九州大学福岡演習林御手洗水流域内のヒノキ人工林において下層植生がササラダニの種多様性に与える影響を調査した.流域内において,下層植生のない場所(C),常緑広葉樹(E),落葉広葉樹(D),ササ(S)を下層植生に持つ林分を選んだ.いずれの林分においても,断面積合計でヒノキが90%以上を占めていた.本研究では全部で2654個体,121分類群のササラダニ成虫を得た.ササラダニの種数およびShannon-Wienerの多様度指数(H')は下層植生があるE,D,Sの方が下層植生のないCよりも高い傾向があった.種構成の違いはCとE,D,Sの間の違いが,E,DおよびSの間における違いよりも大きかった.ヒノキ人工林において,下層植生は断面積合計における優占度は低いが,ササラダニの種多様性を増加させる効果があると考えられた.
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