動物臨床医学
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26 巻, 1 号
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特別寄稿
原著
  • 丹野 翔伍, 髙島 一昭, 山根 剛, 高吉 尚子, 浦野 光, 山根 義久
    2017 年 26 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2018/03/25
    ジャーナル フリー

    我々はこれまでにスルメイカを多量に摂食した猫の多くが嘔吐を呈し,また摂食後の血中クレアチニン(Cre)濃度が富士フイルムメディカル株式会社製のDRI-CHEM7000V(DRI-CHEM)を用いて測定すると一過性に上昇することを報告した。一方,同検体をDRI-CHEMとは測定原理の異なるキノン色素法で測定したところ,血中Cre濃度の上昇は認められず,DRI-CHEMでは偽の血中Cre濃度の上昇が生じることも明らかにした。今回,同様の現象が犬においても生じるか検討したところ,偽の血中Cre濃度の上昇は犬においても確認されたが,猫と異なり嘔吐は認められなかった。さらにイオンクロマトグラフィー法を用いて血中の低分子アミンの解析を行ったところ,スルメイカ摂食後の犬猫でともに,血中ジメチルアミン(DMA)の増加が確認された。このことからDMAがDRI-CHEMでの血中Cre濃度の測定結果に正の影響をおよぼした原因物質であると考えられた。乾燥スルメイカ摂食後の血中DMAの上昇は,乾燥スルメイカ中に多量のDMAが含有されていることが主な原因と考えられた。

症例報告
  • 池水 智博, 白浜 潤
    2017 年 26 巻 1 号 p. 16-23
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2018/03/25
    ジャーナル フリー

    犬のフィラリア症(Heartworm Disease , HWD)と診断した22頭を,クラス1の11頭,クラス2の5頭,クラス3の5頭およびクラス4の1頭の4群に分類し,ドキシサイクリンおよびイベルメクチンの経口投与およびメラルソミン1回注射併用による治療を試みた。その結果,最終観察日までの平均生存日数は504病日(22頭)であり,死亡率は22.7%(5頭/ 22頭:クラス1の1頭/ 11頭,クラス3の4頭/ 5頭)であった。最終観察日までの抗原の陰転化に要した平均日数は312病日であり,抗原の陰転化率は95%(陰転化頭数19頭/検査頭数20頭)であった。また,クラス3では,76日間の腹水の消失が1頭,685日間の腹水の消失が1頭,812日間の腹水の消失および失神の著明な改善が1頭で認められた。さらに,クラス4の1頭では,胸部X線検査所見の改善および臨床症状の著明な改善がみられた。今回の治療経験から,ドキシサイクリンおよびイベルメクチンの経口投与およびメラルソミン1回注射併用による犬のHWDの治療法は安全性が高く効果的な方法であると考えられた。

  • 澤 康二郎, 澤 慎太郎, 北原 大志, 名川 真ノ介, 奥村 菜穂, 澤 邦彦
    2017 年 26 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2018/03/25
    ジャーナル フリー

    11歳のミニチュア・ダックスフント,去勢雄が腹部の膨隆を主訴に来院した。右腎に嚢胞が認められ,嚢胞穿刺液細胞診検査および画像検査から単純性腎嚢胞が疑われた。CT造影による嚢胞壁のthin MIP(maximum/minimum intensity projection:最大値/最小値投影法)画像を詳細に検討したところ悪性腫瘍を完全に否定しきれず,嚢胞壁切除術を施行した。切除した嚢胞壁は病理組織学的に腎細胞癌と診断された。本症例は各種検査において単純性腎嚢胞との鑑別が困難であり診断に苦慮した。

  • 福島 隆治, 新家 俊樹, 鈴木 周二, 松本 浩毅, 森田 祥平, Aytemiz Derya, 大森 貴裕, 河口 貴恵, 山田 修作, ...
    2017 年 26 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2018/03/25
    ジャーナル フリー

    シーズー,雌(避妊済み),推定11歳が,咳嗽後に倒れる(発作)ことを主訴に来院した。ホルター心電図検査を実施したところ,咳嗽のエピソードに一致した洞停止が確認された。また,その際の犬の様子を飼い主が動画撮影を行っていた。それにより,一連の様子が観察できたことから,本症例を「咳嗽を原因とした状況失神」と診断した。

  • 酒井 洋平, 野澤 千明, 森田 祥平, 河口 貴恵, 山田 修作, 打出 毅, 福島 隆治
    2017 年 26 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2018/03/25
    ジャーナル フリー

    肝外胆道通過障害と診断され,一般状態が非常に悪い犬3例,猫2例に対して,経皮内視鏡的胃瘻造設用フィーディングチューブ(PEGチューブ)を用いた一時的胆嚢ドレナージを実施した。全例で術前に上昇していたTBil値,肝酵素値の速やかな低下が認められた。5例中4例は,一般状態の改善が認められたため,後日に胆嚢摘出術を実施し、良好な予後が得られた。残りの1例は,術後にTBil値,肝酵素値の速やかな低下が認められたが,一般状態が回復せずに死亡した。本方法は,十二指腸側にアプローチしないことから比較的低侵襲であり,胆汁を定期的かつ効率的に抜去することが可能になる利点がある。根治にはPEGチューブ抜去を含めて2回手術を行うこと,自宅での適切な管理が必要であることなどの欠点があるが,肝外胆道通過障害を呈している症例の根治あるいは管理が見込める有用な方法であると考えられた。

短報
  • 山本 成実, 渋谷 久, 鈴木 隆, 石川 愛, 佐藤 常男
    2017 年 26 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2018/03/25
    ジャーナル フリー

    猫の肝臓に発生した腫瘍性病変を病理組織学的および免疫組織化学的に検索した。本例は避妊雌,5歳6カ月,体重4.8 kgで,食欲廃絶,元気消失,嘔吐を呈していた。腹部超音波検査にて肝臓の外側右葉に腫瘤が描出され,血液化学検査にて肝酵素値が高値を示したことから肝腫瘍が疑われ,外科的切除がなされた。腫瘤は肝臓の外側右葉に存在し,いびつな長球形,暗赤色,血液に富んでおり,大きさは3.5×2.5×2.0 cmであった。開腹時,肝臓以外に腫瘍性機転の関与を示唆するような病変は認められなかった。組織学的検索では立方状の細胞質とクロマチンに富む核を有する細胞が索状また腺管様構造を形成しつつ増殖していた。グリメリウス染色では細胞質内顆粒が陽性を示し,特に管内側部の細胞質が強く反応した。以上の所見から猫の肝臓に原発したカルチノイドと診断された。免疫染色ではChromogranin A陰性,Cytokeratin AE1/3, S-100およびNSE抗体に陽性を示した。Chromogranin Aは犬のカルチノイドの確定診断において第一選択となるが,本例においては過去の報告と同様にChromogranin Aが陰性であったため,猫のカルチノイドには反応しない可能性が示された。

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