竹中大工道具館研究紀要
Online ISSN : 2436-1453
Print ISSN : 0915-3683
2 巻
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  • 星野 欣也, 平澤 一雄, 渡辺 昌, 土屋 安見
    1990 年 2 巻 p. 1-7
    発行日: 1990年
    公開日: 2021/12/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    広島県草戸千軒町遺跡出土鋸(1980年出土)をもとにした、わが国中世の代表的鋸 “ 木の葉型鋸”, の形状復元と、それによる機能追求の第二段階として、今回は適正鋸歯角度について検討するため、6点の実験用鋸による作業実験を行った。 1)供試鋸は同一板厚で、歯部の中央部にだけ頂角55度の二等辺三角形の箱屋目を刻んだ。 2)鋸歯のナゲシ角を15度から40度まで、個体ごとに5度ずつ変えて、目立てを施した。 3)供試材には、断面4.5cm X 10.5cmの檜材を使用した。 4)切れ味の劣る2点を除外した4点の鋸について、6名のパネルが一対比較法による使用実験を行い、優劣を判定した。 5)上記の実験結果を計数処理した結果、今回の実験用鋸の中では、ナゲシ角40度(実測値≒36度)のものが最も切れ味が良いとの判定が得られたが、今回は40度以上のナゲシ角を付与した鋸での実験を行っていない為、適正鋸歯角度についての結論は得られなかった。
  • 沖本 弘
    1990 年 2 巻 p. 8-22
    発行日: 1990年
    公開日: 2021/12/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    このたび、変わり鍛冶で知られる左久作氏より手持ちの材料を数種類提供していただいたので、大工道具の特質調査のー側面として化学成分等の品質調査を実施した。分析等は㈱コベルコ科研に依頼して実施した。 鋼の硬度(強度)を制御する元素はC(炭素)であるが、今回の試料はC=1 .13~ 1.49%であった。硬い材料は一般にもろいので、これに粘りをもたすためによく合金元素(Ni:ニッケル、Cr:クロム、W:タングステン)を添加する場合がある。試料のW6、W4には明らかに添加されている。 刃物はできるだけ薄い鋼に軟らかい地金をつけたものが上等とされている。今回の地金もCが低く0.0093~0.081%と鋼の含有率に対して2桁も小さい値を示している。一方、地金に特長的なことは鋼に反して、不純元素が著しく多く、したがって非金属介在物も多いという結果を示した。 左久作氏の提供の外来材料の化学成分を中心に調べたが、このように特性の異なった材料の鍛接条件を鍛冶師達はどのように見出し、会得したか興味あることである。
  • 渡辺 昌
    1990 年 2 巻 p. 23-45
    発行日: 1990年
    公開日: 2021/12/01
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    1943年に労働科学研究所の行った調査によれば、一人前の大工が本格的な仕事で使う道具は179点、そのうち錐は7種類26点であった。これが近現代における建築用の錐の標準編成である。 しかし、その前の時代である近世の建築用の錐については、詳細な調査報告が見あたらない。そこで、近世の実物、文献、絵画、建築部材等の諸資料を調査した結果、次のように要約することができる。 (1) 近現代の揉錐4種類(四方錐、三つ目錐、壷錐、ねずみ歯錐)は、近世にも存在し、建築用の錐として使われていた。 (2) 近世には、揉錐であけた穴を大きくするための錐である「錑」が使われていたが、近・現代になると姿を消している。 (3) 明治時代以後、西洋文明の影響で普及したハンドル錐が、近世の終り頃には、すでに一部の地方で、日本の大工によって使われていた。 (4) 近世の堂宮大工の中には、近世の文献資料に記載のない錐を用いる者もいた。 (5) 近世の絵画資料には、建築工匠が錐を使っている場面を描いたものがいくつかある。中世以前の絵画には、そういう場面は見いだせない。 (6) 近世の和釘の形状を見ると、錐によって釘穴を穿つという作業は、現在考える以上に重要であったと思われる。
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