生物環境調節
Online ISSN : 2185-1018
Print ISSN : 0582-4087
ISSN-L : 0582-4087
42 巻, 3 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 大野 英一, Joel L. CUELLO
    2004 年 42 巻 3 号 p. 161-168
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    京都会議以来, クリーン開発メカニズム (CDM) , 共同実施 (JI) および排出量取引 (IET) のような温室効果ガス削減のための新しい枠組みが提案されている.こうした新しいメカニズムの導入により, 生物機能を用いた二酸化炭素削減技術の実現可能性は, 今後変わると予想される.従来より, 先進国における微細藻類を用いた二酸化炭素削減技術の可能性評価は行われてきたが, 京都メカニズムを考慮した分析は行われていなかった.そこで本研究では, 日本を投資国とし, 非付属書I締約国をホストとした, 開放池での微細藻類による二酸化炭素削減技術の実現可能性を評価した.分析の結果, 京都メカニズムの利用により, 控えめな条件値を用いた場合においても, 微細藻類による二酸化炭素回収技術には, 現在の他の二酸化炭素削減技術のコストと比較して, 価格競争力のあることが示された.
  • 村瀬 治比古, 福井 一広
    2004 年 42 巻 3 号 p. 169-176
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    遺伝子のコード領域や転写制御配列の特異的配列を特定するために隠れマルコフモデルなどの計算手法が開発され適用されている.しかし, 転写制御領域の塩基配列と遺伝子発現の関係については多くの異なった見解がある.そこで, 転写開始部位の周辺配列について何らかの物理的な特徴の存在を期待してテクスチャー解析を適用し, テクスチャ特徴量を抽出した.ランレングス行列によるテクスチャー解析を用い, 熱ショック蛋白質の転写制御領域に適用した.そして特徴量の変化を一つのパターンと捉えて, 転写開始部位の周辺配列を表すことにした.
  • 池田 敬, タジ アクラム, 藤目 幸擴, 野口 正樹
    2004 年 42 巻 3 号 p. 177-183
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    スターツデザートピー (Swainsona formosa) カルスを塩および糖濃度, また浸透圧の異なる培地で培養し, 水分状態と増殖の関係について研究した.カルスを水ポテンシャルが-0.27MPaから-1.05MPaの培地で培養した.カルス増殖率は, 標準濃度のMS塩と30gL-1ショ糖で最も高かったが, マンニトール添加により培地の水分状態を同じ条件にした培地では低くなった.このことから, スターツデザートピーカルス増殖には培地の塩, 糖濃度のみでなく, 水分状態も重要な要因であることがわかった.
  • 松原 陽一, 平野 生華, 佐々 大輔, 越川 兼行
    2004 年 42 巻 3 号 p. 185-191
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    イチゴ (Fragaria×ananassa, Duch., cv.濃姫) のランナーにarbuscular菌根菌5菌種 (Gigaspa margarita, Glomus fasciculatum, Gl. mosseae, Gl. sp. R10, Gl. aggregatum) を接種し, 菌根共生および萎黄病耐性を調査した.菌根菌接種11週間後に萎黄病菌 (Fusarium oxysporum f. sp. fragariae) を接種した.萎黄病菌接種30日後, 菌根菌無接種区における発病率は100%に達し, 発病指数も90を上回った.一方, 菌根菌接種区では菌種にかかわらず発病率および発病指数とも無接種区より低く, 発病抑制効果には菌種間差がみられた.この場合, 最も抑制効果が高かったのはGl. mosseae区の発病率22.2%, 発病指数6.6であった.また, 導管部および根の褐変程度についても特にGl. mosseae区で軽減され, 植物体乾物重では, 萎黄病菌接種前後で菌根菌接種区が無接種区を上回った.菌根菌感染植物体の耐病性機構については不明な点が多く, 耐性因子とされる植物体リン酸含量と本研究における耐病性との間に一貫した特徴はみられなかったことから, 植物体リン酸含量の本耐病性への関与は低いことが示唆された.
  • 和田 博史, 井上 眞理, 秋田 充, 野並 浩
    2004 年 42 巻 3 号 p. 193-203
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    低温処理後のチューリップの根, 葉, 茎の伸長の制御機構について水分生理学的に解明を行った.定植までに経た低温前歴が短いほど, 定植後の各組織において生長速度が低下した.細胞伸長時の花茎の維管束の分化と発達を観察したところ, 維管束形成には低温前歴の関与が認められなかったため, 各組織の生長速度の差異は細胞伸長速度の低下のみに依存していることが明らかになった.相対生長率と生長に伴った水ポテンシャルを計測すると, すべての処理区において正の相関関係が認められ, 各組織の生長速度の低下に水コンダクタンスの低下が関与していることが示唆された.以上の結果から, チューリップの各組織の生長速度は細胞伸長速度に依存しており, 細胞伸長時には生長に伴った水ポテンシャル勾配が形成され, 水コンダクタンスの大きさによって生長速度が制御されていることが明らかになった.
  • 和田 博史, 井上 眞理, 秋田 充, 野並 浩
    2004 年 42 巻 3 号 p. 205-215
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    本研究は, 生長中のチューリップ花弁において生長と水分特性の関連性を明らかにすることを目的に行った.外花被片の細胞伸長速度をエクステンショメーターにより, 伸長部位における表皮細胞の膨圧はプレッシャープローブを用いて計測した.膨圧計測後の組織から細胞溶液を抽出し, 細胞溶液の浸透ポテンシャルを等圧式サイクロメーターにより計測した.表皮細胞の水ポテンシャルは膨圧と浸透ポテンシャルの和から求めた.ショ糖処理によりチューリップ花弁の細胞伸長速度が増大し, トレハロース処理により細胞伸長速度が低下した.定常状態に達したときの相対生長率を生長に伴った水ポテンシャルで割ることにより, 非破壊の花弁組織において水コンダクタンスを算出したところ, トレハロース供与によって花弁の水コンダクタンスが有意に低下することが明らかとなった.
  • クリヤティ ナフィス, 松岡 孝尚
    2004 年 42 巻 3 号 p. 217-223
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    水耕栽培における高品質・高糖度トマト生産のために, 生育過程におけるトマト果実の内成分情報を非破壊で検出し, 養液制御に反映させることは, きわめて意義深いものと考えられる.非破壊で内成分を検出できる近赤外法はこれまで多くの作物の品質評価に応用されている.しかし, トマト果実は果肉やゼリー部からなる構造的特性から部分的な成分の不均一さがあり, 近赤外スペクトルに著しく影響する.したがって, 内成分を精度よく測定するためには特別な近赤外装置が必要である.この装置は, 1個のトマト果実に対して3個のハロゲンランプを上方側面から照射し, トマト果実の下方1カ所から近赤外スペクトルを測定することにより, 果実全体の内成分情報を得ることができる.この近赤外スペクトルから可溶性固形成分を測定するためのキャリブレーションモデルを開発することによって, 近赤外装置の特性を検討した.その結果, さまざまな生育段階にあるトマト果実の可溶性固形成分を, 予測値と実測値との相関係数0.91, 標準誤差0.73%, バイアス0.17%で測定することができた.
  • 荒木 卓哉, 江口 壽彦, 和島 孝浩, 吉田 敏, 北野 雅治
    2004 年 42 巻 3 号 p. 225-240
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    トマト果実の水ストレスに対する短期間の反応を調べるために, 湛液栽培区および水ストレス栽培区における果実の肥大生長および水収支について解析した.湛液区において, 小果柄を通り果実へ流入する汁液フラックスの84%は果実肥大に寄与し, 残りの16%は果実およびがくからの蒸散により消失した.トマト果実の主要な水収支項は師管液フラックスであり, 果実に集積した汁液フラックスの70%を占め, 道管液フラックスに比べて水ストレスの影響は小であった.一方, 道管液フラックスは, 果実肥大への寄与は小さく, 水ストレスに対してより敏感な反応を示した.水ストレス区で果実からの道管経由の汁液の逆流が生じ, 果実へ集積した道管液フラックスの日積算量はゼロであった.その結果, 水ストレス区では, 師部輸送が果実の肥大を維持した.以上のことから, 水ストレスに対する果実への師部および木部輸送の異なる反応が, 水ストレス下において小果および高糖度をもたらすことが定量的に明らかになった.
  • 岩崎 直人, 山口 徹
    2004 年 42 巻 3 号 p. 241-245
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    ‘Meiwa’ kumquat (Fortunella crassifolia Swingle) trees were subjected to water stress in order to increase first-flush flowers by withholding water until the soil water content reached about 35% and maintained 2 weeks, 3 weeks and 4 weeks. In all treatment subjected to water stress increased first-flush flowers as compared with non-treated control trees. The number of first-flush flower increased with the prolonged duration of water stress. Early fruit develop-ment in water stressed trees were promoted and fruit diameter at harvest increased significantly. In rind color of the fruit at harvest, a value of the rind increased significantly suggested promotion of fruit maturation in water stressed trees. Total soluble solids of the fruit in water stressed trees were not different from the control trees, while yield per tree in water stressed trees were significantly increased as compared with the control trees. These results indicate that the number of first-flush flowers increases under water stress after termination of new shoot growth and yield increases significantly without degrading fruit quality.
  • 近藤 謙介, 中田 昇, 西原 英治
    2004 年 42 巻 3 号 p. 247-253
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    The effect of purple nonsulfur bacteria (Rhodobacter sphaeroides) application on the growth and quality of Komatsuna (Brassica campestris) was investigated under different light qualities using blue (470 nm) and red (660 nm) light emitting diodes (LED) . Freeze dried purple nonsulfur bacteria (PTBP) were used for the investigation. Komatsuna plants were grown for 21 days with or without PTBP application under 3 different light qualities (blue-100%, red-100%, blue 20%-red 80%) at 20°C in a growth chamber. The PTBP application significantly promoted root growth under the blue-100% treatment, whereas the no PTBP application under the same light quality reduced root growth compared to the other light quality treatments. Moreover, the PTBP application under blue-100% increased chlorophyll and carotenoid contents, and reduced total sugar and ascorbic acid contents. On the other hand, the PTBP application under red-100% reduced nitrate and ascorbic acid contents. These results indicate that PTBP application significantly promotes growth and quality of Komatsuna under blue light, and may also compensate for red light.
feedback
Top