生物環境調節
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20 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 高 博
    1982 年 20 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1982/03/31
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    異なる単色光下で生育した作物の光質-光合成関係, および葉の光学的特性 (反射, 透過, 吸収スペクトル) を測定し, 作物の光合成作用スペクトルに及ぼす光質前歴の影響について, 葉の光学的特性の点から検討した.
    供試作物として, フダンソウ, キュウリ, インゲンを用いた.これらを温度一定 (25±1℃) のグロースキャビネット内において, 12Wm-2の青, 緑, 赤の各単色光下で25~40日間生育させた.赤色光についてのみ, 24Wm-2の光強度下でも生育させた.
    葉肉組織が一様なフダンソウは, 異なる光質下で生育しても葉の光学的特性および光合成作用スペクトルにほとんど差が認められなかった.光合成作用スペクトルは, いずれも Hoover 型を示した.柵状組織と海綿状組織をもつキュウリ, インゲンでは, 青色光下で生育したものが他の単色光下で生育したものより, 透過率が低く, 吸収率が高くなった.しかし, 光合成作用スペクトルには光質問に差が見られず, いずれも Hoover 型と Gabrielsen 型との中間型となった.
    より強光の赤色光下で生育した場合には, 弱光の各単色光下で生育したものより, いずれの作物においても透過率, 反射率が低くなり, 吸収率が高くなった.そして, それらの光合成作用スペクトルは Gabrielsen 型となった.
    このようなことから, 葉の光学的特性に及ぼす光質の影響は, 葉の解剖学的特性によって異なるが, 光合成作用スペクトルには, いずれの作物においても光質の影響が認められず, いわゆる光合成における光質適応の現象がないことがわかった.
  • 高橋 史樹, 水野 博之
    1982 年 20 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 1982/03/31
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    米の収穫貯蔵時の乾燥条件と穀粒の形状は害虫の加害に大きく影響する.コクゾウとココクゾウの繁殖と発育を30℃, 70%R.H.の条件下で, 精米段階別 (もみ, 玄米, および白米) と, もみ乾燥条件別 (はざ干しによる自然乾燥と, 温風による機械乾燥) に, 生命表を求めて比較した.
    自然乾燥もみからは子世代成虫は生じなかった.機械乾燥もみでは, もみ外皮に生じた隙間から産卵した.発育期間は玄米で最短となった.白米は栄養的に玄米より劣っているようである.成虫の生存期間と産卵期間は白米において最長で, もみでは最短となった.繁殖能力は成虫の加齢とともに変化した.産卵数が最大となる時期は玄米では白米でよりも早かった.成虫生存期間中での繁殖能力は玄米で最大となり, もみで最小となった.
    これらの結果から, 米穀の貯蔵中でのコクゾウ類の発生を防ぐにはもみ貯蔵が最も望ましいといえる.
  • 高CO2濃度下におけるキュウリ葉の光合成速度の経時変化
    清田 信, 矢吹 万寿
    1982 年 20 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 1982/03/31
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    高CO2濃度下でキュウリ (Cucumis sativus L., 長節成4号) 葉の光合成速度の経時変化を調べた.
    高CO2濃度 (5, 000ppm) 処理第1日目のキュウリ葉の光合成速度は, 大気中の標準CO2濃度下における光合成速度の2.7倍であった.しかし, 第2日目の午後から光合成速度は低下した.第3日目の光合成速度は第2日目の最終値を上回ったが, 午後には再び低下した.第4日目以後光合成速度はしだいに低下していった.このような, 高CO2濃度下での光合成速度の低下は, 上位葉より下位葉で著しかった.上位葉の光合成速度は, CO2処理開始時の値と同様であった.また, 高CO2濃度下での光合成速度は, CO2濃度が高いほどそしてCO2施用期間が長くなると低下が著しかった.さらに高CO2濃度下では, 強光下で生育した葉にくらべ弱光下で生育した葉の光合成速度は顕著に低下した.
  • (1) 冬期夜間における地上部伝熱機構のシステム解析
    原 道宏, 小倉 祐幸
    1982 年 20 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 1982/03/31
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    厳寒期においても夜間のボイラ暖房負荷を大幅に減少できるエネルギー節約型の温度環境調節方式として, 最近, 北関東を中心に, 野菜・花卉等の栽培用に普及し始めた井水散水2重被覆ハウスにおける温度環境形成機構を解明するため, 今回新たに, ハウス地上部に対する夜間の伝熱モデルを設定した.
    モデル中のパラメータ値を環境条件の測定値を用いて推定したのち, 夜間における各時刻のハウス地上部各部温度をモデルから計算した.その結果, 平均推定誤差は約0.2℃となり, 実用上十分な精度を得た.
    今回測定した, 散水流量が6.75kgm-2hr-1の例は, ボイラ等ほかの暖房のない場合であり, 夜間 (18: 00から6: 00まで) の栽培室気温θinは, θin=0.664θso+0.145θN+0.141θou+0.050θsk+0.1℃によって表わされた.すなわち, θinの決定には, ハウス床上の表面温度θsoの影響が最大であり, 次いで, 散水口水温θN, 外気温θou, 等価天空温度θskの順で影響すること, また, +0.1℃としてハウス内空気の熱容量による保温の影響がわずかにあることが明示された.
    今回提案したモデルには, 散水流量がパラメータとして含まれており, 散水流量が変化した場合にもこのモデルが拡大適用可能と考えられる.
  • (VI) Cd単独, Cd・ZnおよびCd・EDTAを混合投与した場合の生体内各組織・器官別Cd蓄積量
    松原 藤好, 中山 康博, 増井 博之
    1982 年 20 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 1982/03/31
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    人工飼料を用い無菌環境下で飼育した蚕の5齢起蚕から5日間Cd 80ppm単独, Cd 80ppmにZn 250ppmの混合およびCd 80ppmにEDTA0.04Mを混合投与し, 生体内各組織・器官別のCd蓄積量を定量した.その結果生体内各組織・器官のCd量はCd単独投与にくらべCd・Zn混合投与区では著しく少なく, Cd・EDTA混合投与区ではさらに少なく, ほとんどの組織・器官でのCd蓄積は認められなかった.
    Cd単独およびCd・Zn混合投与区にくらべCd・EDTA混合投与による毒性低下の原因は体内でCd・EDTAのキレート化合物を形成して, 体内に留めることなく排出してしまうためであろうと考察した.
  • クマール ヴィノド, テワリー P. D.
    1982 年 20 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 1982/03/31
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    アカマシコ (インドにおいて一般に親しまれている小鳥) のオスからなる二つのグループを60日間, 短日光周期 (8L: 16D) のもとで飼育し, 長日光周期に対する精巣の光不感応性を除去して実験に供した.一つのグループは, さらにそのまま同様の短日光周期のもとで120日間飼育を続けた.他のグループは長日光周期 (15L: 9D) に移し70日間飼育した.このほか, Aグループは野外の自然日長において飼育した.これらの結果, 長日光周期に移したものでは, 精巣の発達がみられたがやがて光不感応性になって精巣は退縮した.それにひきかえ, 短日光周期におかれたものでは, 精巣の発達はみられなかった.また自然日長においたものでは, 夏期の長日光周期に精巣が発達した.以上のことから, アカマシコは長日光周期に反応する鳥であることが判明した.しかし, ある種の鳥にみられるように, 長期間にわたる短日光周期に対しても精巣発達開始の反応を示すことはなかった.そして長期間にわたる長日光周期はかえって精巣の退縮をおこすことも明らかにされた.
  • 水野 直美, 加古 舜治
    1982 年 20 巻 1 号 p. 43-50
    発行日: 1982/03/31
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    これまでの環境-植物系の解析において, 応答曲線の利用はきわめて限られたものであった.この理由は, 種々考えられるが, 次にあげるものが重要であろう.第1にデータ収集のために, 比較的長期にわたって環境が一定の条件区をいくつも維持しなくてはならないが, これが困難であることが多い.第2に, 応答関数として不適なものを利用してきた.これらの応答曲線利用上の隘路を, 変動環境下のデータも利用でき, また応答関数としてより適切な関数を利用できる方法を開発したことにより打破できた.この方法により, Paphiopedilum insigneの花成の温度応答を非対称ガウス関数を用いて表わした.この関数の4個のパラメータは, 一般的に最大応答, 最適温度, 温度耐性, 好適温度範囲を表わすと考えられ, 本植物の花成の温度応答特性は, 狭適応性耐高温性中温性であることがわかった.これらのパラメータを植物の生態的特性の分類に利用できる可能性を示した.
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