2000年長林業センサス農家調査票のうち九州沖縄各県分(利用許可:平成14年9月6日付総統審第333号)を利用して,有畜農家ごとの家畜ふん尿に由来する有機物の投入パターンの類型化を行い,窒素換算した流通可能有機物量及び圃場投入量を推定する方法を提案した.各有畜農家が利用する農耕地へ標準量投入した後の残余有機物(見かけの農家余剰有機物)の投入パターンを,農家調査票に基づき以下のとおり想定した.自家処理施設あるいは共同処理施設を利用する有畜農家,さらに処理施設を利用しない有畜農家のうち敷料と交換する農家に由来する見かけの農家余剰有機物は,土作りとして堆肥を利用する無畜農家が利用するものとした(流通可能有機物).残りを流通困難な余剰有機物として,以下の農地投入パターンを設定した.処理施設を利用しない素堀りだめ・野積み農家に由来する流通困難な余剰有機物は,全量を1筆の圃場に一括投入するものとした.処理施設を利用せず,かつ素掘りだめ・野積みも行わない有畜農家に由来する流通困難な余剰有機物は,その有畜農家が利用する飼耕作圃場へ均一投入するものとした.以上の設定により,流通可能有機物量と流通困難な余剰有機物とを区分するとともに,家畜ふん尿由来有機物の農耕地投入パターンを,作目別の標準投入(飼料作210kg N ha^<-1>,普通畑作140kg N ha^<-1>,水田作70kg N ha^<-1>),飼料畑への均一多量投入,1筆の圃場への過剰投入に類型化した.飼料作圃場への均一多量投入や1筆の圃場への過剰投入に対応する400 kg N ha^<-1>以上投入する圃場面積が全圃場面積に占める割合は,福岡県6.7%,佐賀県8.0%,長崎県20.8%,熊本県18.2%,大分県16.3%,宮崎県31.1%,鹿児島県23.5%,沖縄県18.6%と推定された.同じく過剰投入量が全投入量に占める割合(窒素換算)は,福岡県55.9%,佐賀県73.2%,長崎県78.1%,熊本県72.5%,大分県65.0%,宮崎県83.0%,鹿児島県74.4%,沖縄県71.5%と推定された.
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