河川における外来植物の拡大は深刻な問題である.その対策を検討するためには,対象となる種の分布把握が不可欠であるが,近年は無人航空機(UAV)で撮影した画像を用いることで詳細な分布把握が可能となってきている.本研究では,渡良瀬遊水地の第 2 調節池において,UAV で撮影した画像を用いて外来種であるセイタカアワダチソウの分布調査を行った.UAV と地上での植生調査結果を比較して UAV による把握の有効性を検証し,さらに画像認識技術の一種である深層学習を用いて分布図を作成する手法を検討した. UAV で撮影した画像によるセイタカワダチソウの開花シュートが画像に占める割合の把握の可能性を確認するため,本種の花期に,50 m,100 m,150 m の異なる高度から撮影を行った.同時に,撮影範囲で地上のコドラート調査を行い,UAV で撮影した画像から判読した本種の生育状況と地上で測定した植被率の関係を把握した.次に,第 2 調節池全体で 100 m の高度から UAV で撮影した画像を取得した.その一部の範囲で画像を 150 ピクセル四方に分割し,分割した画像内に占める本種の生育量によって区分したデータセットを作成した.このデータセットを用いて,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の Resnet50 によるモデルを構築し,このモデルを用いて第 2 調節池全体での分布を推定した. その結果,生育量の把握については,いずれの高度から撮影した画像でも目視で本種の分布を確認でき,本種の地上の植被率と強い正の相関が見られた.また,深層学習によるモデルを構築したところ,モデルによる識別の正解率は 94% となった.モデルを活用することで目視判読した結果と近い傾向で第 2 調節池内の分布図を得ることができた. 本研究から開花期に撮影することで本種の生育分布を精度よく把握できることを示した.本手法は類似した色をもつ植物との識別や,より背丈の高い植物がある条件での精度検証の課題は残されているが,河川や湿地など本種の侵入が問題となっている場所での調査に寄与することが期待される.
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