教育社会学研究
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106 巻
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特集
  • 小玉 重夫
    2020 年106 巻 p. 7-11
    発行日: 2020/05/30
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー
  • 橋野 晶寛
    2020 年106 巻 p. 13-33
    発行日: 2020/05/30
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     この20年あまりの間に進行した政治環境に関する大きな変化として,執政府の長における制度的な権限強化が観察された。そうした制度改革は国レベルでは政治主導,地方レベルでは首長主導を企図したものであり,応答性,政策の総合性という価値を重視したものとして解釈できる。本稿では,2014年の地方教育行政法の改正による新教育委員会制度発足を契機とした首長の教育政策への関与について実証分析を行い,その知見をふまえて教育政策と政治の関係に関する今後の研究課題の視点を提示する。
     都道府県レベルの教育政策を対象とした実証分析では,新教育委員会制度下での地方教育行政に対する首長の影響力の増大は部分的にとどまることが明らかにされた。有権者と首長の間の委任・応答関係においては,以前よりも,首長が教育政策を重要政策として位置づけるようになり,選挙を通じた政策選択の機会が増えた。一方で,首長と教育委員会の間の委任・応答任関係について言えば,総合教育会議における協議事項は,必ずしも個別の施策に関する首長の政策選好を反映しておらず,現時点では,新制度下においても教育委員会に一定の自律性が存在している。
     選挙の役割が大きい多数主義型民主主義において,教育に関する政策形成・決定を政治に位置づけることは可能か,専門性をどのように統合しうるか,という点に関する考察が今後の課題として挙げられる。

  • 藤間 公太
    2020 年106 巻 p. 35-54
    発行日: 2020/05/30
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     教育や子育てといった子どもにかかわる営みは,政策の対象として重要な領域の1 つである。本稿に与えられた課題は,そうした子どもにかかわる政策における家族主義の問題を論じることである。まず,家庭教育支援をめぐる動きを事例として,教育政策における家族主義を,次に,2017年に完全施行された改正児童福祉法と「社会的養護の家庭化」をめぐる議論を事例として,福祉政策における家族主義を論じる。両政策を概観すると,「家庭」という言葉がマジックワード化している反面,両政策ともに「家庭」において保護者が教育,子育ての第一義的責任を負うことを求めていることがわかる。このことは,国の責任を曖昧化する点で問題含みである。政策の中で規範化される家族や「家庭」のあり方が歴史的な構築物であり,家族をサポート資源として利用できるか否かに階層差がある以上,教育や子育てに対する国家の責任を明確にする必要がある。そして,国家による責任は,介入的な形ではなく,無条件の生存保障という形で遂行される必要がある。それはすなわち個人の選択肢の拡充するような公的支援体制の整備であり,その観点からいうと,選択的家族主義(Leitner 2003)が目指される必要がある。政策が内包する家族主義の問題を克服する上では,自身が提供した資源が教育や子育てに優先配分されることに対して市民の納得を得られるような論理につながる知見を導出することが,今後ますます研究者に求められるだろう。

  • 川口 俊明
    2020 年106 巻 p. 55-76
    発行日: 2020/05/30
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     一見,客観的・価値中立的に実施されているように見える学力調査の裏に,関わる諸アクターによる政治があることは,すでに少なくない先行研究が存在している。こうした研究は,その対象や分析スタイルは異なるものの,第三者の立場から既存の学力調査を批判し,一見中立的に見える調査の政治性を暴くという点で共通している。これら先行研究に対して本稿では,学力調査を実施する研究者の立場から,学力調査の政治性について検討を加える。
     成人を対象とする一般的な社会調査と異なり,学力調査は学校で時間をかけて学力テストを実施する必要があるため,学校や教育委員会とやりとりをすることは避けることができない。そこには,テストによる競争を当然と考える人々,SESへの忌避感,テストの専門家が少ない上にそもそも能力を測る学力調査の必要性をあまり感じていない教育現場,さらに調査が個々の学校に「役に立つ」ことが求められるなど,日本社会の論理に根ざした,さまざまな困難が存在する。
     ただ一つ明らかなことは,一見して教育現場と関わらなさそうな計量研究を主眼とする研究者であっても,日本を対象とした学力調査・学力研究を行うためには,学力調査をめぐる政治の舞台に利害関係者として上がらざるをえないということである。学力調査の政治にも目配りしつつ,学力研究を進めていくことが,今後の教育社会学の学力研究の一つの在り方であると筆者は信じている。

  • ――2019年子どもの貧困対策法・大綱改正を中心に――
    末冨 芳
    2020 年106 巻 p. 77-97
    発行日: 2020/05/30
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     日本における子どもの貧困対策は,せいぜい「新自由主義的な社会統合とセットになった救貧対策にとどまっている」(中西 2019,p.188)にすぎない。
     であるとしても,本論文では,2019年における子どもの貧困対策法・大綱改正に「子どもの貧困対策」としていくばくかの前進と意義があることを主張することになる。2節において2019年に改正された子どもの貧困対策の推進に関する法律,子供の貧困対策に関する大綱の到達点と課題をまとめたうえで,2019年法・大綱改正が子どもの権利と貧困の多様性に関する「承認」の進展という意味での意義は持ちうることを指摘する。3節において教育に関しては学力保障を前提とする強固な「自立」パラダイムが維持される中で,なぜ第2期大綱から学力格差指標が脱落したのか,筆者自身が経験し観察した政策的な論点をあきらかにする。また,子どもの貧困対策における教育とケア・福祉の統合という課題は前進を見ていない。内閣府子供の貧困対策に関する有識者会議においてなぜこの論点が後退してしまったのか,審議会型政策決定の実態と課題を記述していく。4節では,2019年改正において不十分であった教育とケア・福祉の統合が重要であり,それを今後の政策プロセスの中で実現する条件をあきらかにする。ただ同時に,そのように積極的な政策エージェントとして研究者がふるまうことが許されるのか,という問いを投げかける必要がある。

  • ―逸脱の政治パースペクティヴによる規範的考察―
    山口 毅
    2020 年106 巻 p. 99-120
    発行日: 2020/05/30
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     本稿は,逸脱のラベリングを索出して他の選択肢との間で規範的な比較考察を行なうプログラムとして逸脱の政治パースペクティヴを構想し,教育社会学のありようを検討する。
     格差の拡大や貧困化が進む第2の近代(後期近代)においては,「まともに生きていける」最低限の生活を人々に保障する「生存保障」の課題が浮上する。教育社会学は,生存保障の課題に取り組みながらもディシプリンの主要概念である「社会化」と「選抜・配分」に焦点を置くことで,逸脱のラベリングに伴うマッチポンプ図式を作り上げてしまう。マッチポンプ図式とは,能力欠如という逸脱のラベルを人々に貼りながら,能力付与を通じた生存保障を図る図式である。そこでは脱逸脱化(=能力獲得)は個人の変化に委ねられているため,その論理構成上,能力を身につけるという個人の変化を保障の条件とする「条件付き」生存保障とならざるをえない。したがって必然的に選別を伴い,普遍的な生存保障の課題と矛盾する。
     以上の欠陥を指摘した後で本稿は,経済的な次元では端的な再分配を,文化的な次元では能力カテゴリーを流動化して問題を公共化する実践をオルタナティヴとして提示する。そして結論として,教育社会学は生存保障への取り組みを放棄して社会化と選抜・配分概念を守るか,生存保障への取り組みを維持して社会化と選抜・配分概念を放棄するかの選択を迫られることになると論じる。

  • ―バイリンガル教育の展開にみるマイノリティ言語の価値闘争―
    額賀 美紗子
    2020 年106 巻 p. 121-141
    発行日: 2020/05/30
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     本稿は2000年代以降のアメリカで勢力を拡大する市場型教育改革と排外主義の下で,多様性をめぐるポリティクスの展開過程およびそれが教育的平等や社会的公正に与える影響を,サンフランシスコ学区でのフィールドワークをもとに明らかにする。特に注目するのは多様性のポリティクスが顕在化するバイリンガル教育である。分析に際しては,ルイーズの枠組み-「問題」「権利」「資源」としての言語-を援用し,国,州,学区,学校における諸集団の攻防を検討した。
     トランプ政権下のアメリカでは多様性を「問題」とする国家や州のまなざしが強化されているが,サンフランシスコという移民の聖域都市においては,マイノリティの「権利」を重視する対抗言説が確立され,バイリンガル教育が定着している。一方,近年のバイリンガル教育はマイノリティの「権利」としてよりも,国や自治体の経済発展や,グローバル経済における生徒の卓越化のための「資源」として重視される傾向が顕著にみられる。学校選択制の中でバイリンガル教育の獲得競争が促進されることは,ミドルクラスの覇権を拡大させ,人種的・階層的マイノリティの排除と教育的不平等を呼び込むことになっていた。以上のことから,本稿では排外主義・新保守主義に対抗する戦略として「資源」視点から多様性を称揚することの問題性を指摘し,「権利」の視点から多文化・多言語教育を構築していくことの必要性をあらためて提言する。

論稿
  • ―南アフリカ共和国西ケープ州の高等学校段階の教員の認識を事例として―
    坂口 真康
    2020 年106 巻 p. 145-166
    発行日: 2020/05/30
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,南アフリカ共和国(以下,南ア)西ケープ州の高等学校段階の教員の認識を事例として,社会的な「共生」を志向する教育における「ナショナルな基準」と多様な実践との共存/対立の様相を考察することである。具体的には,2012年と2014年に同州の高等学校段階の教員(計12名)を対象としたインタヴュー調査に基づいた分析を行った。そこでは,多様な実践が各教員の裁量で営まれてきた教科である Life Orientation にて,ナショナル・テストが導入されることで「ナショナルな基準」が強化されることの意味などを考察した。
     分析の結果,本稿では,「ナショナルな基準」が強化されることに対して,Life Orientation の重要性が増すなどの観点から肯定的な認識が抱かれている側面があることを指摘した。一方で,同教科では,特定の基準による教授や評価が困難であるといった観点から否定的な認識が抱かれている側面もあり,その背後には現実の出来事を取り上げることで「多様性の尊重」を促進するという教員の教育観があることなどを指摘した。
     本稿では最後に,社会的な「共生」を志向する教育としての南アの Life Orientation の基盤は,同教科を担う教員が抱く,個々の学習者の多様性を重視する姿勢と,議論の余地なく政府の一元的な基準が強制されることへの批判的な認識などに支えられているという推論を導き出した。

  • 鈴木 翔
    2020 年106 巻 p. 167-187
    発行日: 2020/05/30
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,どのような中高生が学校を休まず,継続的に登校しようと思うのかを社会的性差の観点から明らかにすることである。中高生を対象にした質問紙調査の分析を行ったところ,以下の4点の知見が得られた。
     第一に,男子では,「悩みごとを相談できる友だちの数」の多さが登校意識へと結びついているが,女子では「一緒に行動するような友だちの数」の多さが登校意識へ結びついている。また女子の「一緒に行動するような友だちの数」の多さは学校の楽しさを媒介して登校意識へ影響を与えている。第二に,男女ともに教師との関係性が良好であることは登校意識へと結びついているが,男子については,教師との関係性が学校の楽しさを媒介して登校意識へ影響を与えている。第三に,男子においては,学校の成績や教育アスピレーションが高いほど登校意識が高いが,女子においては,そうとはいえない。第四に,校則の厳しさや学校の勉強の正当性といった意識は,男女ともに登校意識へ影響を与えていない。
     本稿の学術的貢献は以下の2点である。第一の貢献は,社会的性差が学校適応や進路だけでなく,そもそも学校に行こうと思うかどうかという意識にまで影響していることを実証的に示したことである。そして第二の貢献は,森田(1991)が提唱した不登校生成モデルを修正し,登校意識を動態的な視点から把握することの有効性を示したことである。

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