前報で,土壌抽出の手間を削減するために,複数の肥料成分を統一的に抽出するための0.2M塩酸による土壌抽出法を提案した.この塩酸抽出液に含まれる,主要な肥料成分である硝酸態窒素,アンモニウム態窒素,リン酸,加里を簡易に分析するために,小型反射式光度計の利用を検討した.販売されている試験紙や試験薬の分析可能域を踏まえて,希釈倍率を設定し,分析を行った.その結果,硝酸態窒素は,同濃度の塩酸を含む標準液の結果で値を補正することにより,抽出液を希釈せずに,0.012〜0.32g-Nkg^<-1>が分析できた.アンモニウム態窒素は,5倍に希釈することで,塩酸を含む標準液で補正することなく,0.023〜0.15g-Nkg^<-1>が分析できた.リン酸は,2倍に希釈することで,塩酸を含む標準液で補正することなく,0.093〜1.3g-P_2O_5kg^<-1>が分析できた.この値は,ブレイ二準法による有効態リン酸に近い値になると考えられた.加里は,5倍に希釈することで,塩酸を含む標準液で補正することなく,0.07〜0.94g-K_2Okg^<-1>が分析できた.この値を,交換性加里に読み替えて利用ができると考えられた.以上のことから,0.2M塩酸抽出で得られた抽出液でも,小型反射式光度計を利用して,無機態窒素やリン酸や加里の分析が可能であり,簡易な土壌分析の手段として利用できると考えられた.
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