土地区画整理事業に向けた流水生イシガイ類の一時的な移植場所と移植時期を検討するために,4 つの移植場所において試験的に流水生イシガイ類 3 種(カタハガイ,オバエボシガイ,マツカサガイ)の移植を行い,移植後約 2 年間の成長,生残,消失を調べた.ため池の移植個体は成長量が大きく,生残率は高く,消失率は低かったことから,ため池は移植場所として最も有効であると考えられた.支線水路の移植個体は,成長量が大きく生残率は高かったが,消失率も高かったことから,流出防止策を講じたうえで移植を行うことが望ましいと考えられた.幹線水路では,移植個体の成長量は小さく,消失率は低いものの生残率が低かったことから,移植場所として不適であると考えられた.しかし,主な死亡要因が流量管理に関連した干上がりだった可能性があることから,適切な管理体制があれば移植場所として活用できると考えられた.イシガイ類は暖かい時期(5 ~10 月)によく成長したが,死亡数も増大した.また,消失数の増大は台風の時期(8 ~10 月)と 3 月の突発的な豪雨時の流出によるものと考えられた.そのため,移植は死亡と流出リスクの低い冬季に行うことが望ましいと考えられた.以上の結果に基づき,移植場所の選定および移植方法について一般的な活用に向けた提言を行った.
抄録全体を表示