日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
Print ISSN : 0029-0610
87 巻, 1 号
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巻頭言
報文
  • 草 佳那子, 石川 哲也, 守谷 直子
    2017 年 87 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー

    窒素施肥が稲発酵粗飼料用の茎葉型品種「リーフスター」の窒素濃度と飼料品質に与える影響を調査した.窒素施肥量が増えるとイネ地上部の硝酸態窒素の濃度は上昇した.しかし,牛ふん堆肥6 kg m-2に加えて24 g–N m-2までの窒素施肥条件下では,収穫時期に関わらず反すう家畜の飼料として問題となる硝酸態窒素濃度には達しなかった.黄熟期において,茎葉では窒素施肥量に従って全ての窒素濃度が上昇したが,穂の各種窒素濃度に対する窒素施肥量の影響は茎葉より小さかった.茎葉型品種の「リーフスター」は他の非茎葉型品種よりも穂に移行する窒素が少なく,茎葉に残存する窒素が多かった.また,窒素施肥量の増加が乾物生産性向上に寄与しなかった24 g–N m-2の窒素施肥区では,地上部の窒素濃度の上昇により,窒素に対して相対的にNCWFE に示される易利用性炭水化物が少なかったことが,サイレージ発酵中の揮発性塩基態窒素の生成を促進し,サイレージの発酵品質が低下したと考えられた.適正な窒素施肥量は乾物生産と飼料品質の両面から重要である.

  • 三瀬 千暁, 片桐 伴治, 西本 俊介, 亀島 欣一, 三宅 通博
    2017 年 87 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー

    本報では,550℃で1時間熱処理したウシ由来HApを高濃度汚染土壌に添加し,難溶化したCdの存在状態をXAFS法により解析した.その結果,以下の事柄が判明した.

    1)交換態及び無機態として存在するCdは2価であり,近接原子は酸素で6配位である可能性が示された.

    2)ウシ由来HApの添加によって増加した残渣画分は,HAp中のCa2+と置換したCd2+である可能性が示された.

    以上から,ウシ由来HApを土壌に添加することにより,土壌中のCdがHAp中に取り込まれることで,長期的に難溶化すると推察される.

  • 永沢 朋子, 椎名 勇, 八槇 敦
    2017 年 87 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー

    2011年3月に発生した東日本大震災の津波により冠水した千葉県九十九里沿岸部の砂質の水田(A,B及びC)において,代かき除塩に伴うCl-及びNa+の挙動と土壌養分への影響を調査した.

    1)冠水により調査水田A,B,Cの作土のEC,Cl-,水溶性及び交換性Na+含量は,それぞれ211~480 mS m-1, 108.5~240.1 mmol kg-1, 64.7~137.0 mmol kg-1及び15.2~48.8 mmol kg-1と著しく高くなった.これらは,4~6回の代かき除塩により,それぞれ9~66 mS m-1, 1.3~16.7 mmol kg-1, 2.2~23.1 mmol kg-1及び1.8~12.0 mmol kg-1に低下した.また,交換性ナトリウム飽和度(ESP)は,除塩前が17~67%であったのに対して,代かき除塩後が2~18%に低下した.

    2)代かき除塩後の交換性Ca2+,Mg2+及びK+含量は,それぞれ11.2~21.3, 5.7~10.7, 1.6~3.5 mmol kg-1であり,除塩前の各イオン含量に対して,Cl-及び水溶性及び交換性Na+が49~99%減少した.交換性Ca2+,Mg2+及びK+は,1~52%増加または3~37%減少した.

    3)2012年3月のCl-及び総Na+含量(水溶性及び交換性の合計量)は,Aでは深さ0~75 cmでともに4.4 mmol kg-1以下と低かった.これに対して,B及びCでは,深さ0~30 cmがともに1.0~23.6 mmol kg-1, 深さ30~90 cmのCl-含量が2.4~29.6 mmol kg-1, Na+含量が6.1~31.4 mmol kg-1で,Cl-及び Na+はほぼ同時あるいはNa+が若干遅れて下方に移動することが認められた.

    4)代かき除塩後に,中干しを行わず水稲を作付けた.その結果,A及びBの登熟歩合がそれぞれ60%及び58%と顕著に低く,精玄米重は,それぞれ436 gm-2及び412 g m-2で,例年収量より19及び28%少なかった.

  • 板橋 直
    2017 年 87 巻 1 号 p. 22-30
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー

    霞ヶ浦周辺の 9河川流域は,前報(板橋ら,2013)のGISモデルにより土壌面に負荷された窒素の河川水質への影響(脆弱性)の違いに基づいて,二つの地域に区分された.このことにより,以下のことが明らかになった.

    1)対象とした 9河川流域における脆弱性の高い地域

    (MVZ)の流域面積に占める割合(MVZ面積率)は,6.8~52.4%と流域によって異なった.

    2)脆弱性の低い地域(LVZ)と MVZにおける面積当たり窒素負荷と,それぞれの地域から河川に流出する水の平均的な窒素濃度の間には直線で近似できる関係が成立した.この時, MVZの直線の傾きは LVZの直線の傾きの約 6.5倍であった.

    3)この傾きの比は,流域の MVZ面積率との比較により河川水窒素濃度を低下させるために優先的に窒素負荷削減を進める地域を判断することに利用できた.

    4)MVZ面積率の増加は,河川水窒素濃度を MVZからの流出水窒素濃度に近づける効果を持つ.そのため,これを規定する水辺域とそこに流入する地下水流路を保全することは,現状の河川水窒素濃度を維持するために重要である.

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