竹中大工道具館研究紀要
Online ISSN : 2436-1453
Print ISSN : 0915-3683
5 巻
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  • 渡邉 晶
    1993 年 5 巻 p. 1-61
    発行日: 1993年
    公開日: 2022/01/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    1943年に労働科学研究所の行った調査によれば、一人前の大工が本格的な仕事で使う道具は179点、そのうち鉋は18種類42点であった。これが、近・現代における建築用の鉋の標準編成である。 では、近世の建築用の鉋にはどういう種類があったのだろうか。近世の諸資料を調査した結果、次のように要約することができる。 (1) 近世の建築用の鉋は、平面切削用、溝切削用、曲面切削用、面取切削用、台調整用に分類でき、少なくとも12種類26点のものが使用されていた。 (2) 平面切削用の標準的な形状の鉋は、鉋身が一枚刃で、鉋台に押溝(おさえみぞ)で固定されていた。 (3) 標準的な形状の鉋台の長さは、7寸から9寸ぐらいまでであった。 (4) 「麁・あら」 「中」 「上」の切削工程があり、「上鉋」の刃口空は、「髪毛のごとく」わずかであった。 (5) 絵画資料などにより、少なくとも17世紀以降は台鉋を引いて使っていた。 (6) 絵画資料を見た限りでは、削り台を用いて立った姿勢で作業をするようになったのは、19世紀初め以降であった。 (7) 17世紀後半から18世紀初めにかけて、鉋切削機構の精密化があったと推定した。 (8) 絵画と文献記述によって、17世紀後半までヤリカンナと鉋との併用期があり、18世紀以降、鉋が仕上げ切削の主役になったと推定した。
  • 星野 欣也, 土屋 安見, 石村 具美
    1993 年 5 巻 p. 62-74
    発行日: 1993年
    公開日: 2022/01/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    今回、東京、新潟県三条、大阪の鉋台製造業者の訪問調査を行なった。鉋台は、かつては使い手が自ら造るものであったが、社会状況の変化に伴い、既製品が流通するようになり、鉋台製造専門の職人が「台屋」として成立した。鉋台の材質はおもに白樫で、秋から春にかけて伐採した材を乾燥させて使用する。明治期には割材が使われたが、昭和に入ると量産できる挽材が主流になった。以前は台屋が木工所から素材の板を仕入れ、使用に応じて小割していたようだが、現在では、鉋一挺分に製材されたものが流通している。鉋台の加工は、刃を五分の状態で仕込み、使い手が最後の仕上げをする五分仕込みの台から、完全に刃を仕込んだ本仕込みの台へと変化した。昔ながらの手彫りの職人は減少し、現在では機械彫りが主流になっているが、仕上げには手作業が欠かせない。
  • 沖本 弘
    1993 年 5 巻 p. 75-89
    発行日: 1993年
    公開日: 2022/01/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    平鉋の刃の仕込勾配に着目して、7種類の樹種について表面仕上げ状態を比較検討した。 31度から44度の範囲で仕込勾配を設定した鉋台に、仕上げ研ぎを行った鉋刃を仕込み、仕上げ削りを行った。仕上げ面は表面粗さ計で測定した。 特殊な傾向を示したラワンを除いた全試験樹種の表面最大粗さの平均値(aveRmax) を切削条件でみると、仕込勾配が小さくなり、切刃角が大きくなるほど、粗さが小さくなる傾向を示した。各試験で得られた最大粗さ(Rmax)を仕込勾配で見ると、勾配が急になるほど大きな粗さを示し、かつ最大粗さのバラツキが大きくなる。また、緩い勾配でも最大粗さのバラツキが大きくなり、8寸勾配で最大粗さのバラツキが最も少なくなる。
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