異なる単色光下で生育した作物の光質-光合成関係, および葉の光学的特性 (反射, 透過, 吸収スペクトル) を測定し, 作物の光合成作用スペクトルに及ぼす光質前歴の影響について, 葉の光学的特性の点から検討した.
供試作物として, フダンソウ, キュウリ, インゲンを用いた.これらを温度一定 (25±1℃) のグロースキャビネット内において, 12Wm
-2の青, 緑, 赤の各単色光下で25~40日間生育させた.赤色光についてのみ, 24Wm
-2の光強度下でも生育させた.
葉肉組織が一様なフダンソウは, 異なる光質下で生育しても葉の光学的特性および光合成作用スペクトルにほとんど差が認められなかった.光合成作用スペクトルは, いずれも Hoover 型を示した.柵状組織と海綿状組織をもつキュウリ, インゲンでは, 青色光下で生育したものが他の単色光下で生育したものより, 透過率が低く, 吸収率が高くなった.しかし, 光合成作用スペクトルには光質問に差が見られず, いずれも Hoover 型と Gabrielsen 型との中間型となった.
より強光の赤色光下で生育した場合には, 弱光の各単色光下で生育したものより, いずれの作物においても透過率, 反射率が低くなり, 吸収率が高くなった.そして, それらの光合成作用スペクトルは Gabrielsen 型となった.
このようなことから, 葉の光学的特性に及ぼす光質の影響は, 葉の解剖学的特性によって異なるが, 光合成作用スペクトルには, いずれの作物においても光質の影響が認められず, いわゆる光合成における光質適応の現象がないことがわかった.
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