NFT栽培によるイチゴの短期株冷蔵半促成栽培を3種類のベッドで比較しながら行った.その結果, 下記の事項が明らかになった.
1) 樹勢は各ベッドとも良好で株あたりの収穫重量は500~7009となり, 土耕のおよそ2倍量となった.これは地上・根圏部とも栽培管理が順調に行われたためと考える.
2) 養液のpHは, 放任のままで4.5を下回るような状態が定植初期から見られたが, およそpH5.0付近に管理した.これは通常イチゴの好pH域とされている6.0よりかなり低めであった.
3) 養液のECは, 定植直後0mS/cmから徐々に上げ, 収穫最盛期には最高0.9mS/cmで管理した.これ、は他の養液栽培で一般的にいわれているECよりかなり低い値である.
4) ベッドの養液流水面と栽培パネルとの間に数10mm程度のスペースを設けたベッドと, スペースのほとんどないベッドとでは, 発根形態に大きな差が見られた.ただし収穫重量には差はあまり見られなかったものの, 長期的に栽培を続けた場合には, 根の酸素吸収や環境適応力の点から, スペースを設けたベッドの有効性が顕著になるものと考えられる.
5) 養液流水面上にスペースを設けたベッドにおいて, 栄養成長に偏りすぎる傾向が見られ, 第2花房の花芽の分化が順調に進まなかった試験区が見られた.流水面上のスペースは上記4) のように有効であると考えられるが, 生殖生長とのつり合いに考慮する必要がある.
6) ベッド上流から下流にかけては, 生育差や収穫重量差は見られなかった.トマトなどの根量の多い作物と異なり, ベッド長さは長くすることが可能と思われる.
7) 糖度・酸度の測定の結果, 7~10% (糖度) , 0.5~0.7% (酸度) のものが大半で, 質的にも土耕の場合とほぼ同等の果実を多く収穫することができた.
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