猫の肝臓に発生した腫瘍性病変を病理組織学的および免疫組織化学的に検索した。本例は避妊雌,5歳6カ月,体重4.8 kgで,食欲廃絶,元気消失,嘔吐を呈していた。腹部超音波検査にて肝臓の外側右葉に腫瘤が描出され,血液化学検査にて肝酵素値が高値を示したことから肝腫瘍が疑われ,外科的切除がなされた。腫瘤は肝臓の外側右葉に存在し,いびつな長球形,暗赤色,血液に富んでおり,大きさは3.5×2.5×2.0 cmであった。開腹時,肝臓以外に腫瘍性機転の関与を示唆するような病変は認められなかった。組織学的検索では立方状の細胞質とクロマチンに富む核を有する細胞が索状また腺管様構造を形成しつつ増殖していた。グリメリウス染色では細胞質内顆粒が陽性を示し,特に管内側部の細胞質が強く反応した。以上の所見から猫の肝臓に原発したカルチノイドと診断された。免疫染色ではChromogranin A陰性,Cytokeratin AE1/3, S-100およびNSE抗体に陽性を示した。Chromogranin Aは犬のカルチノイドの確定診断において第一選択となるが,本例においては過去の報告と同様にChromogranin Aが陰性であったため,猫のカルチノイドには反応しない可能性が示された。
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