日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
Print ISSN : 0029-0610
90 巻, 6 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
報文
  • 飯村 康夫, Suchewaboripont Vilanee, 廣田 充, 吉竹 晋平, 大塚 俊之
    2019 年 90 巻 6 号 p. 415-423
    発行日: 2019/12/05
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    本研究では一次遷移で成立したブナ・ミズナラ成熟林下の未熟土における窒素無機化速度と硝化速度をレジンコア法を用いて多地点で測定し,これらの空間変動性と土壌環境因子との関係,およびギャップモザイク構造に代表される成熟林での構造不均一性との関係について知見を得ることを目的とした.本試験地での135日間における窒素無機化速度および硝化速度はそれぞれ2.7~94.7 kg-N ha−1 period−1と0.1~31.1 kg-N ha−1 period−1であり,平均値はそれぞれ24.6と4.9 kg-N ha−1 period−1であった.また,窒素無機化に占める硝化の割合(硝化率)は0.9~91.5%で,平均は24.3%であり,無機化速度や硝化速度と共に空間変動性が非常に高かった.窒素無機化や硝化速度,および調査地点上の開空度(%)は無機態窒素の現存量(NO3-N, NH4-N)や仮比重,鉱質土壌への窒素流入量と有意な正の相関を示し,土壌CN比とは有意な負の相関を示した.さらに,窒素無機化速度や硝化速度と開空度との間には有意な正の相関が認められ,ギャップ(開空度50%以上)では窒素無機化や硝化速度が林冠下(開空度50%未満)よりも有意に高かった.これらより,本試験地ではギャップ等で林冠が開いている場所ほど窒素無機化速度や硝化速度が高いことが示唆された.

  • 井上 弦, 中尾 淳, 矢内 純太, 佐瀬 隆, 小西 茂毅
    2019 年 90 巻 6 号 p. 424-432
    発行日: 2019/12/05
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    茶の覆下栽培(被覆栽培)の発祥時期を明らかにする目的で,京都府宇治市の伝統的茶園,宇治七茗園のうち現存する唯一の茶園(奥の山茶園)において,在来種で古いとされる茶樹直下に試坑を作製し,土壌断面調査とともに,炭素含量,植物珪酸体組成,年代値を調べた.その結果,Bw層(試料no. 8)–AB層(試料no. 7)境界で炭素含量が増加をはじめ,AB層(試料no. 6)–A層境界(試料no. 5)から,土色の黒味が増し,炭素含量も急増した.植物珪酸体組成では,AB層でイネ属起源の植物珪酸体が明瞭に認められるようになり,AB層–A層境界からさらに同植物珪酸体の検出密度が増し,また,自然植生由来の植物珪酸体はAB層からA層への減少が示唆された.加えて,14C年代値は,AB層最上部(no. 6)で較正暦年代(2σ)1341~1396 cal AD(probability=56.9%,中央値AD1369),A層最下部(no. 5)で較正暦年代(2σ)1396~1440 cal AD(probability=90.8%,中央値AD1418)を示した.以上のことから,宇治最古の茶園(奥の山茶園)における覆下栽培は,文献資料が示す16世紀後半からさらに150年は遡り,少なくとも15世紀前半には発生していたと推定された.

  • 八木 哲生, 酒井 治, 松本 武彦, 三枝 俊哉
    2019 年 90 巻 6 号 p. 433-442
    発行日: 2019/12/05
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    乳牛ふん尿を主原料とした堆肥およびスラリーについて,飼料用トウモロコシに対する連用条件での窒素の肥料換算係数(減肥可能量を計算するため,ふん尿処理物の全窒素含量に乗じる係数)を設定するため,埋設試験および栽培試験を行った.

    埋設試験では,堆肥およびスラリーのいずれについても,埋設2年目以降も経年的に有機態窒素の分解が認められた.6年間の栽培試験では,窒素肥沃度の指標である熱水抽出性窒素含量が減少傾向を示す区が多かったが,堆肥施用区ではその減少度合が小さかった.連用2年目以降の堆肥およびスラリーの肥料換算係数は,単年施用を想定した現行基準(堆肥で0.20, スラリーで0.40)を上回る場合が多く,連用年数がある程度経過した条件での肥料換算係数は堆肥で約0.3, スラリーで約0.5と見込まれた.本試験での堆肥およびスラリー由来の有機態窒素施用量を踏まえ,いずれについても連用開始5年目には連用効果を見込んだ窒素減肥が可能と判断した.

    以上より,堆肥またはスラリーを5年以上連用する場合,窒素の肥料換算係数を堆肥で0.30, スラリーで0.50と設定した.

  • 山本 昭範, 水村 彩乃, 秋山 博子
    2019 年 90 巻 6 号 p. 443-450
    発行日: 2019/12/05
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    農耕地土壌への施用はコーヒー抽出粕の利用法の一つであるが,コーヒー抽出粕の施用が農耕地土壌におけるN2Oの発生や生成経路に与える影響は明らかでない.本研究は,農耕地土壌へのコーヒー抽出粕施用がN2O発生に与える影響,また,コーヒー抽出粕施用後の硝化および脱窒の変化とN2O発生の関係を明らかにするため野外ポット試験と土壌培養実験を行った.ポット試験ではホウレンソウを栽培し,両試験で施肥基準相当量の化成肥料を施用した.

    ポット試験の結果,コーヒー抽出粕施用あり(WC)のN2O発生は施用なし(NC)と比べて処理後5日から21日に大きく減少した.WCの積算N2O発生量(70日間)はNCよりも有意に低かった.処理後のWCのアンモニア酸化活性は実験期間を通してNCに比べて低かった.また,アセチレンブロック法によって,WCではNCよりもN2OからN2への還元が促進されたと考えられた.土壌培養実験において,処理後のN2O発生の変化は飽水度(water-filled pore space; WFPS)条件で異なり,WFPS60%におけるWCのN2O発生はNCに比べて増加したが,WFPS90%では減少した.一方,コーヒー抽出粕施用によって収量が減少する傾向が認められた.本研究のポット試験と土壌培養実験は,コーヒー抽出粕施用はアンモニア酸化の抑制とN2O還元の促進により農耕地からのN2O発生を削減する可能性があるが,その効果はWFPS条件により異なることを示した.

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