伝熱特性が時間的に一定とみなせる井水散水2重被覆ハウスの夜間伝熱系を理論解析し, 床土温度の解析解を得た.この結果, 夕方の地温分布の知られている井水散水2重被覆ハウスの床土温度が, 外気温, 天空温度および散水温度から求められるようになった.床土内における熱流束密度もこの結果から求められる.ハウス地上部各部の温度はここで得られた地表温の解を前報で得られた解に代入することにより直ちに求めることができる.
床土温度の解は初期地温分布, 外気温, 天空温度および散水温度からの温度寄与の和で表された.各環境要因からの温度寄与は, その環境要因からの原寄与に重み係数を乗じた積で表された.重み係数は地上部の伝熱機構だけで定まり, また, 原寄与に含まれるハウスの伝熱パラメータは地表温総括時定数
Tso (
Tso≡ρ
cK/
g2so) ただ1個であることがわかった.ここで, ρ
cは床土の体積比熱,
Kは床土の熱伝導率,
gsoは式 (7) に現れる地表面総合熱伝達係数である.一方, 初期地温分布からの温度寄与は, 深さと経過時間から定まる重み係数を初期地温分布に乗じた積の総和で表された.この重み係数に含まれるハウスの伝熱パラメータは
Tsoおよび相当土厚
l (
l≡
K/
gso) の2個であった.
地表温総括時定数
Tsoは地表温変化の時間スケールを規定し,
Tsoの大なるほど地表温変化の速さがゆっくりで, ハウスの保温性が優れる.また,
Tsoが等しいハウスでは相当土厚
lが大きいほど深部土壌からの温度寄与が相対的に大きくなるという特徴のあることがわかった.
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