Edaphologia
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107 巻
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  • 田之岡 綾花, 金子 信博
    2020 年 107 巻 p. 1-8
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー
     ヤスデ類は移動能力が低く地理的隔離が起きやすいため地域的な固有種が多い.しかし国内における未記載種がまだ100 種ほど存在すると推測されるように, 日本のヤスデ相の解明はまだ十分に進んでいるとは言えない.生物多様性の正確な評価には調査地域の生息種数や個体数の情報が必要であるが,ヤスデ類は生息密度が低いため十分な情報を得るには効率的な採集法の検討が必要である.現在一般に用いられているヤスデの採集法は手法により採集される種の特性が異なることから調査結果に偏りが生じる可能性がある.そこで,2017 年6 月から2018 年5 月にかけて横浜国立大学キャンパス内の林地で5 つの採集法を用いて行ったヤスデ類の採集結果を比較し,より小さな作業労力で調査地域のヤスデ類を網羅的に採集する方法を検討した.それぞれの採集法は得られるヤスデのサイズや採集効率が向上する時期が異なり,1 種の採集法で調査地のヤスデを全種採集することはできず,麦わらトラップとピットフォールトラップの組み合わせでより効率的に生息種を網羅できることが明らかとなった.
  • 久保田  直
    2020 年 107 巻 p. 9-13
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー
    愛媛県旧小田町(現内子町)広瀬神社の境内にあるイチイガシの樹幹の粗皮および根元の腐植からササラダニ亜目 エリカドコイタダニ科エリカドコイタダニ属のオダフクロコイタダニ(新称)Hemileius (H.) thujae Choi & Cho, 1995とコブシワコイタダニ(新称) H. (Tuberemaeus) sculpturatus (Mahunka, 1987) の 2 種が発見された.愛媛県産オダフクロコイタダニは,原記載の韓国産と比較して体が小さい(体長:378–395 vs. 416–448 μm)ものの本種と同定された.オダフクロコイタダニは,近縁のイマムラフクロコイタダニ H. (H.) clavatus Aoki, 1992 から以下の点で区別される:1)相対的に体が小さい(vs. かなり大きい),2)桁間毛の先端が尖っていない(vs. 尖っている),3)背孔 S1 が 1 つ(vs. 2 つに分かれている). 愛媛県産のコブシワコイタダニは,原記載のベトナム産と比較して背毛が短いものの,1)桁毛と桁間毛が短く,太く,先端で強くケバ立つ,2)胴感毛が強く膨らむ,3)後体部の前方には横向きのしわがあり,その後方は縦向きのしわでびっしりと被われる,4)体長が原記載と同程度などの特徴から本種と同定された.本種は,桁毛と桁間毛が短く,太く,先端で強くケバ立つことで,近縁の H. (T.) lineatus (Balogh, 1970) から明確に区別される.アラメコイタダニ(新称) Hemileius (T.) singularis (Sellnick,1930) を含めた日本産エリカドコイタダニ科Hemileiidae7 種の検索表を付した.
  • 片岡 万柚子, 矢野 倫子, 中森 泰三
    2020 年 107 巻 p. 15-25
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー
    変形菌とトビムシはともに土壌や枯死木に普通にみられる生物群であり,両者の相互作用を解明することは,土壌生態系を理解する上で重要である.本稿では,変形菌とトビムシの相互作用についての知見をまとめたことに加えて,変形菌とトビムシの野外における共存例を整理した.室内外の観察から,咀嚼器をもたないイボトビムシ科の一部が変形菌の変形体や未熟な子実体を食べることが分かってきた.一方,成熟した子実体とトビムシが共存しているところが図鑑の写真には収められているが,トビムシが成熟した子実体や胞子を食べている証拠は野外では得られていない.また,トビムシが変形菌上で死亡していた例も観察されており,変形体による被食防衛や,固化しつつある変形菌に偶然巻き込まれた事故の結果として考えられている.変形菌とトビムシの関係に関する知識は断片的で捕食–被食に関するものに限られている.今後,動物胞子散布や競争などの可能性も研究していく必要がある.
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