組織ドプラ検査による右心機能評価は心筋障害の評価の上で有用である。健康なビーグル犬を用いた組織ドプラ指標による右心機能評価の検討は報告がなされているが,肺動脈狭窄症(PS)の組織ドプラ指標による右心機能評価に対する有用性は十分に分かっていない。本研究ではPSの犬16頭と健康なビーグル犬21頭を比較することによって,組織ドプラによってPS犬の右心機能低下を捕捉し得るか検討した。正常群と比較してPS群は収縮期S波 (8.5cm/s ; interquartile range 7.0-11.8 cm/s) が有意に低値に, Em/Am (0.6 ; interquartile range 0.5-0.7) は有意に低値に, E/Emは有意に高値を示した (5.5 ; interquartile range ; 4.7-7.3 ; 各 p < 0.001)。 PS群の組織ドプラで算出したTei index (0.8; interquartile range ; 0.6-1.0) は正常群よりも有意に高値を示した (p < 0.001)。組織ドプラはPS犬の右心機能の低下を的確に評価する可能性が高いと考えられた。各種心疾患を対象とした犬の組織ドプラ検査による右心機能評価に対するさらなる検討が必要であると考えられた。
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