札幌市内の4カ所の下水処理場から,石灰・円鉄薬注汚泥2点,無薬注汚泥2点,薬注汚泥のコンポスト1点を採取し,また,各汚泥については800℃・5hの焼却処理を施して焼却灰を得た.これらの汚泥,コンポストおよび焼却灰について,理化学的特性,各成分の全含量,水可溶性成分量,リン酸の形態および重金属元素(Mn, Zn, Cu, Cr, Pb, Ni)の形態とそれらの焼却処理に伴う変化を検討した.1)薬注汚泥のpHは無薬柱汚泥に比べ高く,焼却処理によっても変化はなかったが,コンポスト化によってpHは低下した.2)ECはアルカリおよびアルカリ土類金属の溶出のため,無薬柱汚泥に比べて薬注汚泥では変化しなかったが,無薬柱汚泥ではやや上昇した.3)リン酸含量は各汚泥およびコンポストで2.4〜3.5%であり,焼却処理により水溶性リン酸は減少したが,カルシウム型リン酸は1.2〜4.8倍に,ク溶性リン酸は,1.1〜1.8倍に増加した.4)汚泥の重金属元素含量は多くの資料でFe>Al>Mn>Zn>Cu>Cr>Pb≒Ni>Co>Cdの順であり,焼却処理により沸点の低い重金属元素は一部揮散していた.5)重金属元素の形態は,焼却処理によりCrを除いて水可溶性,置換態,吸着帯が減少し,難溶態が増加したことから,汚泥の焼却処理は含有重金属元素の難溶化に有効であった.
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