竹中大工道具館研究紀要
Online ISSN : 2436-1453
Print ISSN : 0915-3683
25 巻
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  • [舟弘]銘・船津祐司の鑿製作
    石社 修一
    2014 年 25 巻 p. 3-68
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/03/20
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本稿は、越後与板の鑿鍛冶である船津祐司の鍛冶技法を記録したものである。船津は[舟弘]銘で全国の一流の大工職人から高い評価を得ている。船津の仕事は、大工道具産地の与板での伝統的な技法と合理的な技法の上に、科 学的な研究を積み重ねたものである。  本調査では、12日間の日常通りの作業工程を記録した。また同じく鍛冶を職業とする調査が詳細に記録を試みた。以下に調査結果の概要をまとめる。 1  鋼は白紙1号の中でも高炭素のものを好んで用いる。その火造りは、コークス炉での鍛接・鍛造の後に、電気炉で4回にわたり段階的に加熱温度を下げながら繰り返す丁寧な鍛錬で、金属組織を微細化している。 2  整形作業は、グラインダーとペーパーバフを効率的にこなす。その一方で、最後はセン床にあぐらをかき、鑢がけを行う鑿鍛冶の昔からの流儀で仕上げる。 3  松炭を用いた焼入れは、暗闇の中で行う。幅寸法の異なる、鑿の1分から1寸4分までの全てが均一に赤められ焼入れされた、まさに熟練の技術といえる。焼戻しは、電気を熱源とした油もどしで行う。 4  3週間の調査期間中に焼入れされた製品は、大入鑿43本・叩鑿など5本・小鉋1枚・平鉋3枚の合計52点であった。 5  鑿鍛冶の枠にとらわれず、鉋など幅広く大工道具を手掛けている。その鍛冶技法は、師である碓氷健吾の科学的データを蓄積した知見に、自らの実証実験からの経験を重ねたものである。本稿は船津65歳という円熟期の記録だが、大工との技術研究から更なる改良をも続けている。
  • 崔 ゴウン
    2014 年 25 巻 p. 71-93
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/03/20
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本稿は韓国国内で行われた韓国大工道具研究に関する基礎資料および発表された論文を整理し、以下を明らかにした 1  研究の基礎資料となる実物資料、文献・絵画資料などが朝鮮時代後期(17世紀以降)に集中しているため、大工道具研究も朝鮮時代後期に重点が置かれている。 2  朝鮮時代以前の大工道具については考古学の発掘遺物より考察が行われているが、ごくわずかで、まだ基礎資料整理段階と言える。 3  基本的な道具分類は確立されており、今後は個々の道具に関する研究が必要である。併せて現状の鍛冶調査、大工への聞き取り調査も並行する必要がある。
  • 李 暉
    2014 年 25 巻 p. 95-138
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/03/20
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本稿は、中国北京故宮の修繕組織である「古建修繕中心」に所属する大工が用いる大工道具に関する調査成果を報告するものである。主な内容は、以下の3点に要約できる。 1  中国の大工道具に関する先行研究を整理・分析し、標準編成の提示が最も喫緊の課題であると判断した。その端緒として古建修繕中心における大工道具の標準編成を調査した。 2  標準編成とみなす道具は、全体で54種類72点である。このうち〈刨〉(鉋)が最も種類が多く11種類17点、ついで〈量具〉(定規類)10種類16点、〈鋸〉(鋸)7種類7点、〈鑿〉(鑿)4種類10点である。 3  北京近郊の大工と異なり、北京故宮の修繕組織においては、〈麻葉頭〉という清代組物の木鼻の形をした〈墨斗〉(墨壺)や大型の〈工作台〉(作業台)を用いるという特色がある。
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