日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
Print ISSN : 0029-0610
最新号
選択された号の論文の29件中1~29を表示しています
進歩総説:植物のミネラル輸送研究最前線
報文
  • 望月 秀俊, 糸川 修司, 速水 悠, 渕山 律子, 坂口 巌
    2021 年 92 巻 2 号 p. 166-173
    発行日: 2021/04/05
    公開日: 2021/04/13
    ジャーナル 認証あり

    土壌水分センサー5TMと5TEについて,1組の体積含水率θの実測値とセンサーの出力値RAWを用いて供試土壌の校正式を決定する簡易迅速校正法を提案することを本稿の目的とした.その際,既往の文献で提案された土壌水分センサーEC-5の簡易迅速校正法と同様に,複数の土壌に対する校正式群から決定される,校正式の傾き–切片関係を適用した.また,校正式群が同時に交差すると見なせる特異点(RAW0, θ0)について,その体積含水率θ0と対応する比誘電率εa0を検討した.

    高知県と熊本県において,複数組の体積含水率の実測値と出力値を用いて校正式を決定する現場校正法によって得られた校正式の傾きaと切片bの関係性を解析した結果,EC-5の場合と同様に強い線形性が示された.また,既往の文献で示されているabについても解析の対象に加え,1次式で表される傾き–切片関係式中の係数(傾きと切片)を決定するとともに,前述の特異点を同定した.本法を用いた場合,複数組の体積含水率と出力値を用いた現場校正法よりは精度は劣るものの,一般に用いられるTopp式よりも精度良く体積含水率を予測できた.また,EC-5の場合と同様に,5TEと5TMの校正式群も特異点を有することが示された.しかし,既往の研究でvan Genuchten式の残留体積含水率と見なしたθ0とεa0は,EC-5の場合と大きく異なった.

  • 山口 千仁, 高橋 智紀, 加藤 邦彦, 新良 力也
    2021 年 92 巻 2 号 p. 174-181
    発行日: 2021/04/05
    公開日: 2021/04/13
    ジャーナル 認証あり

    アブラナ科根こぶ病などの土壌病害の防除には弱アルカリ性(pH 7.5程度)への土壌pHの矯正が有効である.土壌によってアルカリ資材添加に応じたpH上昇程度は異なるため,矯正に必要なアルカリ資材添加量の把握は煩雑で,より簡易な推定法が求められる.本研究では,東日本および北海道の水田土壌約230点にアルカリ資材として転炉スラグまたは消石灰を加え,土壌pH緩衝曲線を描いた.そして,この曲線を簡易なシグモイド曲線として数式化し,土壌pH緩衝能の指標である定数部分を,土壌調査によって知ることができるパラメータで表すことを試みた.定数部分を粘土含有量と全炭素含有量で表した回帰式の決定係数は転炉スラグで0.333, 消石灰で0.429だった.両含有量から推定したpH緩衝曲線に資材添加量を代入し算出されるpH値と実測値との関係を調べた.転炉スラグの場合,資材投入量がアルカリ分換算量で0.025~0.25 g/10 g乾土のとき,回帰式の決定係数は0.609–0.810と高く,この時のpHは酸性~弱アルカリ性に相当した.消石灰の場合,回帰式の決定係数が0.5より高いのは資材投入量がアルカリ分換算量で0.025~0.05 g/10 g乾土のときであり,pHは酸性~弱アルカリ性に相当した.このことから,作成した推定式は酸性改良や弱アルカリ性への土壌pH矯正に用いることができると考えられた.

  • 佐々木 章晴, Zhihao Tu, 湯本 勳
    2021 年 92 巻 2 号 p. 182-191
    発行日: 2021/04/05
    公開日: 2021/04/13
    ジャーナル 認証あり

    地球温暖化抑制には,土壌炭素含有率の増加が有効であると指摘されている.草地土壌は土壌炭素含有率が高く,二酸化炭素吸収源として期待できる.そこで草地において,草地更新後年数や施肥が土壌炭素含有率に与える影響について検討した.

    調査地は北海道根室地方14カ所の草地とした.各草地で植生を調査し,物理性および化学性測定用の土壌試料を採取した.土壌は,A0層の厚さを計測し,化学性と真核微生物の存在比率を測定した.また,得られたデータを,草地管理状況を勘案して解析した.

    土壌中の全炭素含有率に直接影響する要因としては,A0層厚さと土壌pH(H2O)が挙げられた.A0層の厚さの増大によって,土壌中の全炭素含有率は上昇する傾向があった.一方,土壌pH(H2O)の増加によって土壌中の全炭素含有率は減少する傾向があった.

    草地更新後の経過年数の経過によって,A0層厚さが増加した.一方,草地への窒素投入量の増加によって,A0層厚さは減少した.

    窒素投入量抑制と草地更新後年数の増加は,土壌炭素含有率を増加させる傾向があった.土壌交換性カルシウムの増加は土壌pH(H2O)を増加させ,土壌炭素含有率を低下させたが,イネ科牧草冠部被度と土壌真核微生物叢の多様性を増大させた.

    以上の結果は,土壌炭素含有量と土壌真核微生物叢の多様性を両立させる,最適なカルシウム資材施用方法の検討の可能性を示唆していた.

  • 櫻井 道彦, 坂口 雅己, 日笠 裕治
    2021 年 92 巻 2 号 p. 192-199
    発行日: 2021/04/05
    公開日: 2021/04/13
    ジャーナル 認証あり

    有機栽培に取り組んで間もない圃場では窒素肥沃度が醸成されていないため低収となることが多い.緑肥は病害虫や雑草の抑制のみならず地力向上にも効果を有する.播種または植付けの時点から遡り2年以上,化学肥料や化学合成農薬を使用しない転換期間にマメ科緑肥を栽培することで,有機栽培畑として望ましい窒素肥沃度(熱水抽出性窒素50~70 mg kg−1)に達するための方策を圃場試験で検討した.

    転換期間に相当する1, 2年目に後作緑肥(ヘアリーベッチ)または休閑緑肥(アカクローバ)を栽培することにより,熱水抽出性窒素は5~15 mg kg−1程度上昇した.この結果は,緑肥が熱水抽出性窒素の主成分である易分解性有機態窒素の給源として有効に作用したことを示している.それに伴い,有機栽培転換後に相当する3, 4年目に栽培した野菜類も10~30%程度増収した.また,畑土壌における微生物活性の指標であるα-グルコシダーゼ活性は緑肥のすき込み量に応じて上昇する傾向であった.

    以上の結果を基に,有機栽培への転換期間に緑肥を導入することにより窒素肥沃度を高めるモデルを提案した.

ノート
  • 岡 紀邦, 森本 晶, 竹本 敏彦, 中村 卓司, 大友 量, 八木岡 敦, 君和田 健二, 岡﨑 圭毅
    2021 年 92 巻 2 号 p. 200-206
    発行日: 2021/04/05
    公開日: 2021/04/13
    ジャーナル 認証あり
  • 尾﨑 洋輔, 田中 達也, 山下 耕生
    2021 年 92 巻 2 号 p. 207-212
    発行日: 2021/04/05
    公開日: 2021/04/13
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,切り花用鮮度保持容器を用いてトマト葉柄基部切断面から肥料成分を果実に効率的に供給できるかどうかを評価した.

    Caと化学的性質が類似したSrを用いたトレーサー実験を行ったところ,トマト葉柄基部切断面からSrを供与すると,施与部位より上位の葉でSr含有率が増大した.果実については,葉に比べると移行率が低かったが,対照区の果実と比較して顕著にSr含有率が増大した.よって,葉柄基部切断面から供与した肥料成分は,蒸散流に伴って葉柄基部より上位に移行することが示唆された.さらに果実肥大期のトマトに対し,CaCl2およびホウ酸水溶液を,葉柄切断面から同容器を用いて供与したところ,供与部位直上のトマト果実中のCaおよびB含有率が増加した.

    以上より,切り花鮮度保持容器を用いてCaやBを含む肥料溶液を果房直下の葉柄切断面から果実に効率的に供与できることが示された.本手法はトマトの尻腐れ果を抑制するための応急的な対策として有効と考えられるが,今後は供試液の成分バランスや作業性の改善についても最適化を図る必要がある.

資料
ニュース
feedback
Top