八郎潟低湿重粘土の土壌断面は,A_<(p)>-B_g-Gの3層に大別される.このうち,B_g層における極大の塊状または角柱状構造の発達程度によって,圃場の地下水位や通気性,透水性さらには土壌の保水性などが大きく左右されている.そのため,とくに畑土壌では,B_g層における土壌構造の発達程度は重要な意味をもっている.本研究では,乾燥履歴の異なる放任地,草地および水田の3圃場を対象として,B_g層における土壌構造を発達段階別に区分した.さらに,土壌構造発達過程における土壌の化学性の変化について検討した.得られたおもな結果は,次のとおりである.1)B_g層における土壌構造は,形状的な変化と構造断面積(S)の相違で,3段階に区分された.第1段階(S : 200cm^2以上)は発達程度の弱い極大の塊状構造.第2段階(S : 50〜200cm^2)は発達中程度の極大の角柱構造.第3段階(S : 50cm^2以下)は塊状構造(A層)に移行直前のよく発達した角柱状構造である.2)B_g層における土壌構造の発達過程では,硫酸酸性の発現とそれにひきつづいて一連の物質移動が起こるため,土壌の化学性は著しく変化していた.構造発達の第1段階では,SO^<-2>_4は6〜10me/100g,pH(H_2O)は6.0〜6.8,ESRは20%以上で硫化物が酸化する初期段階にあった.構造発達の第2段階では,SO^<-2>_4は7me/100g前後,pH(H_2O)は3.9〜4.2,ESRは5%以下で硫酸酸性が進行中であった.構造発達の第3段階では,構造内部で強酸性(SO^<-2>_4 7.8me/100g,pH(H_2O) 3.4)を呈しているが,構造の表面部分では,SO^<-2>_4は3me/100g以下,ESRは3%以下でpH(H_2O)は5〜4台に回復していた.したがって,第3段階では硫酸酸性が消失しつつあった.3)硫酸酸性化のB_g層では,粘土鉱物の層間に少量の鉄またはアルミニウムの水酸化物が存在し,土壌のCECを低め,粘土鉱物の収縮性を妨げているのが認められ,土壌構造の発達に影響しているのがうかがわれた.以上のことから,八郎潟低湿重粘土のB_g層においては,土壌構造の形状的特徴から,土壌の化学的性質を推測しうることを明らかにした.
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