教育社会学研究
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87 巻
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論稿
  • 仲野 由佳理
    2010 年 87 巻 p. 5-24
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
     本論文は,逸脱行為の継時的変化を説明した Becker の「逸脱キャリア」を援用し,未体験者が「援助交際」体験者として変容していくプロセスを「援助交際」体験者へのインタビュー調査によって明らかにすることを目的とする。
     分析の結果,初回の「援助交際」に対する肯定的な解釈が,行為の継続への動機づけとして作用することがわかった。継続の過程で,「援助交際」をめぐる3つの学習(「援助交際」の技法の学習,技法と成果との関連づけ,個別的な楽しみの発見)が行われ,「援助交際」体験者としての適切なふるまいが獲得される。 また,「援助交際」に対する個別の「楽しみ」を発見することで,動機をめぐる語りも発展した。
     学習に際しては,「援助交際」に関する漫画や雑誌,インターネット上の情報など,不特定多数にむけて発信される情報が行為の準拠枠として参照された。ここから,「援助交際」における逸脱キャリアは,“対面的な経験者集団との相互作用の機会”をもたずに常習化するが,インターネットなどを中心とする不特定多数にむけて発信される情報や,情報の発信者に含まれる「援助交際」体験者の存在自体が,(経験者集団に代わる)行為の準拠枠としての影響をもつことがわかった。
  • ──陸幼組と中学組という二つの集団──
    武石 典史
    2010 年 87 巻 p. 25-45
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
     教育社会学的な歴史研究は,官僚群との対立や青年将校運動といった昭和陸軍の動きを,「陸軍将校=農業層」「帝大生・官僚=新中間層」という階層的差異をもとに葛藤モデルから論じてきている。しかし,そこでは陸軍将校の有力構成員たる陸幼組は分析対象から捨象されがちだった。本稿は,陸軍将校を「陸幼組/中学組」という二つの集団に分けつつ,その選抜,学歴キャリア,昇進の諸構造を検討したうえで,昭和陸軍の動向に考察を加えるものである。
     陸軍将校を構成する陸幼組と中学組は社会的背景の重なりは小さかった。また,前者が陸士,陸大の成績が良かったゆえ,昇進でも(農業出身の多い)後者より優勢だった。すなわち,学歴・成績主義を原理に形成される将校集団の構造は,上層において農業色が弱化し都会色が強まるという傾向を帯びていたのである。
     大正後期以降の政治的変化のなかで,陸軍は自己益と国益を,統帥権という威力に拠って重ね合わせていこうとする。統帥権の顕在化,および軍事専門職としての強い自覚を促すという,新たな社会状況のなかで始動した昭和陸軍の主力は,農業出身層ではなく,二・三代目の武官たちであり,官・軍エリートの衝突もこの文脈で把握されるべきだと思われる。
     確かに,農業層出身の陸軍将校は少なくなかった。しかし,彼らは昇進構造において傍流に位置し,影響力をもちえなかったのである。
  • ──支援者の感情経験に関する社会学的考察──
    佐川 佳之
    2010 年 87 巻 p. 47-67
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
     フリースクールに関する従来の社会学的研究において,フリースクールの支援者は,脱学校や不登校の脱医療化を主張し,不登校児の「受容と共感」の支援を行う担い手として認識される傾向にある。だが,支援者が社会的に流通する不登校支援の言説や役割をいかに解釈し,活動を行っているのかといった支援者側の視点からの分析は充分になされていない。本稿は,支援者の不登校児との関わりに伴う感情経験の過程に注目し,民族誌的な視点からフリースクールの支援の複雑な実態に迫るものである。
     不登校支援において,支援者は「受容と共感」の感情規則に基づいた支援を求められ,その関わりを通じて不登校児の安心の喚起を試みる。しかし,その実践は常に成功するわけではなく,生徒との関わりの過程の中で問題が顕在化する。本稿は,その事例として生徒の振る舞いと「不安」への対処から生じる,「受容と共感」の感情規則との葛藤の経験を取り上げ,検討する。この問題に対して,支援者はフリースクールを含めた不登校支援において広く流通する「障害」の言説を接合し,生徒を差異化することで葛藤を修復すると同時に,既存の支援のあり方を再構成し,生徒個々に対応した支援を実践している。こうした一連の過程からすれば,フリースクールの支援とは,ローカルな社会状況の展開に応じて,新たな支援のあり方を再構成するという動的過程として再定位できる。
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