子実収量5t/haの多収ダイズ (5.28t/ha) の生育に伴う茎葉, 莢, 子実における窒素, TAC (炭水化物) の集積について検討した. 得られた結果は, 下記のとおりである. 1. 成熟期における多収ダイズの窒素およびTACの集積量は, それぞれ350kg/ha, 820kg/haで高いレベルであった. 特に, 葉莢期以降の収積量が, 窒素で200kg/ha, TACで600kg/haと, きわめて多量であった. 2. 生育に伴う各部位の窒素濃度の推移をみると, 葉身では, 伸長中期 (9/3) 頃まで5%以上の高い値を維持して, その後低下した. 茎, 葉柄は, 生育中期まで一定の値を維持し, その後ゆるやかに低下した. 莢は, 幼莢期に5%であったが, その後, 急激に低下した. 子実は6〜7%の値を維持した. 主茎と分枝に分けてみると, 茎葉部では, 分枝の方が, いずれの期間も窒素濃度が高い傾向にあった. 3. 茎葉における窒素の集積速度は, 生育初期では低く, 開花期前後から高くなり, 開花期から幼莢期にかけて最も高く, 集積量も幼莢期頃に最高であった. 莢, 子実部への集積が始まると, 茎葉における集積速度は, 正から負に逆転した. 莢, 子実における集積速度は, 9月下旬まで高いレベルで推移した. 4. 各部位で生育に伴うTAC濃度の推移のなかで, 特に葉柄では, 開花期以降, 粒肥大中期にかけて上昇し, 保有量も高いレベルで推移した. 葉で合成したTACが, 葉柄に円滑に転流した. 着莢効率の向上に寄与していると考えられる. 5. 葉身のC/N比は, 莢伸長期まで1〜2と低い値で推移し, その後は上昇した. 一方, 葉柄におけるC/N比は, いずれの時期も, 他の部位より高い傾向であり, 特に粒肥大中期頃は, 10〜11と高い値を示し, 炭水化物優位の部位であった. 6. 茎葉における炭水化物の集積速度は, 莢伸長期から粒肥大中期にかけて最高に達し, その後は急激に減少した. 莢, 子実部における集積速度は, 莢伸長中期から粒肥大中期にかけて最高であった. 一方, 粒肥大中期 (9/17) 頃における, 莢, 子実部のTACの集積量は, 成熟期の64%に相当した. 粒肥大中期 (9/17) 以降は, 葉身の窒素濃度低下, 落葉によって, 光合成能が急激に低下してくるので, 残った茎葉中にあるTACの子実への転流が, 粒肥大にとって, きわめて重要であると考えられる.
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