日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
Print ISSN : 0029-0610
91 巻, 6 号
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報文
  • 金田 吉弘, 西田 瑞彦, 高階 史章, 佐藤 孝
    2020 年 91 巻 6 号 p. 417-425
    発行日: 2020/12/05
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    軽量で安価なハンドヘルド作物センサーにより,水稲安定多収のための生育診断技術を検討した.収量700 g m−2を目標とする生育時期別の目標NDVIの上限値および下限値と目標生育値を策定した.NDVIと草丈×茎数×葉色値は,生育時期や年次に関わらず同じ指数関数式で示すことが可能であり,高い決定係数が認められた.目標とするNDVIにより生育診断を行い,追肥を実施した結果,2カ年とも目標とする穂数と葉色値を確保した.NDVIによる生育診断により,気象条件が異なる2カ年において700 g m−2レベルの多収を実証した.以上から,ハンドヘルド作物センサーは,安定多収水稲の生育診断に有効であることが明らかになった.

  • 若林 正吉
    2020 年 91 巻 6 号 p. 426-436
    発行日: 2020/12/05
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    17世紀に成立した2種類の文献,『会津農書』と土地帳を基に,近世の会津地方の農民が土壌をどのように分類していたのかを解析した.『会津農書』では,土壌は,農地の等級の高いものから順に,黃真土(山鳥真土),黒真土,白真土,沙真土,野真土,徒真土,沙土,野土,徒土の9種に分類された.これらの土壌は,容積重や色,味,土性,構造などによって特徴づけられ,作物の適不適と関連づけられた.土地帳は,村ごとに土壌分類・等級別の田畑面積が記録された広域的な調査記録であり,その209ヶ村の記載を集計解析した.土壌は,土壌型,色,混在物の3項目を組み合わせて分類され,総計62種の分類群が認められた.土壌型は,野土,真土,砂土,無特徴型(特定の土壌型を有しない)が主要で,部分的に,粘土,す土,渋土,瀝土,川ゴミ土,疎土,死土が認められた.色は,黒,白,赤の3色が基本で,混在物は,砂と石が主体であった.同種の土壌でも農地の等級には幅があったが,等級の中央値で比べると,『会津農書』の記載に対応した土壌の序列が認められた.村の位置と1/20万地形分類図,1/5万農耕地土壌図の比較より,真土は低地,野土は山地や台地に優占的に分布することが示されたが,土壌図上の図示区分と土壌型の分布は合致しなかった.資料の解析から,近世会津農民が,感覚を駆使して土壌を細密に分類し,農地の生産性評価に役立てていたことが明らかとなった.

  • 塩野 宏之, 菅原 令大, 熊谷 勝巳
    2020 年 91 巻 6 号 p. 437-444
    発行日: 2020/12/05
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    近年,農耕地の土壌pHの低下が指摘され,土づくり資材施用の重要性が再認識されている.一方,土づくり資材施用による水田の土壌pHの変化は,稲わらの分解や温室効果ガスであるメタンの発生量に影響すると考えられる.そのため,稲わらが秋に散布され,春にすき込まれる積雪寒冷地水田において,資材添加による土壌pHの変化がこれらに及ぼす影響を2ヵ年調査した.処理区は,硫黄資材を用いて土壌pHを5程度に低下させた低pH区,炭酸カルシウムで土壌pHを7程度に上昇させた高pH区とし,無処理区(土壌pH 5.5)と比較した.資材で土壌pHを変化させた後,10月から翌年4月までの稲わら分解率は,高pH区>無処理区>低pH区の順で高くなった.メタン発生量は高pH区>無処理区>低pH区の順で多くなった.低pH区におけるメタン発生量の減少は,硫酸還元の影響が大きいと推察された.高pH区では他区に比べ土壌Ehの低下が早くメタン発生量が増加した.水田からのメタン発生量は稲わら腐熟の程度より,供試した資材に含まれる成分の影響をより強く受けていた.土づくりにあたっては多様な資材があるが,個々の資材について水稲の生育,メタン発生量を総合的に判断し,検証することが今後必要である.

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