1965年スウェーデンのRoyal College of Forestryに建設されたPhytotronを用いて, BonusとMariというオオムギ2品種の日長および温度に対する生育反応が比較された.MariはBonusのX線処理によって得られた突然変異で, 早生, 倒伏抵抗性, 多収性をもつ品種である.
生育環境条件は24時間 (連続光) , 16時間, 8時間照明に, 25°, 20°, 15°, 10℃の各定温区およびそれらの温度を種々に組合せたもの (24および16時間照明では16時間高温+8時間低温, 8時間照明ではその逆の組合せ) の計30区を用い, 空気中の湿度は75~80%RHであった.
このような調節環境条件下でのBonusとMariの生育反応は非常に異なり, Bonusは明らかな長日植物の反応を示し, 連続光の下で栄養・生殖生長とも最適であった.8時間照明区では栄養生長のみで出穂しなかった.16時間照明では25℃で出穂がもっともわるかった.これに対してMariは16時間および24時間照明でよく出穂し, どの温度区でも一様な生育を示した.8時間照明区では高温よりも低温で出穂は良好であった.このようなことは1穂当りの着粒数でも明らかに認められた.Mariの種子生産量はBonusよりも高く, 連続光下ではMariとBonusの出穗には約1週間の差があり, 16時間照明では3週間以上の差があった.
Mariの早生, 短桿, 倒伏抵抗性および多収性は上述のように, 明らかにこの品種の不感温性および不感光性と結びついており, この品種の高い環境適応性がPhytotronを用いることにより実験的に裏づけられたのである.
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