本研究では,累積性黒ボク土断面(宮崎県都城市)において,主として植物炭化物からなる比重<1.6画分の炭素量および土壌の全有機態炭素量の年代経過に伴う変化と炭素貯留における植物炭化物の役割に関して基礎的知見を得ることを目的とし,土壌断面の表土および埋没土から44試料(Ap層,A層,AC層およびA/C層)を順次採取して分析に供試した(最も古い試料は,12,800年前のテフラを含む).得られた結果は以下の通りである.1)顕微鏡観察の結果は,土壌のHCl-HF処理後に得られた比重<1.6画分が,主として黒色あるいは黒褐色の植物炭化物から構成されていることを示した.また,炭化物は全ての試料から検出された.2)土壌の全有機態炭素量(SOC)および比重<1.6画分の炭素量(POC)は,それぞれ19.4〜117g kg^<-1>乾土,定量限界値以下(<0.5g kg^<-1>乾土)〜15.8g kg^<-1>乾土の範囲にあり,両者ともに2A層(A.D.1235のテフラを含む)および4A層(6.4cal kaと4.6cal kaのテフラを含む)で高いピークを示した.POCとSOCどちらも,年代の経過と一定の関係を示さなかった.3)SOCに占めるPOCの割合は,最高15.2%に達し,44試料のうち17試料で5%以上の値が示された.4)POCとSOCとの間で高い正の相関関係(r=0.875,0.1%水準で有意)がみられた.POC/SOC値もまた,SOCとの間に高い正の相関関係(r=0.802,0.1%水準で有意)を示した.5)本研究および既往の研究の結果を総合し,わが国の黒ボク土において,植物炭化物は,土壌有機物の構成成分の一つとして,土壌による炭素貯留に貢献しているものと推測した.
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