動物臨床医学
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29 巻, 4 号
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特別寄稿
原著
  • 釜田 悟, 高橋 響, 宮内 聡, 嘉屋 元博, 宮原 和郎, 石井 利明
    2020 年 29 巻 4 号 p. 146-151
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー

    今回,犬尿中ヒアルロニダーゼ(犬u-HAase)の椎間板ヘルニア治療薬への応用研究として,その高感度活性測定方法の検討と特性解析を行った。蛍光標識ヒアルロン酸(FAHA)を用いた方法は,HAaseの測定感度が従来方法に比べ30倍以上高く,1.0 IU/ml以下の測定ができる高感度の測定方法である。犬u-HAaseはクロマトグラフからエンド型のグリコシダーゼと判断され,分子量は39,000と推定された。その活性は,pH3.6以上では基質のpHの上昇に伴い低下,pH5.0以上では消失し,ヒアルロン酸,コンドロイチン硫酸A,D,Cの順で分解し,犬粉末髄核からプロテオグリカンを有意に遊出させた。犬u-HAaseは,人Hyal-1と類似した性質を有し,犬尿中のHyal-1に由来した低分子酵素と推測される。今回,犬u-HAaseは犬髄核に対して高い融解活性を示したことから,今後,犬の髄核融解療法への適用が大いに期待できる。

  • 内山 秀彦, 松尾 穂乃香, 永澤 巧, 増田 宏司
    2020 年 29 巻 4 号 p. 152-161
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー

    マイクロチップは個体識別手段の一つであり,別離したコンパニオンアニマルと飼い主を再び引き合わせる点において,その有用性からさらなる普及が望まれる。しかし,マイクロチップを装着させるに至った飼い主の考えや意思の決定,また未導入の飼い主のマイクロチップへの考え方などは明らかになっていない。本研究は,計画的行動理論に基づくアンケート調査によって,マイクロチップに対する行動意図の予測因子を明らかにすることを目的とした。アンケート調査実施の結果,有効回答数は306件[飼い主47.4%(犬飼育者51.7%,猫飼育者42.1%,犬猫両方6.2%),非飼い主52.6%]が得られ,このうち導入済の飼い主は35人 (犬28.4%,猫8.8%))であった。計画的行動理論の項目において,非飼い主と比べ,飼い主は主観的規範の得点が有意に高かった。計画的行動理論によって,マイクロチップに対する考え方の相違や導入に対する行動意図を説明することができた。そして,マイクロチップの更なる普及に向けた中心的な存在は,改めて獣医師であることが示唆された。

症例報告
  • 浅野 舞, 小路 祐樹, 神田 拓野, 岸田 藍, 岸田 康平, 松浦 聖, 橋本 淳史, 大塚 真子, 宮本 明奈, 下田 哲也, 藤井 ...
    2020 年 29 巻 4 号 p. 162-166
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー

    リンパ球数の増加の精査で9歳の雄のチワワが来院した。末梢血液塗抹標本および脾臓の細胞診において小型から中型のリンパ球の著明な増加が認められた。末梢血を用いたリンパ球クローン性解析ではB細胞のクローン性増殖が認められた。骨髄検査所見では骨髄全有核細胞の50%を超える小型リンパ球の増加が確認された。以上の結果から慢性リンパ球性白血病を疑ったが,脾臓の病理組織学的検査で辺縁帯リンパ腫であると診断された。

  • 岡村 健作, 相川 諒, 田中 美有, 井澤 武史, 山手 丈至, 桑村 充
    2020 年 29 巻 4 号 p. 167-170
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー

    環境中に広く分布する非定型抗酸菌(Atypical mycobacteria : AM)によるAM症は,人,豚,鳥 のほか愛玩動物では犬や猫などでの発生が報告されている。しかし,本邦における完全室内飼育のチンチラでの発症報告は見当たらない。5頭のチンチラを飼育する一般家庭において,3頭が順に肺炎による呼吸障害を発症した。いずれも抗菌薬や抗真菌薬などに反応せず,それぞれ治療開始後14,44,186日で斃死に至った。2頭に対して剖検を行った。肉眼所見では肺や消化器官に乾酪様結節が存在し,病理組織検査で肉芽腫性炎症とマクロファージや類上皮細胞内に抗酸菌が確認されAM症と診断された。残りの同居チンチラ2頭は現在まで発症せず過ごしている。完全室内飼育動物においても重篤な呼吸器疾患として致死性のAM症が発症するリスクがあり,また,チンチラのAMに対する感受性は個体差があると考えられた。

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