲也
    2016 年 25 巻 4 号 p. 139-142
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/12/25
    ジャーナル フリー

    8歳のキャバリア・キングチャールズ・スパニエルが1週間に及ぶ下痢を主訴に来院した。造影CT検査において小腸の一部に最大壁厚が10.0mmに肥厚した腫瘤性病変,および脾臓に一部造影欠損領域が認められた。肥厚した腸管の針吸引生検ではリンパ球と思われる独立円形細胞が多数認められた。そこで第19病日に腸管腫瘤摘出術および脾臓摘出術を実施した。摘出した腸管腫瘤のリンパ球抗原レセプター遺伝子再構成検査(以下PARR)ではTリンパ球のクローナルな増殖示唆された。PARR検査と細胞診所見より消化器型リンパ腫と診断した。しかし,後日病理組織検査において消化管肥満細胞腫と診断された。

  • 森本 寛之, 安川 邦美, 小路 祐樹, 羽迫 広人, 中村 勇太, 片山 龍三, 西森 大洋, 下田 哲也
    2016 年 25 巻 4 号 p. 143-147
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/12/25
    ジャーナル フリー

    元気食欲の低下および右鼠径部の紫斑を呈した2歳齢の雄犬が紹介来院した。各種検査より特発性再生不良性貧血と診断し,ステロイドパルス療法,顆粒球コロニー刺激因子,ミコフェノール酸モフェチルによる治療を行った。第20病日,血小板数の軽度増加および好中球数の増加が認められたが,PCVは11%と急激に低下し,球状赤血球が多数出現していたことから,免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の併発と考えた。IMHAの治療のためにヒト免疫グロブリン製剤を投与し,ミコフェノール酸モフェチル(MMF)投薬中にIMHAが発症したため,アザチオプリンに変更したところPCV,好中球数,血小板数ともに正常値になり,現在も良好に推移している。

  • 吉田 智彦, 市川 直紀, 小池 仁彦, 弘川 拓, 笹岡 一慶, 町田 登, 田口 正行
    2016 年 25 巻 4 号 p. 148-152
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/12/25
    ジャーナル フリー

    猫2症例が腹囲膨満,食欲不振,呼吸促迫を主訴に来院した。超音波検査を行ったところ,左室の拡大および左室内径短縮率の著しい低下が認められたため,拡張型心筋症(DCM)と診断した。両症例とも,内科治療に反応したが全身状態悪化により死亡した。その後,死後数時間で剖検を行った。剖検所見として,複数の臓器に化膿性肉芽腫性炎症病変が散見され,また心臓においては,炎症細胞の浸潤が認められ心筋炎および心筋線維化が散見された。以上の所見から,両症例は猫伝染性腹膜炎(FIP)と診断され,心臓超音波検査によりDCMと考えられた所見は,FIPウイルスによる心筋炎によって引き起こされた可能性が示唆された。本症例のように,DCM様の病態を引き起こす要因としてウイルス感染症を含め様々な疾患が考えられるため,超音波検査所見のみではなく,各種検査結果からDCM様の病態を引き起こす可能性がある疾患を鑑別しなければならないことが考えられた。

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