道徳と教育
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最新号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 河野辺 貴則
    2023 年342 巻 p. 3-
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、人権教育指導資料に掲載されている道徳教材並びに指導例示が、人権教育と道徳科との連動に向けたアプローチになり得るのか、すなわち、個別の人権課題を題材にした道徳授業を帰納的な観点から分析し、人権教育と道徳科の接合点とその役割を検討することにある。本研究では人権教育指導資料における個別の人権課題を題材にした道徳教材並びに指導例示の傾向と特色を調査する。その上で、人権教育指導資料が供給し続けてきた人権教育と道徳科との連動を図る要素が含まれている道徳教材並びに指導例示に着目し、人権教育と道徳科の連動を図るための双方の接合点と役割について、帰納的な観点を基に論じる。
  • 谷本 和子
    2023 年342 巻 p. 15-
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル オープンアクセス
    マイノリティとしてアメリカ社会に生きる先住民族ナヴァホ(Navajo)は、「伝統文化教育」にどのような意義を見出すのだろうか。本研究では、アメリカ連邦政府のインディアン教育政策を踏まえて、ナヴァホの「伝統文化教育」が確立する過程を概観し、そのような「伝統文化教育」の根本にあるナヴァホの道徳的価値の原理について確認したうえで、ナヴァホの「伝統文化教育」の特徴を明示する「コンテント・スタンダード(Diné Content Standards)」に着目しながら検討した。その結果、2つの意義が見出された。1つ目は共通の文化的価値観と共同体意識を醸成し、ナヴァホの民族史観を共有できる人材を養成することであった。そして2つ目は、子どもたちが二つの社会のあり様について自分たちの見解を育て、健全な自尊感情を育成し、多様な価値観の調和と文化の共生をはかることであった。
  • 大瀧 辰也
    2023 年342 巻 p. 27-
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿の目的は、道徳教育における「共感」の意義のひとつを、マーサ・ヌスバウムの共苦(compassion)の理論や関連する議論を通じて分析することにある。ヌスバウムの共苦とは、他者の苦痛に向けられた、次の4つの思考をともなう感情である。(1)その苦痛が重大である、(2)苦痛の原因が本人の悪い行いではない、(3)苦しむ人と類似した状況に陥る可能性が自身にもあると考えられる、(4)苦痛を感じる人が、共苦を覚える人の人生にとって重要な存在である。彼女にとって共苦は、他者の苦痛への関心を促すため、社会正義への架橋となる。これに対し批判者は、ヌスバウムの理論が他者の苦痛を見聞きしてほぼ無条件に感じられる苦痛を無視したあまりにも限定的なものであると批判する。この前認識的な位相の 苦痛は、ある人がもつ「重大な苦痛」「本人の責任」に関する考えを変容させ、共苦の対象を拡大させることで、より多くの他者を考慮の範疇に組み入れる契機となりうる。
  • 門𦚰 大輔
    2023 年342 巻 p. 39-
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、令和2年度版小学校「特別の教科 道徳」教科用図書における主題名を類型化することで、主題名の表記にはどのような傾向があるのかを明らかにすることを目的としている。まず、主題名の語尾に着目し品詞毎に分類した。次に、品詞毎に主題名のもつ特徴について分析し、類型化を試みた。最後に、類型化をもとに「授業内容の概観性」「学習者の考えの幅」といった2軸で四象限マトリクスを作成し、「主題名傾向の現状とその背景」及び「各象限における類型に想定されている意図」について考察した。本研究によって以下の3点が導出された。 (1)語尾の品詞について、名詞(44.9%)、続いて助詞(32.4%)が多い傾向になっていること。 (2)10類型に類型化することができること。 (3) 傾向の現状として、10類型中「概念的主題名」(44.8%)、「示唆的主題名」(31.8%)が多い傾向にあること。
  • 青木 利樹
    2023 年342 巻 p. 51-
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル オープンアクセス
    小学校学習指導要領では、小学校の通常の学級における発達障害を有する児童への配慮・支援が重要視されている。本稿では、小学校道徳科での発達障害を有する児童の困難とその解消のために行われている配慮・支援の実態を明らかにすることを目的とし、1つの市の全小学校の通常の学級の担任教員を対象に「『特別の教科 道徳』の指導方法・評価等について(報告)」の内容を用いて質問紙調査を行った。その結果、学習障害の傾向のある児童には、語彙不足を補うような配慮・支援が行われており、ADHDの傾向のある児童には、短時間で活動を区切りメリハリのある活動を取り入れるなどの配慮・支援が行われていた。その他にもICT機器が活用されていたり、特別支援教育コーディネーター等と連携した個別指導や補習的学習が行われていたりする実態が明らかとなった。一方で、今後の研究課題として、道徳科の教科特性を活かした配慮・支援の検討の必要性などが挙げられた。
  • 原口 友輝, 空 健太
    2023 年342 巻 p. 65-
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、近年諸外国で活発に研究・実践されている「困難な歴史(Difficult Histories)」に着目し、「困難な歴史」が現代の民主主義社会において重要な課題であり、道徳的な葛藤を個人及び社会レベルで取り上げることを可能にする教材となることを主張した。そのために、「困難な歴史」とは何か、なぜ重要なのかについて述べた上で、「困難な歴史」の教育について理論的に論じたキャンベル・スクリブナー(Campbell Scribner)の論考と、紛争後社会における歴史教育の立場から「困難な歴史」実践を検討したアラン・マッカリー(Alan McCully)の論考を取り上げた。これらの論考の考察を通して、「困難な歴史」をめぐる教育とはどのようなものかを検討することで、道徳科において現代的な課題として「困難な歴史」を教える意義と方法について考察した。
  • 木原 一彰
    2023 年342 巻 p. 77-
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、答えが1つではない道徳的な課題と各教科等との有機的な関連を道徳科で機能させるための方策として、「現代的な諸課題」に対応した道徳科の学習を取り上げ検討した。まず、「現代的な諸課題」がどのような経緯で提示され、学習指導要領に位置づけられたかについて、内容を概観した。そして、他教科等に先行する形で改訂された「特別の教科 道徳」における位置づけについて考察した。そのうえで、「現代的な諸課題」に対応した学習において、道徳科がどのような役割を果たすことができるのかについて、具体的な授業実践を通して検討した。『学習指導要領解説 特別の教科 道徳編』において「現代的な課題の扱い」として取り上げられているこの内容について考察することで、従来の「道徳の時間」の学習からの質的転換を図るための視座を得ることを目指した。
  • 藤井 基貴
    2023 年342 巻 p. 89-
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は東日本大震災以降、静岡大学において授業開発を進めてきた「防災道徳」授業の理念と実践を紹介し、教育の現代的課題の一つである「防災教育」に対して道徳教育の視点からどのような取り組みが可能なのか、その展望と課題について検討したものである。本論では、先行教材の成果と課題を分析した上で、1)「防災道徳」授業開発の経緯、2)教材開発の視点、3)授業デザインを概説し、静岡市内の中学校で実施した風水害に関する授業内容を紹介した。「防災道徳」とは、「災害時や復興時などにおける心理的葛藤場面を教材化し、さまざまな条件下において人間が抱える心理状態や取りう る最善の選択肢について、道徳的諸価値の視点から児童生徒が考え、議論する授業」であり、現在では各地の学校で導入・活用が図られている。本稿では、授業開発の過程で寄せられた意見や評価を取り上げながら、これからの道徳教育の在り方や可能性についても検討した。
  • 古川 雄嗣
    2023 年342 巻 p. 101-
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル オープンアクセス
    とりわけ2000年代以降、民主主義諸国において、ポピュリズムの台頭や権威主義的な指導者の登場に「民主主義の危機」を見る議論が噴出している。本稿では、リベラルな民主主義には、それ自体は必ずしもリベラルではない、いくつかの前提条件があり、むしろリベラリズムというイデオロギーがそれを弱体化してきたことこそが、リベラルな民主主義の危機をもたらしているという仮説に基づき、その前提条件として、①共和主義、②ナショナリズム、③中間団体の3つの契機について検討した。その結果、①公的活動に積極的に参加し、できればそこに「幸福」を見出しうる市民の育成、②多様な文化的・民族的アイデンティティを尊重しつつ、同時にその多様な人々がお互いを歴史と運命を共有する同胞とみなしうるナショナル・アイデンティティの創出、③親しい人々によって営まれる自治的な地域共同体の再生の3点が、リベラルな民主主義を再生するために求められる道徳教育の方向性であることが示唆された。
  • 椋木 香子
    2023 年342 巻 p. 113-
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、「キャリア教育に対して道徳教育はどう応えるか」を検討する。道徳教育もキャリア教育も、共に人間としての「在り方生き方」を扱うという意味で関連が深く、両者を関連させた教育実践もすでに多く取り組まれている。しかし、学校現場では「キャリア教育をどう推進するか」「道徳教育とどう関連させるのが効果的であるか」など、課題も多い。本稿では、我が国のキャリア教育について概観し、キャリア教育における道徳教育の位置付けや関連を整理した上で、キャリア教育の研究実践において取り組まれた道徳教材開発の事例を取り上げ、キャリア教育に道徳教育を関連させる際の課題と可能性について考察する。道徳科の学習を通して、児童生徒が「働くこと」の意義を理解し、自分らしく、他者と協働しながら生きることの価値に改めて気づく機会となることが、道徳教育がキャリア教育に寄与する点の一つだと考えられる。
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