本論文では,護岸前面に河道内の浚渫土砂を投入し,風波等自然の力によって干潟を形成させ,水制によって形成された干潟の安定化を図るという手法で干潟の復元を行い,養浜変形・生物調査の追跡調査によりその評価を試みた.
養浜地形の追跡調査の結果,城南地区では,土砂投入後,河口方向からの入射波によって生じた沿岸漂砂によると考えられる養浜土砂の上流向きの移動が見られた.城南地区の上流端にはヨシ帯が存在するが,このヨシ帯が水制と同様な土砂移動阻止機能を発揮した結果,移動土砂はその周辺に堆積したと考えられる.
一方,白鶏地区では養浜砂の粒径が城南地区と比較して相対的に細粒であったために初期状態において沖向きの土砂移動が顕著に生じ,冬季の風浪によって下流方向への移動が生じたと考えられる.しかしこの場合,水制によって土砂移動がかなり阻止され,流出しにくい物理環境が再生されたと考えられる.
干潟が安定するまでには約2年間を要したが,河岸線近傍に安定した砂浜が復活し,平均潮位~平均干潮位の間で生物活動が活発な潮間帯の面積(干潟)を広げることができた.造成した干潟では,物理的条件の違いによって様々な粒径の底質となり,その底質に応じた底生生物が生息、していることが確認できた,細砂が卓越している場所ではコメツキガニが多く見られ,シルト・粘土が卓越している箇所では,イトゴカイやソトオリガイなどが確認でき,特に平均潮位(T.P.±0.0m)より低い地盤高(T.P.-1.2m~T.P.±0.0m)を生息域とするゴカイ・ヤマトシジミ・コメツキガニが確認できた.
以上のように,主に干潟に生息していたと考えられる種に注目したが,ヨシを除いては生息が確認され,干潟としての役割をおおむね果たしていると考えられる.
「なぎさプラン」を実施したことにより,(1)水制によって土砂が流出しにくい物理的環境を再生できたこと.(2)外力条件(波・風等)によって底質が異なり,その底質と地盤高に適応している底生生物と魚類が生息するようになり,かつて干潟で確認できた種の出現が確認された.以上より,なぎさプランは当初の目的をほぼ達成したと考えられる.しかし,再生された干潟のさらに長期的な安定性,洪水時の安定性,さらにはヨシ原の再生などのより長期的な問題については今後の課題である.
抄録全体を表示