高炉滓中の硫化物の影響を調査するため,アカクローバおよびイタリアンライグラスを49〜51日間,ノイバウエルポットで栽培した。高炉滓を大量(30t/10a)に施用した後,8年を経た黒ボク土壌を供試し,リンを0,10,40,160 mg P/100g乾土の割合で基肥として施用した。栽培後,地上部重,地下部重,地上部リン含有率およびケイ酸含有率を測定し,以下の結果を得た。1)対照区では硫化物は検出されなかったが,鉱滓区土壌では鉱滓に由来する硫化物が検出され,その濃度は平均9.4 mg S/100g乾土であった。また,pH4.0酢酸ナトリウム溶液で抽出できるケイ酸含量は,対照区の2.6〜2.7倍であった。2)アカクローバおよびイタリアンライグラスの地下部の乾物重は鉱滓区で低く,対照区に対する低下の割合は,リンを施用することにより減少した。3)アカクローバの地上部重は,鉱滓区で低かった。しかし,イタリアンライグラスの地上部重はリンレベルによって異なった反応を示し,高リンレベルでは鉱滓区で大きく,低リンレベルでは判然とした差はなかった。イタリアンライグラスの地上部ケイ酸含有率は,鉱滓区で高かった。4)鉱滓区土壌に過酸化水素水(1.5 mg H_2O_2/100g乾土)を加え,硫化物を酸化する処理を栽培前に行うと,アカクローバの地上部,地下部重とも増大した。対照区の土壌に対し,そのような処理行っても増加は認められなかった。以上の結果から,高炉滓中の硫化物は,畑状態のもとで施用後8年を経ても土壌中に残留して,植物の地下部の生長とリンの取込みを抑制すると推察された。
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