教育社会学研究
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91 巻
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
論稿
  • ──《国民教育》としての英語科の成立過程──
    寺沢 拓敬
    2012 年 91 巻 p. 5-27
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2014/02/11
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,新制中学校英語科の「事実上の必修化」がいつ,どのように成立したかを検討し,その上で,必修化を促した要因を明らかにすることである。この分析を通して,ある教育内容が「すべての者が学ぶことが自明視される」という意味での《国民教育》の構成要素に,いかに成長していったか検討する。
     新制中学発足当初こそ,選択科目であることが当然視されていた英語科だが,既に1950年代には中1の履修率がほぼ100%に近づき,「全員が一度は学ぶ」という意味での事実上の必修化が現出した。60年代になると中3の履修率も上昇し,「全員が3年間学ぶ」という今日的な意味での事実上の必修化が進行した。
     同時期に「3年間必修化」を促した主たる要因は,教育内容そのものに関わる内在的な要因よりも,外在的な制度的・構造的要因であった。すなわち,英語の必要性の増大や英語教員の必修化推進運動ではなく,高校入試への英語試験導入,高校進学率の上昇,ベビーブーマー卒業後に生じた人的リソースの余裕など,構造的・制度的な変化の影響のほうが大きかった。なお,当時,自覚的な「運動」こそなかったが,関係者によって「英語の必要性」論への対抗言説が編まれており,これにより英語の《国民教育》としての正当性が高められ,その後の事実上の必修化を条件付けた面もある。以上のように,英語科の《国民教育》化は,種々の要因の複合的な結果として生じたと言える。
  • 藤原 翔
    2012 年 91 巻 p. 29-49
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2014/02/11
    ジャーナル フリー
     現代日本の高校階層構造は,社会経済的背景と高校選択との関係を明確にしてきたといえる。このような実態を背景として,本稿ではなぜ高校選択の社会経済的格差が生成・維持されるのかについて,Richard Breen and John H. Goldthorpe(1997)の合理的行為理論に基づく相対的リスク回避仮説と吉川徹(2006)の学歴下降回避仮説に注目した。そして,2002年に行われた高校生とその母親に対する社会調査データ(N=545)を用いて,その妥当性を検証した。分析の結果,経済的資源や中学3年時の成績をコントロールしても,親の職業や学歴は高校ランクに対して直接影響を与えていること,また,中学3年時の成績が高校ランクに対して与える影響は,親の職業や学歴によって異なることが明らかになった。加えて,高校タイプ別の職業達成・教育達成の見込みから予測されるパターンにしたがって,親の職業や学歴が高校タイプの選択に影響を与えていることが示された。以上の分析結果から,高校選択の社会経済的格差を説明する上での,相対的リスク回避仮説と学歴下降回避仮説の妥当性が示された。
  • ──男子の大学教育投資の都道府県別便益に着目して──
    朴澤 泰男
    2012 年 91 巻 p. 51-71
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2014/02/11
    ジャーナル フリー
     本稿では男子の大学進学率の地域格差,すなわち都道府県間の差が構造的に生ずるメカニズムを説明することを目的に,人的資本理論の枠組みに基づいて,都道府県別データと,高校生及びその保護者を対象とする質問紙調査の分析を行った。
     分析の結果,得られた知見は以下の通りである。第一に,大卒と高卒の男子一般労働者の平均時給を県別に推計したところ,その相対賃金(大卒/高卒)が大きい県ほど大学進学率が低い。20~24歳の男子の相対賃金は,男子大卒労働需要(出身県の20~24歳の大卒就業者数を高卒就業者数で除して定義)と負の相関関係にある。
     第二に,男子大卒労働需要を用いて,県単位の大学進学率の回帰分析を行った。その結果,大卒労働需要の大きい県ほど地方在住者の県外進学率や,進学率全体が高いことがわかった。なお県外と県内の進学率は負の相関関係にあるため,収容率は大学進学率全体にはほとんど関連性がない。
     第三に,高校生調査を用いた分析でも同様の結果が得られた。大学進学希望の有無に関する二項ロジスティック回帰分析を行うと,個人間で異なる家計所得や学力を統制してもなお,大卒労働需要の多い県に住む男子ほど,大学進学希望を(地方在住者の場合,県外進学希望も)持つ見込みが高いことが確かめられた
  • ──学校文化への異化と同化のジレンマのなかで──
    知念 渉
    2012 年 91 巻 p. 73-94
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2014/02/11
    ジャーナル フリー
     本稿では,貧困・生活不安定層出身である〈ヤンチャな子ら〉の学校経験を描くことによって,①生徒のストラテジーの実証研究がない,②教師のストラテジーが生徒の学校生活に与える影響が明らかにされていない,というストラテジー研究の課題について検討した。
     分析結果は次の三点である。第一に,〈ヤンチャな子ら〉は,家庭の文化に依拠して学校文化を異化しつつも,親たちの人生に自らの人生を重ね合わせず,高卒資格の意義を認めていた。学校文化への異化と同化の間で構造的ジレンマを抱えていたのである。第二に,そのジレンマに対処するため,彼らは「時間と空間のコントロール」,「非対称な関係性の組み替え」,「学校の意味世界の変換」というコーピング・ストラテジーを編み出していた。それに対して,教師たちは「時間と空間の再コントロール」,「組み替えられた関係性の資源化」,「生徒の意味世界の取り込み」というペタゴジカル・ストラテジーによって,彼らを教育活動に巻き込んでいた。第三に,教師たちのストラテジーにより,〈ヤンチャな子ら〉は教師を肯定的に評価しており,その評価は登校継続に積極的な影響を与えていた。だが,学校から一度離れたケースでは,教師への肯定的評価が登校継続に逆効果をもっていた。
     以上より,生徒が構造的ジレンマのなかで様々なストラテジーを用いて学校生活を過ごしていること,教師のストラテジーの効果は生徒の解釈や状況に依存することが明らかとなった。
  • ──「高等教育計画」での特定地域における新増設の制限に注目して──
    上山 浩次郎
    2012 年 91 巻 p. 95-116
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2014/02/11
    ジャーナル フリー
     本稿では,「大学立地政策」の「終焉」が,大学進学機会の地域間格差にどのような影響を及ぼしたのか明らかにする。
     先行研究においては,その「終焉」は大学進学機会の大都市部への集中と地域間格差の拡大をもたらしていないと示唆されている。だが,その「終焉」の独自の影響力を捉えきれていない等の限界がある。
     本稿では,「インパクト評価」に依拠し,実測値と予測値の差からその「終焉」の影響を評価する。具体的には,「高等教育計画」での特定地域における新増設の制限に注目し,この制限の撤廃が,(1)「規制地域」(を含む地域ブロック)での大学進学機会の動向に影響を及ぼしたのか,さらに(2)この動向が全国レベルの地域間格差にどのような影響を及ぼしたのかを検討した。
     分析の結果,①大学学部定員数では,「規制地域」で予測以上の定員増がみられ,さらに全国レベルの地域間格差も予測以上に拡大した結果,格差の趨勢が縮小から拡大へと反転した。②大学収容力でも,「規制地域」を含む地域ブロックで予測以上に値が上昇し,地域間格差も予測以上に拡大した。結果的に,現在の格差の大きさは,「大学立地政策」開始直後以上になっている。③大学進学率も,「規制地域」を含む地域ブロックでの値の上昇と全国レベルでの地域間格差の拡大とが予測以上に進行した。
     これらから,「大学立地政策」の「終焉」は,大学進学機会の地域間格差の拡大をもたらしたと判断できる。
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