コムギ,トウモロコシ,ダイズ,バレイショの登熟・肥大過程における窒素の利用・分配機構および代謝機能に及ぼす,窒素,リン,カリウムそれぞれの欠乏の影響を圃場レベルで調査した.実験は74年間各要素をそれぞれ施与していない3要素試験区を用いて行った.得られた結果は次の通りである.1)収穫期における完全区を100としたときの-N, -P, -K区の収穫部位乾物重相対値は,コムギではそれぞれ, 28, 88, 91,トウモロコシでは 40, 81, 38, ダイズでは 106, 82, 57, バレイショでは 25, 70, 46 であった.2)各要素欠乏区では,ダイズの -N区以外では当該要素の集積量の低下が顕著であり,各作物とも-P区,-K区での窒素集積は乾物生産量に対応していた.3)各作物ともこれら3要素の欠乏による窒素利用効率,窒素集積指数,遊離およびタンパク態のアミノ酸組成の変動は小さかった.以上のことより,各要素欠乏により乾物生産量と当該要素集積量の減少が認められたものの,窒素の利用・分配および代謝の異常はほとんど起きなかった.したがって,登熟期において茎葉から収穫部位に窒素が転流し,収穫部位で窒素化合物が構成される過程はきわめて安定した機構により支えられていると考えられる.
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