日本全国から収集した堆肥,牧草および飼料作物,草地飼料畑の表層土壌の銅,亜鉛,カドミウム,鉛濃度を測定した.これらの分析値と堆肥生産量,作物収量等の統計資料に基づき,我が国の草地飼料畑における微量重金属の堆肥からの投入量と牧草および飼料作物による収奪量を推定した.1)堆肥中の銅濃度は,豚堆肥,鶏堆肥,牛堆肥の順に,前者ほど高かった.亜鉛,カドミウム濃度は,豚堆肥,鶏堆肥が牛堆肥より高かった.鉛濃度の畜種間差は,認められなかった.乳牛堆肥と肉牛堆肥は,全ての測定元素で,濃度の差が認められなかった.2)作物中の飼濃度は,牧草がトウモロコシより高く,亜鉛濃度は,牧草,ソルガムがトウモロコシより高かった.カドミウム濃度は,ソルガムが牧草,トウモロコシより高かった.鉛濃度の作物間差は,認められなかった.3)草地飼料畑における飼,亜鉛,カドミウム,鉛の堆肥による投入量は,牧草および飼料作物による収奪量より大きく,これらの微量重金属は草地飼料畑において蓄積傾向にあると推定され,銅,亜鉛,カドミウムに対して,10〜100年程度の時間スケールで,土壌蓄積への注意が必要であると考えられた.4)草地飼料用の表層土壌に含まれる銅,亜鉛、カドミウム,鉛の濃度分布を日本土壌のバックグラウンド値の濃度分布と比較すると,飼,カドミウム,鉛では,両者に大きな差が認められなかったが,亜鉛では,草地飼料畑の方が高濃度域に分布する傾向が認められた.
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