教育社会学研究
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93 巻
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
論稿
  • ──中国浙江省慈渓市の事例研究──
    馬 芳芳
    2013 年 93 巻 p. 5-25
    発行日: 2013/11/30
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
     本稿は,中国浙江省慈渓市に住む48世帯の親から聞き取った事例を用いて,家族の資本構造がどのように公立と民営中学校の選択に影響を与えるのかを,親の学歴資本と経済資本の構造が異なる家族の比較を通して明らかにしたものである。得られた知見は,以下の通りである。
     第一に,民営中学校を積極的に選択するのは学歴資本と経済資本の所有量が一貫して多い家族である。所有量の多い家族ほど,その意識がより明確である。
     第二に,学歴資本と経済資本の両方が不足している家族にも民営中学校選択意識がある。ただし,彼らの行動は周囲の状況に制約されるため実現できない状況である。
     第三に,学歴資本は少ないが,経済資本を社会一般より多く所有している場合,明確な民営志向が示される。こうした志向は民営中学校の進学実績により根拠づ けられている。
     第四に,学歴資本の所有量が中間レベルの場合,民営志向は見られるものの,経済資本の少ない親ほど家計への負担感が言及された。一方,この場合の公立志向は,子どもの成績が良好ではないという判断によるものである。
     第五に,学歴資本は多く保有しているが,経済資本はそれにみあわない家族の場合は,民営中学校を志向する家族もいる一方で,公立中学校を積極的に評価する家族もいる。いずれにせよ,これらの家族があげた理由からは,学業以外の能力などに大きな関心を持っていることが共通に読み取れた。
  • ──教師たちのリアリティワークにおける述部付与/帰属活動を中心に──
    佐藤 貴宣
    2013 年 93 巻 p. 27-46
    発行日: 2013/11/30
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
     本稿は,教師たちが盲学校のリアリティを,普通学校とは別の独得の秩序をもつ現実として構成していくその仕方を解明するとともに,そうしたリアリティ構成のあり方が,どのような形で生徒たちの進路形成・進路分化を規定しうるのかを,エスノメソドロジーの成員カテゴリー化論に依拠して考察することを目的とする。
     この間,精力的に成員性カテゴリー化分析(MCA)を推進してきたエグリンとヘスターはリフェラル・ミーティングにおける参加者のカテゴリー使用を考察することにより,成員カテゴリーや成員カテゴリー化装置(MCD),その述部の意味はインデクシカルな表現から成り立ち,カテゴリー化とその文脈とは相互に精緻化し合うと主張してきた。本稿もヘスターらのアイディアを援用し,盲学校という場のリアリティを構成する教師たちの言語行為を記述していく。それはすなわち,盲学校に固有のリアリティが状況定義と生徒のカテゴリー化との相互規定性として達成されていくプロセスの解明に他ならない。そのようにして達成されていく盲学校のリアリティは,[盲学校教師]カテゴリーに対して特定の述部的行為を道徳的に帰属する。その結果,盲学校内部の職業課程を経由する職業移行が,視覚障害を有する生徒にとっての,最も妥当な進路として合理化されていくのである。
  • ──戦前・戦中・戦後における「指導」言説の歴史社会学──
    秋吉 和史
    2013 年 93 巻 p. 47-68
    発行日: 2013/11/30
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
     本稿は,明治期から戦後直後に至る教育言説から,「指導」という語と概念を扱った言説を抽出・分析することで,わが国の学校教育における「指導」の語と概念の歴史的経緯を明らかにし,とりわけ戦中期のコンテクストにおいて,「指導」の語と概念が担ってきた社会的意味を考察するものである。
     わが国の学校教育は,占領期の教育制度改革による戦前/戦後の画期があると考えられており,研究の領域においてもその時代区分を前提にしたものが少なくない。しかし,「戦前の教育/戦後の教育」といった教育の「断絶」を自明視するあまり,わが国の教育史のなかに見落としてきた事象も存在するのではないか。
     そこで本稿は,わが国の教育事象のなかから,「指導」という語と概念を取り上げ,「指導」の歴史的経緯(起源と普及)の実証と,とりわけ戦中期のコンテクストにおいて,わが国が「指導」に付与してきた社会的意味(地位と機能)の分析とを課題とする。そして本稿では以下の結論(1)と仮説(2)を得たと考える。
    (1)「指導」の語は明治期に遡り,教育の遂行を「指導」という語と概念で理解する認識枠組みとしての「指導」パラダイムは戦中期に成立した。
    (2)「指導」パラダイムは,「指導」に包含された態度要求それ自体を規範とする「指導」への応答実践,すなわち「〈教育的〉態度の増大」に対する 「〈教育的〉応答の増大」を,わが国の教育と社会に条件づけてきたのではないか。
  • ──「課題集中校」の生徒像・学校像を描き直す──
    伊藤 秀樹
    2013 年 93 巻 p. 69-90
    発行日: 2013/11/30
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,生徒指導上の課題が集中する後期中等教育段階の学校(以下,「課題集中校」)で,生徒指導上の指導が受容されるメカニズムについて考察することにある。
     課題集中校の生徒指導に関する先行研究では,①生徒たちは地位達成・学業達成へのアスピレーションが低く,教師の指導を受け入れる必要性をもたない存在であること,②教師=生徒間の葛藤を解消して生徒を学校にとどめておくためには,生徒の社会化から撤退するしかないこと,を示してきた。
     しかし,課題集中校の中には,教師の指導に反発・無視していた生徒の大多数が,その指導を受け入れるようになる学校も存在する。本研究では,そうした事例である高等専修学校(Y校)でのインタビューと参与観察の結果から,生徒指導上の指導が受容されるようになるメカニズムを,「志向性」という新たな概念枠組みのもとで探究した。
     Y校の生徒たちの語りからは,地位達成・学業達成のアスピレーションに集約されない,「成長志向」「被承認志向」「年長役割志向」といった3つの「志向性」との関連のもとで,生徒指導の受容の契機が生まれていることが見出された。 これらの知見からは,逸脱行動ではなく「志向性」という資源へと働きかける,生徒指導の「志向性基盤アプローチ」の重要性が示唆された。
  • ──言説-解釈実践としての児童理解の分析──
    稲葉 浩一
    2013 年 93 巻 p. 91-115
    発行日: 2013/11/30
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
     本稿は『生徒指導提要』(文部科学省)の記述に見られるように,児童生徒の個性尊重と児童生徒理解の方法が,しばしば多くの「注文」をつけて語られることに着目し,その実践の起源ともいえる個性調査において実際の教師たちはどのように児童らを「理解」していたのかを明らかにするものである。主として大正期から昭和初期にかけて多く発刊された個性調査のテキストは,典型的には教師の個性調査実践を「客観的基礎」に欠けものとし,そこに「失敗」の可能性を想定するものであった。だが一方本稿が見た大正期の個性調査簿の記録は,そのような方法をもって児童の「ありのまま」に接近するようなものではなく,むしろ個性調査簿の様式に則りながらも,前年度までの児童の「個性」をその次の年度の教師が参照し,児童たちの「らしさ」ともいえる「パターン」を再構成するという言説-解釈実践を行うものであった。これはいうなれば教師による児童の「性格づけ」・「語り継ぎ」の実践であったといえるだろう。以上のことからわかるのは,公的な言説が要求する「理解」のあり方と異なったものであっても,教師は日常生活者として十分な理由をもって児童らの個性を理解=解釈していたということである。その意味で「よりよい精確な」理解が教育現場に要請される以上そこには原理的な「困難」が常に潜在し,「注文」が尽きることはないというのが本稿の結論となる。
  • ──フェミニズム・教育・ポストモダン──
    多賀 太, 天童 睦子
    2013 年 93 巻 p. 119-150
    発行日: 2013/11/30
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
  • ──高学歴化社会における格差の構造──
    平沢 和司, 古田 和久, 藤原 翔
    2013 年 93 巻 p. 151-191
    発行日: 2013/11/30
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
  • ──1995年以降の展開と課題──
    井上 義和, 森 直人
    2013 年 93 巻 p. 193-224
    発行日: 2013/11/30
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
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