糖尿病食品交換表は, 実測値と比較すると, エネルギー量の表示は正確であるが, たん白質量は実測値との誤差が大きい食品がある。一方, 腎臓病食品交換表の表示は, 実測値と比較すると, たん白質量の表示は正確であるが, エネルギー量は実測値との誤差が大きい食品がある。
糖尿病性腎症が進行して腎不全に陥った患者の食事内容は, 血糖コントロールのためのエネルギー摂取規制の他に, 高窒素血症抑制のためたん白質量の摂取も厳密に規制する必要があるため, 本症の食事管理に際しては糖尿病食品交換表, 腎臓病食品交換表ともに不適当な面がある。そこで我々は, 糖尿病性腎不全患者の食事管理を目的とした本症患者専用の食品交換表を新たに考案した。
今回考案した糖尿病性腎不全用食品交換表 (腎症用新食品交換表) は, 糖尿病食品交換表のうち表3, 表4, 付録を改変した。腎症用新表3は0.5単位表示, エネルギー40kcal, たん白質6gの食品で構成し, 腎症用新表4は1単位表示, エネルギー80kcal, たん白質6gの食品で構成した。腎症用新付録は糖尿病食品交換表の, 付録1, 2に載っている食品を, たん白質量別に3段階に分類し, 1単位表示, エネルギー80kcalで, 付録 (1) はたん白質0g, 付録 (2) は1g, 付録 (3) は1.5gの食品で構成した。
非透析の糖尿病性腎不全患者の献立 (1,600kcal, たん白質35g) を, この腎症用新食品交換表と糖尿病食品交換表, 腎臓病食品交換表に基づきそれぞれ作成し, 食品成分表によるエネルギー量, たん白質量の実測値と比較したところ, 糖尿病食品交換表による献立ではたん白質量の誤差が8.6g, 腎臓病食品交換表による献立ではエネルギー量の誤差が69kcalあったが, 腎症用新食品交換表による献立ではエネルギー量が41kcal, たん白質量が1.7gの誤差で両者の中間であった。
以上より, 今回考案した腎症用新食品交換表は, 糖尿病性腎不全患者の食事療法を行ううえで有用性が高いと考えられた。
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