教育社会学研究
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97 巻
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
論稿
  • ―学級と部活動に着目して―
    林川 友貴
    2015 年 97 巻 p. 5-24
    発行日: 2015/11/27
    公開日: 2017/03/07
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,学級と部活動という二つの所属集団に着目して,中学生の学校適応のメカニズムを明らかにすることである。学校ランクという「学校間」の差異に関する変数の学校適応に対する説明力が高校段階と比べて大きく減退する中学校段階においては,「学校内」の複数の文脈の影響をより精密に捉えうる分析枠組みが求められる。そこで本稿では,「学校内」の下位集団である学級と部活動の影響に照準を合わせ,中学生の学校適応メカニズムを検討した。
     分析に際しては,複数の文脈の影響を同時的に分析できるcross-classified multilevel モデルを用いて,中学二年生を対象とした調査データを分析し,中学生の学校適応に対して学級と部活動という二つの所属集団が与える影響を推定した。
     主な知見は次の三点である。(1)生徒間の交流が分断され,疎外性の高い学級に所属する生徒ほど学校適応は低くなる。(2)所属する部の全体的な積極性や,運動部での先輩-後輩関係の良好さは学校適応と正の関連をもつ。(3)疎外性の高い学級に所属する生徒ほど,部活動での先輩- 後輩関係が学校適応に与える影響は大きい。
     これらの結果は,同年齢集団である学級と異年齢集団である部活動の双方の影響を考慮した分析が,中学校段階の学校適応の説明において必要であることを示唆するものである。

  • ―制度と学校文化の視角から―
    二羽 泰子
    2015 年 97 巻 p. 25-45
    発行日: 2015/11/27
    公開日: 2017/03/07
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,制度的にも文化的にも障害児に対して排除的といわれる日本の学校組織が,市全体として非排除的なものへと変容を遂げた日本のある都市での調査を元に,学校組織が非排除的に変革させられるまでの変容のあり方を明らかにすることである。Mintzberg(1979)の組織の構形を用いて,調査都市における学校組織の変容過程を,制度及び学校文化の視角から分析することによって,非排除的な学校組織がどのように形成・持続されてきたのかを考察した。
     その結果,学校組織の外面で担っていた障害児の選別が機能しなくなった事態に対処するために,障害児の選別を行わないような制度へと変更され,その制度変更が結果的に学校組織の内部の変容をも促進させることにつながったことが分かった。また,市全体の「教員文化」や「生徒文化」の変容によって,学校組織内に,教員のみで形成されるアドホクラシーにとどまらず,生徒や親も巻き込んだハイパーアドホクラシーの構形が現れ,非排除的な学校を実現していたことが明らかになった。さらに,選別されることなく就学する多様な子どもたちに対処するために,子ども中心に問題解決を志向する新たな代替規格が「プロフェッショナル官僚制」の学校組織に組み込まれ,「アドホクラシー」や,ハイパーアドホクラシーの形への変容を容易にする,相互補完的な学校組織内部の構形が形成されていた。

  • ―学校の中の性別分化とジェンダー葛藤―
    土肥 いつき
    2015 年 97 巻 p. 47-66
    発行日: 2015/11/27
    公開日: 2017/03/07
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,トランスジェンダー生徒の性別違和を学校文化の中にあるジェンダーとの関係から分析することである。学校がおこなう「性別に基づく扱いの差異」は,生徒たちをふたつの性別カテゴリーに分化した結果なされるだけでなく,ふたつの性別カテゴリーに分化するためにもなされており,これを「性別分化」とした。トランスジェンダー生徒は「学校による性別分化」と「自らありたい性」との間で「ジェンダー葛藤」を起こしている存在とした。
     分析の結果明らかになったことは次の3点である。(1)性別分化は発達段階に応じてなされ,その過程はトランスジェンダー生徒のジェンダー葛藤を強める。(2)強いジェンダー葛藤の状態に置かれたトランスジェンダー生徒は「カテゴリー語の獲得」「ロールモデルとの出会い」を通して,ジェンダー葛藤の解決の方法として「カミングアウト」を見つける。(3)ジェンダー葛藤軽減の要素として「要求発見の可能性」「要求実現へ向けた課題の発見」「変容する他者の存在」の3つが抽出できた。
     以上のことから,トランスジェンダー生徒の支援は,学校の性別分化の過程で強められたジェンダー葛藤を軽減することであることが明らかになった。これは同時に,トランスジェンダー生徒は学校の性別分化そのものを問う存在であることを意味し,ジェンダー葛藤軽減のためには学校自身が自らを問い直し変容することの必要性が明らかになった。

  • ―教師の意図から外れた場面の談話分析―
    岡本 恵太
    2015 年 97 巻 p. 67-86
    発行日: 2015/11/27
    公開日: 2017/03/07
    ジャーナル フリー

     学校には,ほかの場所では見られない特殊なふるまい方が存在する。児童は,こうした行動様式を身につけて学校という場に適応していく。このプロセスを学校的社会化と呼ぶ。
     本研究の目的は,児童および教師にとって新しい行動様式が成立する過程を明らかにすることである。そのために,教師の意図から外れた授業場面に焦点をあてた。事例として取り上げたのは,小学校一年生のひらがな学習である。教師の提示したひらがなの「まちがい」を指摘しようとした場面について,児童と教師の談話および行動を分析した。
     分析の結果,一連の児童の行動に規則性が見られた。すなわち,発表する児童の近くで一名の児童が待機し,交代するというパターンである。さらに,児童の話し方には,教師の模倣が見られた。それに呼応するように,教師もまた「無力さ」を演じていた。つまり,児童と教師の「共演」が成立していたのである。
     事例に見られたパターンの生成と演技との関連について,ヴィゴツキーの理論を参照して考察した。ヴィゴツキーによれば児童の「ごっこ遊び」は自己決定のルールを含んでいる。本事例において,児童は模倣をすることにより,教師の行動の論理を取り入れていたのである。以上のことから,新しい行動様式の獲得のためには,児童の演技を引き受ける教師の即興的対応が重要であること示唆された。

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